I-1-9 高齢化社会に対応するための関係法令
高齢化社会の進展に伴い、関係法令が整備されてきた。いわゆる男女雇用機会均等法、高齢者雇用安定法等の諸法令に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
①事業主が、厚生年金の支給年齢の男女差と整合を図ることを理由として、男女で異なる定年を定めることは法令で禁じられている。
②65 歳以上の労働者は雇用保険の加入対象とならない。
③定年の定めを廃止した事業主は、定められた方法により年齢制限の理由を明らかにした場合に、65歳以下であることを条件として労働者の募集及び採用を行うことができる。
④継続雇用制度を導入している事業主は、定年退職者の希望に合致した条件で雇用を行う義務がある。
⑤継続雇用制度を導入している事業主は、継続雇用制度で雇用を希望する定年退職者を自己の子法人等に引き継いで雇用させてはならない。
正解と解説
【正解①】
②65歳以上も雇用保険に加入できます。
③年齢を条件にして募集及び採用活動はできません。
④継続雇用は、「定年退職者の希望に合致した条件」という義務はありません。
⑤「定年退職者を自己の子法人等に引き継いで雇用する」ことは可能です。
I-1-10 労働者のメンタルヘルスケア
労働者(高度プロフェッショナル制度適用者、研究開発業務従事者を除く)のメンタルヘルスケアやストレスチェックに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
①衛生委員会の設置が義務付けられている事業場においては、労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立について、衛生委員会が調査審議を行う。
②産業医の選任が義務付けられていない事業場においては、労働者へのストレスチェックは努力義務である。
③事業者は、法定労働時間を超えて労働した時間が月80時間を超えた労働者に対して、その超えた時間に関する情報を当該労働者に通知しなければならない。
④高ストレス者を選定するための選定基準は、医師等のストレスチェック実施者の意見等を踏まえ事業者が決定する。
⑤事業者は、ストレスチェックでは面接指導対象者として選定されなかった労働者に対しても、面接指導の申出に応じる義務がある。
正解と解説
【正解⑤】
「面接指導の申出に応じる義務がある」という点は誤りです。そのような義務はありません。
I-1-11 障害者雇用促進法
いわゆる障害者雇用促進法に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
①事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して障害者でない者と均等な機会を与えなければならないとされており、障害者のみを対象とした求人は差別に当たる。
②雇用の義務や障害者雇用納付金制度の対象となる障害者とは、身体障害者、知的障害者、精神障害者(精神障害者保険福祉手帳の交付を受けている者に限る。)をいう。
③障害者雇用納付金制度では、民間企業に対して、常用雇用労働者数にかかわらず、法定雇用率未達成の企業から納付金を徴収し、法定雇用率を超えて雇用を行っている企業には調整金を支給している。
④国及び地方公共団体は、障害者雇用率について法令の定めはないが、障害者の採用に関する計画を作成しなければならない。
⑤障害者雇用率に関する労働者の算定に当たっては、パート、アルバイトは、常用雇用する労働者の総数に含まれない。
正解と解説
【正解②】
①障害者雇用促進法に、このような記述はありません。似たような文章として、第三十四条に
“事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない。”とあります
③「常用雇用労働者数にかかわらず」は誤りです。正しくは、「常用雇用労働者数100 人以上の企業から」です。
④令和5年度からの障害者雇用率は2.7%です。ただし、雇入れに係る計画的な対応が可能となるよう、令和5年度においては2.3%で据え置き、令和6年度から2.5%、令和8年度から2.7%と段階的に引き上げることになっています。
⑤パート・アルバイトなどの短時間労働者は、1人あたり0.5人としてカウントします。
I-1-12 ダイバーシティ・マネジメント
企業経営におけるダイバーシティ・マネジメントとは、性別、人種、雇用形態などが異なる多様な人材を適材適所で活用することとされている。ダイバーシティ・マネジメントに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
①ダイバーシティ・マネジメントは企業内の差別の解消や人権の確立と密接な関係がある。
②ダイバーシティ・マネジメントの推進に当たっては、売上高等の業績に関する指標や生産性に関する指標などと連関させることは避けるべきである。
③ダイバーシティ・マネジメントは、労働力の量的な確保だけでなく質的確保という面からも重要である。
④ワークライフバランスを重視し働き方改革を進めることは、ダイバーシティ・マネジメントを推進する上で重要な施策である。
⑤人材の多様化により個人の評価を丁寧に行うことが必要となり、人材のきめ細かい評価と効果的な活用が行われることにつながる。
正解と解説
【正解②】
経済産業省発行の「ダイバーシティ 2.0 行動ガイドライン」内に、”業績・生産性に関する指標と連関させることが有効である”とあります。
I-1-13 ジョブローテーション
ジョブローテーションに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
①長期雇用を前提とする正職員よりも有期雇用の職員に対しての適用性が高い。
②職員の適性を重視して異動先を決めるシステムであるため、異動先の部署は適材適所の人材を得ることができる。
③特定分野の専門家などの、スペシャリストを育成するために適している。
④職務給制度を採用する企業においては導入が容易である。
⑤職員の、組織全体の業務に対する理解促進、環境変化への適応力向上などの効果が期待できる
正解と解説
【正解⑤】
ジョブローテーションとは、様々な業務経験を積ませるために、定期的な配置転換を行うことです。ジョブローテーションによって、従業員は在籍期間中に複数の部署を経験することができるため、俯瞰的に会社全体の業務内容や経営環境を知ることが可能となります。
このことから、①有期雇用職員よりも長期雇用向け、②異動先を決めるシステムではない、③スペシャリスト育成目的ではない、ということがわかります。
職務給制度は、仕事内容によって給与が決まる制度です。よって、仕事内容が変わると給与も変わるため、ジョブローテーションシステムの導入は難しくなります。
I-1-14 外国人技能実習制度
いわゆる技能実習法(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)に基づく外国人技能実習制度に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
①技能実習生を受け入れる企業は、実習生のグループ単位で、技能実習計画を作成しなければならない。
②技能実習生は、初年度に2 か月間の講習を受講することをもって、2 年度目以降の技能実習に進むことができる。
③技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。
④技能実習生の賃金は、使用者と実習生が最低賃金法による最低賃金を下回る賃金で合意し労働契約を締結した場合は、合意した額とすることができる 。
⑤技能実習生は、日本国内において最長10 年間の技能実習を受けることが可能である。
正解と解説
【正解③】
①技能実習計画はグループ単位ではなく、技能実習生ごとに作成しなければなりません。
②初年度の活動の6分の1以上の活動が必要です。
④最低賃金法第4条は適用され、最低賃金法を下回ると違法です。
⑤「最長10年間」は誤りで、正しくは「5年間」です。
I-1-15 能力開発手法
ある管理職が、次の(ア)~(オ)のような部下の能力開発について検討を行っている。それぞれの部下が経験する能力開発手法の組合せで、最も適切なものはどれか。
(ア)A 君は、仕事のやり方は概ね覚えたが、対人能力を高める必要があることから、当社と契約している教育機関のマンツーマントレーニングに参加させたい。
(イ)B 君には、将来海外部門で幹部となってほしいことから、まずは海外支店に異動させ、支店長の指導の下で、語学力向上も目指して海外業務を経験させたい。
(ウ)C 君は、事務処理能力は優れているが、企画能力は十分ではないため企画課に数か月預け、業務を手伝いながら学んでもらいたい。
(エ)D 君は、週に一度職務時間外の英語講座に通いたいと話していた。彼ができるだけ参加できるよう、その曜日の残業は配慮したい。
(オ)E 君には、問題解決能力を高めるために、ブレインストーミングの社内研修に参加してもらいたい。
ア | イ | ウ | エ | オ | |
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① | OFF-JT | OJT | OJT | 自己啓発 | OFF-JT |
② | OJT | 自己啓発 | OJT | OFF-JT | OFF-JT |
③ | OFF-JT | 自己啓発 | OFF-JT | 自己啓発 | OJT |
④ | OJT | OFF-JT | OJT | OFF-JT | OFF-JT |
⑤ | 自己啓発 | OJT | OJT | OFF-JT | 自己啓発 |
正解と解説
【正解①】
「OJT」とは、英語の「On the Job Training」を略した言葉で、「職場内訓練」を意味します。代表的な人材育成の手法のひとつで、おもに先輩社員が新入社員の指導担当者として、実際の業務を行いながら仕事を学びます。
「Off-JT」とは、英語の「Off the Job Training」を略した言葉です。「職場外訓練」を意味し、実際の業務とは離れた場所で人材育成を行います。
例えば、講義などの集合研修や、業務時間中の書籍による学習、eラーニングが挙げられます。「自己啓発」は、「Self Development」を略してSDとも呼ばれ、社員による自発的な学習を意味します。OJTやOff-JTとの大きな違いは、自発的に、業務時間外に実施する点です。
I-1-16 人的資源管理に関する用語
人的資源管理に関するA~D に示した用語について、それぞれの下にある(ア)、(イ)のうち、ふさわしい説明の組合せとして、最も適切なものはどれか。
A:コンピテンシー
(ア)組織の業績向上をもたらす適度な競争環境。
(イ)高い業績をあげている社員のもつ業績達成能力。
B:サーバントリーダーシップ
(ア)企業において上司の指示を正確に理解して行動する社員(サーバント)と、部下に 的確な指示を出すリーダーの最適な組合せにより高い効率を追求する経営哲学。
(イ)「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」というリーダーシップ哲学。
C :人事評価における「ハロー効果」
(ア)被評価者のある一点が優れているとほかの点も優れていると考えてしまうことにより生じる評価誤差。
(イ)評価者の身近で仕事をしている被評価者に対して個人的な親しみを感じることにより生じる評価誤差。
D:組織開発における「コンテント」と「プロセス」
(ア)「コンテント」は、組織において何が話され、何が取り組まれているか等のwhat の側面をいい、「プロセス」はどのように参加がなされ、どのように進められているか等のhow の側面をいう。
(イ)「コンテント」は、診断型組織開発を行う際に必要な調査項目をいい、「プロセス」はそのための手順をいう。
A | B | C | D | |
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① | ア | ア | ア | イ |
② | イ | イ | イ | ア |
③ | ア | ア | イ | イ |
④ | イ | イ | ア | ア |
⑤ | イ | ア | ア | イ |
正解と解説
【正解④】
- コンピテンシー : 高い業績をあげている社員のもつ業績達成能力
- サーバントリーダーシップ : 「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」というリーダーシップ哲学
- ハロー効果:被評価者のある一点が優れているとほかの点も優れていると考えてしまうことにより生じる評価誤差。
- コンテント・プロセス:「コンテント」は、組織において何が話され、何が取り組まれているか等のwhat の側面をいい、「プロセス」はどのように参加がなされ、どのように進められているか等のhow の側面をいう。