I-1-9 労務管理
労務管理に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① 臨時の賃金等を除き、賃金は原則として、毎月1 回以上、一定の期日を定めて、通過で、直接労働者に、全額を支払わなければならない。
② 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合は、変更後の就業規則を労働者へ周知し、かつ労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、内容の相当性、労働組合等との交渉の状況等が合理的である必要がある。
③ 事業主は、就業場所の変更を伴う配置の変更を行おうとする場合に、その就業場所の変更によって子育てや介護が困難になる従業員がいるときは、当該従業員の子育てや介護の状況に配慮しなければならない。
④ 法律で解雇が禁上されている場合として、次のものがある。
(ア)業務上の傷病による休業期間及びその後30 日間の解雇
(イ)産前産後の休業期間及びその後30 日間の解雇
(ウ)女性の婿姻、妊娠、出産、産前産後休業等を理由とする解雇
⑤ 派遣労働者が通算5 年を超えて同一の派遣先入派遣された場合は、当該労働者の申込みにより、無期労働契約に転換することが派遣先の事業主に義務付けられている。
正解と解説
【正解⑤】
無期転換の申込先は派遣先企業ではなく派遣会社(派遣元の企業)です。よって、「派遣先の事業主に義務付けられている」という箇所が誤りです。
I-1-10 働き方改革を推進するための関係法律
平成30 年7 月に公布された働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律に関する以下の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① 時間外労働の上限が罰則付きで法律に規定され、法違反の有無は所定外労働時間の超過時間で判断される。
② 使用者は、10 日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、そのうち5 日について、基準日から1 年以内の期間に労働者ごとに、時季を指定して与えなければならない。
③ 使用者には労働者の労働時間を適切に把握する責務があり、労働時間の状況の把握は、タイムカードによる記録、PC 等の使用時間の記録等の客観的な方法や使用者による現認が原則となっている。
④ 事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない。
⑤ 産業医を選任した事業者は、産業医に対し産業保健業務を適切に行うために労働者の労働時間その他必要な情報を提供しなければならない。
正解と解説
【正解①】
所定外労働時間が誤りで、正しくは法定時間外労働時間
所定外労働時間:企業が定めた所定労働時間を超過した残業
法定時間外労働:労働基準法で定められた法定労働時間を超過した残業
<改正後の時間外労働の上限 2020年から中小企業にも適用>
【原則】
月45時間・年360時間
【特別条項付きの36協定を締結している場合の上限】
・時間外労働が年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
・時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6カ月が限度
・時間外労働と休日労働の合計について、「2カ月平均」「3カ月平均」「4カ月平均」「5カ月平均」「6カ月平均」が全て1月当たり80時間以内
I-1-11 労使関係
労使関係に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① 常時10 人以上の労働者を使用する事業場において、就業規則を作成し、又は変更する場合には、労働者の過半数で組織する労働組合、又はそれがないときには労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
② 1 つの事業場の常時使用される同種の労働者の過半数が1 つの労働協約の適用を受けるときは、残りの同種の労働者にもその協約が適用される。
③ 労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えることは不当労働行為として禁止されているが、最小限の広さの組合事務所の供与等は除かれている。
④ 会社の責任で労働者を休業させた場合、休業期間中、会社は当該労働者の平均賃金の6 割以上の休業手当を支払わなければならない。
⑤ 労働委員会が行うあっせんは、紛争当事者双方の主張のとりなしや団体交渉のとりもちなどをあっせん員が行うことにより当事者間の自主的解決を援助するものである。
正解と解説
【正解②】
②は「労働協約の拡張適用」に関する記述です。過半数ではなく「3/4以上」が正です。
I-1-12 職場のパワーハラスメント
職場のパワーハラスメントに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。以下、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律を「個別労働紛争解決促進法」といい、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律を「男女雇用機会均等法」という。
① 職場のパワーハラスメントには、上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間などの様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。
② 個人の受け取り方によっては、業務上必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、これらが業務上の適正な範囲で行われている場合には、職場のパワーハラスメントには当たらない。
③ 職場のパワーハラスメントの行為類型として、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求などがある。
④ 職場のパワーハラスメントに関する紛争の解決方法については、個別労働紛争解決促進法に基づく紛争調整委員会によるあっせん制度等がある。
⑤ 職場のパワーハラスメントについては、事業主に雇用管理上必要な措置を講ずることが男女雇用機会均等法において義務付けられている。
正解と解説
【正解⑤】
「職場のパワーハラスメントについては、事業主に雇用管理上必要な措置を講ずること」は2019年に改正された労働施策総合推進法によって義務付けられています。
I-1-13 人事評価に関するバイアスと評価誤差
人事評価に関し、様々なバイアスに起因する評価誤差の問題があると言われている。これに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① ある人に1 つ優れた点があると、ほかの点も優れて見えてしまうことがある。これを防ぐため、評価者は被評価者に対する先入観を捨てること、事実に基づく評価を行うこと等が重要である。
② ―評価者が被評価者には悪い点をつけたくない、被評価者からよく思われたいと考える場合等には、実際以上に高く評価してしまいがちである。これを防ぐため、評価者は具体的事実や評価要素に沿った評価を行い、私的感情の除去に努めること等が重要である。
③ 被評価者に対して冷静な分析がなされていない場合や評価基準があいまいである場合には、評価が標準レベルに集中する傾向がある。これを防ぐため、組織は評価者に対して人事評価の目的、仕組み、評価要素、評価の方法等を徹底すること等が重要である。
④ 各評価項目について、評価者が自身で被評価者の業務を行ったとした場合の想定される実績と被評価者の実際の実績との対比に基づく評価を行うことにより、評価誤差の低減に貢献できる。
⑤ 多面評価は、直接の上司だけでなく同僚、後輩、一緒に仕事をした他部門の社員、顧客等からの評価を考慮することであり、評価誤差の低減に貢献できる。
正解と解説
【正解④】
このような評価手法は、評価誤差の低減にはつながりません。
I-1-14 人の行動モデル
人の行動モデルに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
① マグレガーによれば、X 理論では「人は働くことをポジティブに捉える存在である」、Y 理論では「人は働くことをネガティブに捉える存在である」とし、Y 理論に基づき「アメ」と「ムチ」を使い分けながら管理する方が、業績は上がるとしている。
② マズローによれば、人の欲求は低次元から高次元まで5 段階あり、人の特徴はその複数の段階の欲求を並行して追求していくものとしている。
③ ハーズバーグが提案した二要因理論によれば、職務満足感につながる要因と、仕事に対する不満につながる要因とは別のものであり、職務への動機付けのためには、後者の要因を除去することを優先すべきであるとしている。
④ メイヨーらがホーソンエ場で行った実験によれば、労働者の生産性向上をもたらす要因は、感情や安心感よりも賃金であるとされている。
⑤ アッシュの研究によれば、集団のメンバーは、常にその集団に受け入れられたいと望むため、集団規範に同調しがちであるとしている。
正解と解説
【正解⑤】
①X理論とY理論が逆です。
②マズローの欲求5段階説は、それぞれの欲求は段階的に上がっていくとされています。
③ハーズバーグの二要員理論は、満足感の要因と不満の要因につながりは無いとされています。
④メイヨーのホーソン実験は、「生産性向上には賃金ではなく感情や安心感が重要」という結論です。
I-1-15 教育訓練技法
次の(ア)~ (工)に示す教育訓練の目的と、(A)~ (D)に示す教育訓練技法の組合せのうち、最も適切なものはどれか。
<教育訓練の目的>
(ア)知識、事実の習得
(イ)態度変容、意識改革
(ウ)問題解決力・意思決定の向上
(エ)創造性開発
<教育訓練技法>
(A)討議法、ロール・プレイング
(B)ブレインストーミング、イメージ・トレーニング
(C)ケース・スタディ、ビジネス・ゲーム
(D)講義法、見学
ア | イ | ウ | エ | |
---|---|---|---|---|
① | D | A | C | B |
② | A | D | C | B |
③ | D | B | A | C |
④ | D | A | B | C |
⑤ | C | B | A | D |
正解と解説
【正解①】
教育訓練の目的と教育訓練技法の組み合わせはたびたび出題されるので、理解しておきましょう。
I-1-16 組織開発
組織開発に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① 「対話型組織開発」は、診断を行わずに対話を通じて現状を把握し、組織の取組の計画を策定し実行するものである。
② 「診断型組織開発」は、「対話型組織開発」から発展して成立した手法であり、組織の診断を集中的に行うものである。
③ 組織開発では、価値や考え方が対立する場合、一方を優先して他方を無視するのではなく、それらの同時最適解を探ることが大切だという考えがある。
④ 組織開発でキーとなる概念には、「コンテント」と「プロセス」があり、「コンテント」は課題・仕事などの内容的な側面であり、「プロセス」はどのように課題や仕事が進められているか、などといった関係的過程を意味する。
⑤ 組織開発では、決まった取組を当てはめるのではなく、実施する取組を現状に合わせてカスタマイズすることが大切だとされている。
正解と解説
【正解②】
診断型組織開発は対話型組織開発から発展したものではなく、それぞれの使い分けが重要です。