I-1-17 混合行列
下表は、収集した4,500 個のデータに対し、陽性か陰性かを予測する機械学習モデルによる予測結果を整理した混同行列とよばれるものである。さらに20 個のデータを追加し、同じモデルを用いて予測した結果、追加したデータすべてを陽性と予測し、実際にはすべて陰性であった。データを追加したことによる、このモデルの予測性能の変化に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、本問における評価指標については以下のとおりとする。
正解率:全データのうち、予測が正しかったデータの割合
適合率:予測が陽性であったデータのうち、実際に陽性であるデータの割合
再現率:実際は陽性であるデータのうち、予測も陽性であったデータの割合
F 値:適合率と再現率の調和平均
予測 (個) | |||
陽性 (Positive) | 陰性 (Negative) | ||
実際 (個) | 陽性 (Positive) | 真陽性 30 | 偽陰性 20 |
陰性 (Negative) | 偽陽性 70 | 真陰性 4,380 |
① 正解率、適合率、 F 値は小さくなり、再現率は変化しない。
② 正解率、適合率、再現率は小さくなり、 F 値は変化しない。
③ 正解率、再現率、 F 値は小さくなり、適合率は変化しない。
④ 正解率、適合率は小さくなり、再現率、 F 値は変化しない。
⑤ すべての評価指標の値は小さくなる。
正解と解説
【正解①】
追加試験後の混同行列は、このように変化します。
予測 (個) | |||
陽性 (Positive) | 陰性 (Negative) | ||
実際 (個) | 陽性 (Positive) | 真陽性 30 | 偽陰性 20 |
陰性 (Negative) | 偽陽性 90 | 真陰性 4,380 |
オリジナルと追加試験後の各パラメーターの計算結果は次のように求めることができます。
オリジナル | 追加試験後 | 変化 | |
正解率 | 4410÷4500 = 0.98 | 4410 ÷ 4520 =0.976 | 小さくなる |
適合率 | 30÷100=0.3 | 30÷120 = 0.25 | 小さくなる |
再現率 | 30÷50 = 0.6 | 30÷50 = 0.6 | 変化なし |
F値 | 2÷(4500/4410+100/30)=0.46 | 2÷(4520/4410+120/30)=0.46 | 小さくなる |
I-1-18 改正個人情報保護法
いわゆる改正個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① 個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの、あるいは旅券番号や運転免許証番号等の個人識別符号が含まれるものをいう。
② 本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実等を含む個人情報は、要配慮個人情報に該当する。
③ 個人情報取扱事業者とは、個人情報データベース等を事業の用に供している者をいい、国の機関、地方公共団体等は含まれない。
④ 個人データとは、個人情報データベース等を構成する個人情報をいい、市販の電話帳や住宅地図に含まれる個人情報も個人データに該当する。
⑤ 特定の個人を識別することができないように個人情報を加工し、その個人情報を復元できないようにした匿名加工情報については、その取扱いを個人情報の取扱いよりも緩やかに規律することで、自由な流通や利活用を促進している。
正解と解説
【正解④】
電話帳については、無償で頒布される場合であっても、住んでいる場所以外の地域については不特定かつ多数の者に対して広く有料で販売されていることから、個人情報保護法施行令3条1項に該当し、個人情報データベース等から除外されることになります
I-1-19 画像認識
画像認識に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① 画像認識とは、入力された静止画や動画から抽出した特徴などを用いて、対象となるものが何かを認識する技術である。
② ディープラーニング等のAI 技術の進展によって、画像認識の認識精度は向上してきている。
③ AI 等の先端技術を使った画像認識は製造業、物流、防犯などの分野で活用されており、医療分野における画像診断支援などへの応用も進みつつある。
④ 画像認識の活用は進んでいるが、画像認識に使用できるクラウドサービスはいまだ提供されていない。
⑤ 顔認識技術はプライバシー保護の面からの懸念が指摘されており、堅牢なセキュリティ確保や画像データを保存しないなどの対策がとられている。
正解と解説
【正解④】
Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)といった、画像認識に使用できるクラウドサービスが存在しています。
I-1-20 Web 会議サービス使用時の注意事項
いわゆるWeb 会議サービス(音声、映像、資料、チャット等をリアルタイムに交換可能なクラウドサービスとし、オンプレミスは除く。)を使用する際のセキュリティ上の注意事項に関する次の記述のうち、最も不滴切なものはどれか。
① Web 会議サービスのクライアントソフトは、脆弱性の悪用を防ぐため常に最新の状態にアップデートする必要がある。
② 意図しない者の会議への参加を防ぐためには、会議案内メールの安全な経路での配付とともに、会議参加者の確認・認証方式の選定が重要である。
③ 通信路が安全でない場合、会議データの盗聴、改ざんの脅威が発生するため、機密性の低い内容に限った会議であっても、エンドツーエンド暗号化方式の採用が必須である。
④ Web 会議サービスで扱われる個人情報が、会議目的以外で第三者提供を含め使用されないこと、いわゆる改正個人情報保護法等の法律、規制に準拠していることを確認する必要がある。
⑤ 機密情報及び個人情報保護のために、意図しない映り込みや音声の漏えいを避けるよう、参加者端末の場所、映像の背景に配慮する必要がある。
正解と解説
【正解③】
エンドツーエンド暗号化(E2EE)は、送信者と受信者との間で送信されたデータを、サードパーティがアクセスできないように暗号化する非対称暗号化暗号と呼ばれるプロセスを使用します。データは送信者によって暗号化され、受信者は暗号化されたデータを取得し、自身で復号化します。
機密性の低い内容にまで、E2EEを適用する必要はありません。
I-1-21 統計分析
統計分析に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① 標本メディアンは、標本が十分大きければ、その中の非常に極端な値に影響されにくい推定量である。
② 相関分析は、分析者が変数間の因果関係を仮定し、説明変数が被説明変数に与える効果を分析するものである。
③ 最小二乗法は、線形回帰分析において2 種類の変数の関係を示す当てはまりの良い直線を引く際などに用いられる。
④ 推定は、母集団から抽出したランダムサンプルに基づいて、その母集団を統計的に描写する手続である。
⑤ 統計的仮説検定は、帰無仮説を棄却して対立仮説を支持できるかどうかを決定する手続である。
正解と解説
【正解②】
②は回帰分析の説明です。
相関分析とは、2つのデータの関係性の強さを表す指標(相関係数)を計算し、数値化する分析手法です。
I-1-22 ネット炎上
我が国におけるインターネット上の誹謗中傷などのネット炎上に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① ネット炎上の発生件数はスマートフォンの普及や、 SNS 利用者の増加とともに急激に増加した。
② ネット炎上の書き込みに直接参加する者は、インターネット利用者の数パーセント程度以下のごく少数に過ぎないという複数の調査結果がある。
③ 若年層を中心としたテレビ・新聞離れにより、ネット炎上がこれらのマスメディアで認知される割合は極めて低く、ほとんどはソーシャルメディアで認知され拡散する。
④ インターネットの書き込みにより、誹謗中傷などの被害にあった場合への対応として、厚生労働省、総務省、法務省などが相談窓口を開設している。
⑤ いわゆるプロバイダ責任制限法では、インターネット上の誹謗中傷を受けた者の被害回復のために、匿名の発信者を特定するための発信者情報開示制度を定めている。
正解と解説
【正解③】
総務省「情報通信白書 (令和元年度)」に、ネット炎上の統計データの説明が記載されています。
平均的日本人の多くはテレビによって情報を得ることが指摘され、、半数以上がテレビのバラエティ番組からという調査結果があります。中でも。「テレビのニュース番組」の割合も3割程度と高く、マスメディア経由での認知が多くなっています。
I-1-23 クラウドに関する知識
クラウドコンピューティング(以下「クラウド」という。)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① クラウドは、データやアプリケーションなどのコンピュータ資源をネットワーク経由で利用する仕組みである。
② エッジコンピューティングは、従来のクラウドよりもユーザに近い領域でデータ処理機能を提供することで、 リアルタイム性を確保する技術である。
③ 企業がクラウドサービスを利用する効果の例として、システム構築の迅速さ・拡張の容易さ、初期費用・運用費用の削減、可用性の向上、利便性の向上などが挙げられる。
④ クラウドサービスのうちPaaS は、電子メール、グループウェアなどのアプリケーションの機能をネットワーク経由で利用者に提供するサービスである。
⑤ パブリッククラウドは、クラウドの標準的なサービスを不特定多数が共同で利用する形態を指し、プライベートクラウドは、利用者専用のクラウド環境を指す。
正解と解説
【正解④】
④はSaaS の説明です。クラウドサービスはサービスの利用形態によってSaaS (Software as a Service)、PaaS (Platform as a Service)、IaaS (Infrastructure as a Service)の3つに分類できます。最もクラウド上のシステムを利用する方式がSaaS、使わない方式がIaaS、中間がPaaSです。

I-1-24 多要素認証
オンライン本人認証方式に用いられる3 つの要素のうち2 つ以上を組合せた多要素認証の例とし
て、次の組合せのうち最も不適切なものはどれか。
① パスワード + 秘密の質間に対する答え
② ワンタイムパスワードのトークン + パスワード
③ IC カード + 指紋
④ 音声 + パスフレーズ
⑤ パスフレーズ + IC カード
正解と解説
【正解①】
多要素認証とは、認証の3要素である「知識情報」、「所持情報」、「生体情報」のうち、2つ以上を組み合わせて認証する手法です。
①は両方とも「知識情報」です。