I-1-9 労使関係
労使関係に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
① パートタイム労働者は、労働組合に加入することはできない。
② 団体交渉では、賃金や労働時間、休日などの労働条件のほか、団体交渉の手続、組合活動における施設利用の取扱いなどが交渉事項となり得る。
③ 労働委員会は、半数は使用者を代表する者、残りの半数は労働者を代表する者によって構成される。
④ 労働委員会が行うあっせんは、紛争当事者間の自主的解決を援助するため、あっせん員が当事者間の話合いの仲立ちなどを公開で行うものである。
⑤ 労働委員会が調停を進める中で調停案を提示した場合、労働者側、使用者側のいずれもこれを受け入れなければならない。
正解と解説
【正解②】
① パートタイム(非正規)労働者も労働組合に加入できます。
③ 労働委員会は、「公益を代表する者」(公益委員、弁護士など)も含めた三者各同数から構成されます。
④ あっせんは「非公式」でおこなわれます。
⑤ 調停結果を受け入れるか否かは任意です。
あっせんは原則として法律又は 技術の委員一人が担当しますが、調停は三人の委員で行われ、原則として法律委員一人と技術委員二人、若しくは法律委員一人、技術委員一人、一般委員一人の合議制によって運営されます。
あっせんは法律的又は技術的な争点が少ない事案に適し、調停は、法律的又は技術的な争点が多い事案に適していると言えます。
I-1-10 労働者派遣法
いわゆる労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者保護等に関する法律)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① 同一の事業所で3 年を超えて労働者派遣の役務の提供を継続して受け入れる場合には、派遣先事業所の労働者の過半数で組織する労働組合、又はそれがないときには労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
② 60 歳以上の定年による退職者を除き、自社で直接雇用していた正社員、契約社員、アルバイトを、離職後1 年以内に派遣元事業主を介して派遣労働者として受け入れることは禁止されている。
③ 派遣先は、派遣労働者に対し派遣先事業所の労使協定の範囲内で時間外労働や休日労働を行わせることができる。
④ 派遣先は、派遣先の労働者が利用する給食施設、休憩室、更衣室については、派遣労働者に対しても利用の機会を与えなければならない。
⑤ 派遣先は、労働者派遣契約を締結するに当たり、あらかじめ派遣元事業主に対し、派遣労働者が従事する業務ごとに、比較対象労働者の賃金等の待遇に関する情報を提供しなければならない。
正解と解説
【正解③】
派遣労働者に対しては、派遣元の36協定が適用されます。よって、派遣先は、派遣元の労使協定に従って派遣労働者の労務管理をする必要があります。
I-1-11 育児・介護休業法と労働基準法
いわゆる育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)、労働基準法に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
① 介護休業の対象家族には、配偶者の祖父母が含まれる。
② 労働者は、要介護状態にある対象家族を介護するために、対象家族1 人につき、通算93 日まで、3 回まで分割して介護休業を取得することができる。
③ 事業主は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者について、所定労働時間の短縮等の措置を講ずるよう努めなければならない。
④ 介護休暇を取得する要件を満たす労働者が、介護休暇を事業主に申し出たときに、事業主は業務の正常な運営を妨げる場合には拒むことができる。
⑤ 年次有給休暇の算定に当たっては、労働者が介護休業を取得した期間は出勤日数に含まない。
正解と解説
① 介護休業の対象家族は次の通りです。
- 配偶者
- 父母 (養父母を含む)
- 子 (養子を含む)
- 配偶者の父母
- 同居し、かつ扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫
③ 所定労働時間の短縮等の措置を講ずることは義務です。「努力義務」は誤りです。
④ 事業主は、介護休暇の申し出があれば受け入れる義務があります。
⑤ 介護休暇も出勤日数に含みます。
I-1-12 セクハラ対策指針
職場におけるセクシャルハラスメントについて政府が策定した指針(事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① 事業主が講ずべき措置とは、職場におけるセクシャルハラスメントに関する方針の明確化及びその周知・啓発、相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応等である。
② 職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、その労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることを環境型セクシャルハラスメントという。
③ 事業主が講ずる措置の対象となる職場とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、通常就業している場所以外であっても、労働者が業務を遂行する場所であれば職場に含まれる。
④ 事業主が講ずる措置の対象となる労働者には、非正規雇用労働者を含む事業主が雁用する労働者の全てのほか、その職場を派遣先とする派遣労働者も含まれる。
⑤ 職場におけるセクシャルハラスメントの行為者には、事業主、上司、同僚に限らず、取引先等の他の事業主又はその雇用する労働者、顧客もなり得る。
正解と解説
【正解②】
②は対価型セクシュアルハラスメントの説明です。
セクハラには、対価型・環境型・制裁型・妄想型の4つの種類があります。
対価型セクシュアルハラスメントと環境型セクシュアルハラスメントは、男女雇用機会均等法第11条第1項により、防止措置を講じることが義務付けられています。
- 対価型セクシュアルハラスメント
性的な言動を拒否したために労働条件に不利益を受けるセクハラ - 環境型セクシュアルハラスメント
性的な言動を受けたために就業環境が害され、能力の発揮に支障をきたすセクハラ
視覚型・発言型・身体接触型の3つに分類される - 制裁型セクシュアルハラスメント
性差別的な価値観に基づき、女性の昇進や活躍を否定・抑圧するセクハラ - 妄想型セクシュアルハラスメント
相手が自分に好意があると勘違いし、しつこく付きまとうセクハラ
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I-1-13 組織文化
組織文化に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
① 組織文化は、組織の中でメンバーがどのように行動すべきかを示す公式な決まりの体系である。
② オフィスの環境や衣服などの表層的なものは、組織文化とは無関係である。
③ 組織文化には、組織のメンバーにとって当然のこととみなされる前提や仮定も含まれる。
④ 直面する環境が大きく変化した場合でも、組織がそれに適合した組織文化を形成していくことは容易である。
⑤ 1 つの企業では部門ごとに異なる組織文化が形成されることはない。
正解と解説
【正解③】
①「公式」は誤りです。組織文化は「非公式な決まりの体系」です。
②「オフィスの環境や衣服などの表層的なもの」は、組織文化と関係があります。
④組織文化を変えることは容易ではない。
⑤組織文化は、部門ごとに形成されることもある。
I-1-14 労働分配率及び労働生産性
マクロ経済ベースでの我が国の労働分配率及び労働生産性に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお「G7 サミット参加国」とは、アメリカ、イギリス、 ドイツ、フランス、 日本、カナダ及びイタリアをいう。
① 労働分配率は、景気拡大局面においては低下し、景気後退局面においては上昇するという特徴がある。
② 2000 年以降の資本金規模別にみた労働分配率の比較では、「資本金1 千万円以上1 億円未満の企業」は、「資本金10 億円以上の企業」に比べ、労働分配率が低い。
③ 2019 年度における国民所得に占める雇用者報酬の比率は、 50%を下回っている。
④ 2018 年における主要産業の労働生産性の比較では、「宿泊・飲食サービス業」は「製造業」より高い。
⑤ G7 サミット参加国における2019 年の一人当たりの名目GDP の比較では、日本は高い方から2 番目である。
正解と解説
【正解①】
労働分配率は次の式で定義されます。
労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100
給与や福利厚生費などの人件費が増えれば労働分配率は上がり、企業活動を通して生み出される付加価値が増えれば労働分配率は下がります。
つまり、労働分配率が低いほど、効率よく付加価値を生み出していると言えます。
この関係を簡単にまとめると次のような関係になります (実際は、それぞれの項目は相互作用するため、こんなに単純ではありません)。
人件費 | 付加価値 | 労働分配率 | |
好景気 | → | ↑ | ↓ 低下 |
不景気 | → | ↓ | ↑ 上昇 |
給与上昇 | ↑ | → | ↑ 上昇 |
給与減少 | ↓ | → | ↓ 低下 |
②労働分配率(付加価値に占める人件費の割合)は高くなります。
③国民所得は、賃金総額(雇用者報酬)、企業の利益(営業余剰・混合所得)の合計額として定義されます。
労働分配率=国民所得に占める雇用者報酬の比率
という関係があります。近年は70%前後で推移しています。
④製造業のほうが労働生産性が高いです。
労働生産性 = 付加価値 ÷ 従業員数
労働生産性とは従業員1人あたりの付加価値であり「会社の稼ぐ力」を表す指標です。
⑤G7は、日本、アメリカ、カナダ、フランス、イギリス、ドイツ、イタリアの7か国で、一人当たりの名目GDP の比較では、日本は高い方から2 番目です。
I-1-15 メンター制度
メンター制度(社員の間に計画的にメンターとメンティのペアをつくりメンタリングを行う制度)を企業が導入する場合、次の記述のうち最も適切なものはどれか。
① メンタリング開始に当たり、メンターに対し実施方法に関する事前研修を行い、メンティに対しては事前研修を行わないことが一般的である。
② メンターは、メンティの直属のラインであることが望ましい。
③ メンタリングは、原則として就業時間外に行う。
④ メンター制度を導入することにより、女性の活躍推進を促す効果も期待される。
⑤ メンターは、メンタリングで話し合われた内容を人事担当部局に報告することが望ましい。
I-1-16 職能別組織と事業部制組織
以下の(ア) ~ (エ)のそれぞれについて、職能別組織と事業部制組織のどちらが優位であるかを整理した。次のうち、優位な組織の組合せとして、最も適切なものはどれか。
(ア)専門的な知識や経験の蓄積
(イ)活動規模の拡大に伴う単位コストの低下
(ウ)事業環境の変化への迅速な対応
(エ)次世代の経営者の育成
ア | イ | ウ | エ | |
---|---|---|---|---|
① | 職能別組織 | 職能別組織 | 事業部制組織 | 事業部制組織 |
② | 事業部制組織 | 職能別組織 | 職能別組織 | 職能別組織 |
③ | 職能別組織 | 職能別組織 | 職能別組織 | 事業部制組織 |
④ | 事業部制組織 | 事業部制組織 | 職能別組織 | 職能別組織 |
⑤ | 事業部制組織 | 事業部制組織 | 事業部制組織 | 職能別組織 |
正解と解説
【正解①】
事業部制とは本社部門の下に、事業ごとに編成された組織(事業部)を配置した組織形態。本社部門の負担を減らし、各事業で迅速な意思決定ができる。企業が多角化したり、地理的に拡大したりすると、本社部門がすべての事業に関する意思決定を行うのは難しくなります。
職能別組織は「機能別組織」と呼ばれ、職能や業務内容ごとに部門を編成する組織形態を指します。「営業部」「製造部」「経理部」というように機能ごとに部門を編成したものです。活動規模が大きくなると業務の効率化が進み、単位コストの低下がはかれます。