I-1-1 キャッシュ・フロー会計
財務諸表等規則に於けるキャッシュ・フロー会計では、営業活動、投資活動、財務活動の3 区分から生じるキャッシュ・フローについて計算書を作成する。次の収入のうち、財務活動に含まれる項目として、最も適切なものはどれか。
① 株式の発行による収入
② 財貨又は用役の販売による収入
③ 他の会社の株式及び債券から生じる配当及び利息による収入
④ 設備、建物、備品及びその他の生産用資産の売却による収入
⑤ 貸付金の回収による収入
解答と解説
【正解①】
営業活動、投資活動、財務活動、それぞれのキャッシュフローは次の通りです。
(1)営業活動によるキャッシュフロー
企業本来の営業活動によって得られたキャッシュの増減額を示しており、企業の収益性をキャッシュという視点でとらえたものです。
(2)投資活動によるキャッシュフロー
設備投資や有価証券などへの投資によるキャッシュの増減額を示しています。
(3)財務活動によるキャッシュフロー
外部からの資金の借入や返済などによるキャッシュの増減額を示しています。
これより、選択肢のキャッシュフローは下記のように分類されます。
① 株式の発行による収入 財務活動
② 財貨又は用役の販売による収入 営業活動
③ 他の会社の株式及び債券から生じる配当及び利息による収入 投資活動
④ 設備、建物、備品及びその他の生産用資産の売却による収入 投資活動
⑤ 貸付金の回収による収入 投資活動
I-1-2 価値工学 VE
価値工学(VE)は、顧客の要求機能を分析し、組織的活動により製品・サービスの価値を高める技法である。VE に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- VE における価値は、「価値=機能×コスト」というモデルで表現される。
- VE における機能は一般に、動作を行う主体と動作の内容により「…が…する」という表現で定義する。
- VE における機能は、使用者がその製品・サービスを使用しようとする目的にかかわる機能と、外観の美しさなど感覚的満足感にかかわる機能とに分類することができる。
- VE における機能を目的と手段の観点から整理して表現する方法として、親和図が用いられる。
- VE の実施手順における基本ステップは、機能定義—代替案作成一機能評価の順である。
解答と解説
【正解③】
①:価値=機能÷コストで定義されます。
②:機能は「○○を△△する」という形で定義します。コップだと「内容物を保持する」といった具合です。
④:機能分析で抽出した要素機能の相互関係を体系化して表現する系統図を使用します。よって、親和図は誤りです。
⑤:VEの基本ステップは機能定義→機能評価→ 代替案作成の順です。
I-1-3 需要量の予測
移動平均法又は単純指数平滑法を用いて、各期の需要量の予測値を順次計算することを考える。
第1 期~第4 期の需要量の実績値が下表で与えられるとき、次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、移動平均法及び単純指数平滑法による予測値の計算方法はそれぞれ以下のとおりである。
移動平均法:k次の移動平均法によるt+1 期の予測値FIt+1 は、直近k期間の実績値Yt,Yt-1,…,Yt-k+1 を用いて式(1)により計算される。
FIt+1=1/k(Yt+Yt-1+…+Yt-k+1) (1)
単純指数平滑法:単純指数平滑法によるt+1 期の予測値FSt+1 は、t期の実績値Yt、t期の予測値FSt及び定数α(0<α<1)を用いて式(2)により計算される。
FSt+1=αYt+(1-α)FSt (2)
本問ではα=0.3 として計算することとし,第3 期の予測値FS3 は354 であるとする。
表:需要量の実績値
期 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
---|---|---|---|---|---|
需要量(個) | 360 | 340 | 310 | 258 | ? |
① 3 次の移動平均法による第5 期の予測値は、310 よりも大きい。
② 4 次の移動平均法による第5 期の予測値は、3 次の移動平均法による第5 期の予測値よりも小さい。
③ 単純指数平滑法による第4 期の予測値は、330 よりも小さい。
④ 単純指数平滑法による第5 期の予測値は、295 よりも小さい。
⑤ 単純指数平滑法による第2 期の予測値は、第2 期の実績値よりも大きい。
解答と解説
【正解⑤】
① Fl3= (Y2+Y3+Y4)/3=(340+310+258)/3 = 302.66 =302.7 < 310
② Fl4=(Y1+ Y2+Y3+Y4)/4=(360+340+310+258)/4=317>302.7
③ FS4 = αY3+(1-α)FS3
= 0.3 x 310+0.7 x 354
= 340.8>330
④FS5 = αY4+(1-α)FS4
= 0.3 x 258+0.7 x 340.8
= 315.96 > 295
⑤FS2は2通りの求め方がある。次の2通り。
a. FS3=αY2+(1-α)FS2 ⇔ FS2=(FS3-αY2)÷(1-α)
b. FS2=αY1+(1-α)FS1
当然ながら、同じ解 (FS2 = 360 > 340)が導かれる。
I-1-4 設備管理における保全活動
以下の(ア)~ (ウ)に示した設備管理における保全活動の内容と、その名称との組合せとして、最も適切なものはどれか。
(ア)設備の劣化傾向を設備診断技術などによって管理し、故障に至る前の最適な時期に最善の対策を行う保全活動。
(イ)設備、系、ユニット、アッセンブリ、部品などについて、計画・設計段階から過去の保全実績又は情報を用いて不良や故障に関する事項を予知・予測し、これらを排除するための対策を織り込む保全活動。
(ウ)故障が起こりにくい設備への改善、又は性能向上を目的とした保全活動。
ア | イ | ウ | |
---|---|---|---|
① | 改良保全 | 保全予防 | 予知保全 |
② | 保全予防 | 予知保全 | 改良保全 |
③ | 保全予防 | 改良保全 | 予知保全 |
④ | 予知保全 | 保全予防 | 改良保全 |
⑤ | 予知保全 | 改良保全 | 保全予防 |
解答と解説
【解答④】
「設備診断技術」というワードがあれば予知保全です。
「設計段階から対策を織り込む」のは保全予防です。
「改善」というワードがあれば改良保全です。
I-1-5 サービスの特性
顧客に満足される高い品質のサービスを販売し提供するためには、工業製品の特性とは異なる、サービスの特性の違いを理解する必要がある。サービスの特性に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① サービスには、事前に在庫したり流通させたりすることができないという特性がある。
② サービスのうち、特に対人サービスには、顧客が必要とする場所と時間に生産され、生産と同時に消費されるという特性がある。
③ サービスには、同一のサービスを安定して繰り返し提供することが容易であるという特性がある。
④ サービスには、生産者と顧客との共同作業・相互作用によって便益や満足が生み出されるという特性がある。
⑤ サービスには、提供されると、それを元に戻すことができないという特性がある。
解答と解説
【正解③】
サービスの特性に関する問題です。
「同一のサービスを安定して繰り返し提供することが困難である」という特性があります。よって、「容易」という部分が誤りです。
I-1-6 制約条件の理論(TOC)
サプライチェーンマネジメントにおける制約条件の理論(TOC)の活用に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① 改善プロセスにおいて、既存のボトルネック工程の改善が進むにつれ、他の工程が新たなボトルネック工程として浮上してくることがある。
② ボトルネック工程のスケジュールがサプライチェーンの最終工程に通知される。
③ 全体の工程をボトルネック工程のペースに合わせることが、生産活動の基本となる。
④ サプライチェーン内で発生しうる様々な不具合によってもたらされるスループットの減少を抑えるために、バッファを用いた管理を行う。
⑤ 非ボトルネック工程を、ボトルネック工程でこなせる以上のペースで作業できるように改善したとしても、全体のスループットは増えない。
解答と解説
【正解②】
「ボトルネック工程のスケジュールがサプライチェーンの最終工程に通知される。」ということはありません。
I-1-7 開発プロセスの種類
製品やシステムの開発を行う際の開発プロセスの種類に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
① ウォーターフォール型は、要求分析に基づき、まず試作システムを製造し、機能や操作性を確認した後、本番の開発を進める方法である。
② スパイラル型は、開発チーム全員で、最初の工程から順番に開発を完了させて承認を受け、やり直しすることなく次の工程に進める方法である。
③ V 字型モデルは、開発する機能全体を俯瞰して、最初は機能を絞って薄く開発し、徐々に機能を強化し肉付けしていく方法である。
④ アジャイル型は、期間を短く区切って優先度の高い機能から実装することを繰り返し、ユーザーや顧客のフィードバックを取り入れながら開発をする方法である。
⑤ イテレーティブ型は、要求分析と現地テスト、詳細設計と結合テストなど、作成した仕様とそれに基づく成果の検証の対応関係をはっきりさせる方法である。
解答と解説
【正解④】
スパイラル開発とは、対象のシステムを機能ごとに分割して、重要な機能から構築している開発手法です。開発工程で機能ごとに、「要件定義→設計→開発→テスト→レビュー」を複数回繰り返し、改善します。プロトタイプを作成して評価を行い、評価後に再び追加開発・改良を繰り返します。
イテレーティブ開発とインクリメンタル開発
インクリメンタル開発では完成するまで価値がありません。中間成果物において価値がない開発手法がインクリメンタル開発です。
一方、イテレーティブ開発は最初から価値があるものを開発します。シンプルで最低限の機能しかありませんが、はじめから利用者の価値を実現するのがイテレーティブ開発です。そして、イテレーション(反復)によって、徐々に性能や操作を高めます。
I-1-8 PERT図
下図は、複数の作業で構成されている業務のPERT 図から、1 つの作業E を抜き出して示した図である。現状の業務日程計画における作業E の作業時間は3 時間、作業E の全余裕時間は4 時間、作業E の最早開始時刻は午前10 時である。なお、結合点i から出ている作業も、結合点j に入ってくる作業も作業E だけである。この図におけるPERT 計算に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① 現状の業務日程計画における作業E の最遅開始時刻は、13 時である。
② 現状の業務日程計画における作業E の最早完了時刻は、13 時である。
③ 現状の業務日程計画における作業E の最遅完了時刻は、17 時である。
④ 作業実施条件の変更によって作業E の作業時間だけが5 時間に変更された場合、作業E の全余裕時間は2 時間になる。
⑤ 作業実施条件の変更によって作業E の作業時間だけが7 時間に変更された場合、作業E はクリティカルパス上の作業になる。
解答と解説
【正解①】
最遅開始時刻は、14 時です。「13時」という部分が誤りです。
「最早開始時間10時+余裕時間4時間」から求まります。