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総合技術監理とは?
理解できないものは「恐怖」になる
「総合技術監理」と聞いても、何を意味しているのかピンとこない。
こういうときは、英語で検索するとよい。
技術士会のホームページによると、総合技術監理の英訳は「Engineering Management」とのこと。
「Engineering Management」を日本語訳すると「経営工学」。
ちょっと待てよ、技術士には「経営工学部門が存在するぞ?」と気づいた方は鋭い。
技術士の言う「経営工学部門」の英訳は「Industrial Management」とのこと。
そして、「Industrial Management」の日本語訳は、「産業工学、生産工学、経営工学、管理工学」、、、
ややこしくなってきたので、「技術士会語」を基準にして表にまとめよう。
技術士会語 | 英語 | 日本語 |
---|---|---|
総合技術監理 | Engineering Management | 経営工学 |
経営工学 | Industrial Management | 産業工学 生産工学 経営工学 管理工学 |
正しい英語と、正しい日本語に則ると、 「総合技術監理部門」は「経営工学部門」で、「経営工学部門」は「産業工学部門」が正しいのだろう。
後付けでEngineering Management に関わる部門を新設したのだが、すでに「経営工学」を部門名に使用してしまっていたので、「総合技術監理部門」という長くて、専門性が分からない、妙な部門名になったのだろう。
長くなってしまった。
総合技術管理とは、経営工学とプロジェクト・マネジメント
難しく考える必要はない、不安に思うこともない、恐れることはない。
「総合」「技術」「監理」という”イカツイ”名前でハードルを上げているだけ。
経営工学とプロジェクトマネージャーに関する知識を問われるとわかれば、試験準備もしやすくなる。
総合技術監理部門設立の背景と目的
業務全体を俯瞰、統合し、トレードオフを改善することで全体最適化できる能力
つまり「経営工学」・「プロジェクトマネジメント」(統合, Integrate)の知識を活用できる人材の育成が目的である。
キーワード集に記載がある、長文の背景と目的をまとめたものが、次のフローチャートである。
・要求事項がトレードオフの関係にある
·業務全体を俯瞰的に把握・分析し、5つの管理をまとめ,総合的な判断を行う能力
· 最適な企画,計画,実施,対応等を行える能力
·5つの管理を有機的に関連づける能力
が必要
5つの管理を総合的に勘案し,事業運営や組織活動における重要性や優先順位を判断する能力が必要
5つの管理とは?
では、「5つの管理」とは何なのだろうか。これもキーワード集に書かれている。
経済性管理、人的資源管理、情報管理、安全管理、社会環境管理
さらにキーワード集から引用する。
この文章を5つの管理に振り分けると、次のようになる。
経済性管理 | 製造物・製品の製造を行っていくための仕組み |
人的資源管理 | 多くの技術者がそれぞれの能力を十分に発揮できるための仕組み |
情報管理 | 要素技術の知見など様々な情報を結集するための仕組み |
安全管理 | 事故を未然に防止する技術や事故時でも利用者の安全を確保する技術 |
社会環境管理 | 騒音防止や有害排出物の抑制など周辺環境に与える負荷を抑える社会環境の保全に関する技術 |
より具体的には、5つの管理技術の範囲が提示されている。
経済性管理 | 事業企画,品質の管理,工程管理,原価管理・管理会計,財務会計,設備管理,計画・管理の数理的手法 |
人的資源管理 | 人の行動と組織,労働関係法と労務管理,人材活用計画,人材開発 |
情報管理 | 情報分析と情報活用,コミュニケーション,知的財産権と情報の保護と活用,情報通信技術動向,情報セキュリティ |
安全管理 | 安全の概念,安全に関するリスクマネジメント,労働安全衛生管理,事故・災害の未然防止対応活動・技術,危機管理,システム安全工学手法 |
社会環境管理 | 地球的規模の環境問題,地域環境問題,環境保全の基本原則,組織の社会的責任と環境管理活動 |
さらに具体的にしたものが2章から6章に記載がある”キーワード“である。
単語の羅列で、説明は記載されていないため、自分で意味を調べなければならない。
トレードオフとは?
トレードオフとは「両立できない関係性」
である。
これまでの科学技術の発展は「5つの管理」のトレードオフのうち、「経済性管理」が重視され、他の「4つの管理」が軽視されつつも、そのバランスは少しずつ改善されてきた歴史がある。
例えば、
テイラーの科学的管理法
ヒトを機械の一つのように管理することで生産効率を高める。これは、従業員のモチベーション維持(人的資源管理)
建設業界
ハーネス装着などの安全管理がされておらず、建設計画には「事故死」による生産性減少まで考慮されていた。つまり、”死亡事故有りき”の計画が当たり前だった。
化石燃料の乱使用
石油・石炭により経済性を爆発的に向上させたが、地球環境への影響が顕在化している。
がある。ほかにも、アスベスト、原子力、フロンなど、経済的視点に偏って使用されてきた技術を挙げればきりがない。突き詰めれば、人間の活動はすべて地球環境に影響を与えている。
現在そして将来の人類の生活、地球環境を保つ (Sustain)ためには、トレードオフを解決・解消した科学技術の発展が欠かせないのである。
そのような能力を活用できる人材育成を目的として「総合技術監理部門」が創設されたのである
(と、文部科学省は言っている)。
受験資格
技術補となる資格を有していること
&
業務経歴を有していること
技術士となる資格
技術士第一次試験に合格
or
指定された教育課程を修了 (JABEE)
業務経歴
技術士補登録 有
技術士補に登録後、指導技術士の下で 7年超
or
技術士補登録 無
「技術士となる資格」を有した日以降、職務上の監督者の指導の下で 7年超
or
指導者や監督者の有無や要件を問わず 10年超
いずれの場合も、大学院における研究経歴期間の上限2年短縮
試験方法
7月に筆記試験があります
筆記試験合格者は、年末から年始にかけて口頭試験を受験します
筆記試験
試験方法 | 確認される資質能力 | 解答時間 | 配点 |
択一式 40問 | 知識 | 2時間 | 50点 |
記述式 600字×5枚 | 課題解決能力 応用能力 | 3時間30分 | 50点 |
口頭試験
確認される資質能力 | 試問時間 | 配点 | |
専門知識 応用能力 | 経歴知識及び応用能力 | 20分 | 60点 |
体系的専門知識 | 40点 |
確認される資質能力
課題解決能力 | 社会的なニーズや技術の進歩に伴い、社会や技術における様々な状況から、複合的な問題や課題を把握し、社会的利益や技術的優位性などの多様な視点からの調査・分析を経て、問題解決のための課題とその遂行について論理的かつ合理的に説明できる能力 |
応用能力 | これまでに習得した知識や経験に基づき、与えられた条件に合わせて、問題や課題を正しく認識し、必要な分析を行い、業務遂行手順や業務上留意すべき点、工夫を要する点などについて説明できる能力 |
専門知識 | 専門の技術分野の業務に必要で幅広く適用される原理などにかかわる汎用的な専門知識 |
合格基準
筆記試験
合格基準は、択一式と記述式との合計で60%以上
いずれかが「足切り」として使用されることはありません

口頭試験
筆記試験合格者は口頭試験に進みます
合格基準は、得点60%以上
口頭試験の合格率は、92%前後を推移

難易度

筆記試験と口頭試験に合格した、
最終合格率は15 %前後で推移しています。
受験者は、他部門の技術士資格保有者がほとんどを占めます。
そのような母集団の合格率が15%というのは非常に低い、
つまり、難易度は非常に高い
と言えるでしょう。
スケジュール
受験申込書作成、提出
配布
令和5年3月27日(月)~4月17日(月)
提出
令和5年4月3日(月)~4月17日(月)
受験票受領、受験会場公表
筆記試験
令和5年7月16日(日)
筆記試験 合格者発表
口頭試験の日時及び場所、合否及び成績とあわせて通知
口頭試験
口頭試験 合格者発表