I-1-9 労働基準法と労働安全衛生法
労働基準法,労働安全衛生法に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。
① 使用者は,労働者に時間外労働,休日労働を行わせる場合には,時間外労働,休日労働に関する労使協定を締結し,行政官庁に届け出なければならない。
② 時間外労働や休日労働に係る労働時間に関して,1か月,複数月,年間などの期間に応じた上限が罰則付きで規定されており,一部の事業・業務については,適用が猶予されている。
③ 使用者が,労働者に1か月について60時間を超える時間外労働を行わせた場合,60時間を超える部分の労働に係る割増賃金は,割増賃金の基礎となる賃金の5割以上である。
④ 事業者は,健康管理の観点から,裁量労働制の適用者及び管理監督者を除き,労働者の労働時間の状況を客観的な方法,その他適切な方法で把握しなければならない。
⑤ 産業医を選任した事業者は,産業医に対し,労働者の労働時間に関する情報など,産業医が労働者の健康管理を適切に行うために必要な情報を提供しなければならない。
解答と解説
【正解④】
①労働基準法 第三十六条(時間外及び休日の労働)
②労働基準法 第三十六条(時間外及び休日の労働)
③労働基準法 第三十 七 条 (時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条
使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が 一箇月について六十時間を超えた場合 においては、 その超えた時間 の労働については、 通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金 を支払わなければならない。
④「裁量労働制の適用者及び管理監督者を除き」は誤りです。「裁量労働制の適用者及び管理監督者」も労働時間把握対象です。対象外となるのは、「高度プロフェッショナル制度対象労働者」です。
高度プロフェッショナル制度対象労働者を除く全ての労働者が対象となる。
⑤労働安全衛生規則 第十四条の二(産業医に対する情報の提供)
I-1-10 女性の活躍と育児等に係る諸法令
労働における女性の活躍や育児等に係る諸法令に関する次の記述のうち,最も適切なものはどれか。なお,いずれの記述も,一般の民間企業及びその労働者を対象としている。
① 事業主は,常時雇用する労働者の数に関わらず,女性の職業生活における活躍の推進に関して,数値目標を盛り込んだ行動計画を策定し公表しなければならない。
② 事業主は,事実上生じている男女間格差を解消することを目的に,募集及び採用,配置,昇進などについて,女性労働者に有利な措置を行うことができる。
③ 事業主は,職場において行われる労働者に対する育児休業等の制度又は指置の利用に関する言動により,労働者の就業環境が害されることのないよう,体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じるよう努めなければならない。
④ 年次有給休暇の日数を設定する際に用いられる労働者の出勤率を算定するに当たっては,労働者が育児休業を取得した期間は出勤日数に含まない。
⑤ えるぼし認定とは,労働者の仕事と子育てに関する行動計画を策定した事業主のうち,男性労働者の育児休業等取得率などの一定の基準を満たした事業主を認定する制度である。
解答と解説
【正解②】
①「常時雇用する労働者の数に関わらず」は誤りです。正しくは、「 常用労働者数が 101 人以上の事業主は義務、 100 人以下の事業主は努力義務」です。
③「講じるよう努めなければならない」は誤りです。正しくは「義務」です。
④「育児休業を取得した期間は出勤日数に 含まない」は誤りです。正しくは「含める」です。
⑤えるぼし認定は、女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)に基づいて、女性の活躍推進に関する状況や取り組みなどが優良な企業を認定する制度で、厚生労働省が付与します。
I-1-11 パワーハラスメント
職場におけるパワーハラスメントについて政府が策定した指針(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。
① 職場におけるパワーハラスメントとは,優越的な関係を背景とした言動であって,業務上必要かつ相当な範囲を超えたものを言い,労働者の就業環境が害されるか否かに依らない。
② 職場におけるパワーハラスメントには,上司から部下に対して行われるものだけではなく,同僚又は部下などが有する優越的な関係を背景に行われるものも含まれる。
③ 事業主は,職場におけるパワーハラスメントに係る相談窓口をあらかじめ定め,労働者に周知するとともに,相談窓口の担当者が相談内容や状況に応じ,適切に対応できるようにしなければならない。
④ 事業主は,労働者が職場におけるパワーハラスメントに関して相談したこと等を理由として,解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め,労働者に周知・啓発しなければならない。
⑤ 事業主は,職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者については,厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則等に規定し,労働者に周知・啓発しなければならない。
解答と解説
【正解①】
職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる、
①優越的な関係を背景とした言動であって、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるものであり、
①から③までの3つの要素を全て満たすもの
をいいます。「労働者の就業環境が害される」ものではなければは、パワーハラスメントには当たらないため①は誤りです。
I-1-12 個別労働関係紛争
個々の労働者と使用者との間の個別労働関係紛争に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。
① 都道府県労働局などの総合労働相談コーナーに寄せられる相談のうち,いじめ,いやがらせ,解雇などの,民事上の個別労働関係紛争に係る相談の件数は,2002年度に比べ2021年度は増加している。
② 都道府県労働局長は,個別労働関係紛争に関し,紛争当事者の双方又は一方からその解決について援助を求められた場合には,必要な助言又は指導をすることができる。
③ 都道府県労働局長は,個別労働関係紛争について紛争当事者の双方又は一方からあっせんの申請があった場合,紛争の解決のために必要があると認めるときは,紛争調整委員会にあっせんを行わせる。
④ 労働委員会は,個別労働関係紛争について紛争の解決のために必要があると認めるときは,紛争当事者双方の主張を確かめ,仲裁裁定を行う。
⑤ 裁判所における労働審判精度は,民事上の個別労働関係紛争に関して,紛争の実情に即した迅速,適正かつ実効的な解決を図ることを目的とする。
解答と解説
【正解④】
個別労働関係紛争と労働争議、それぞれの解決方法は下表のとおりです。個別労働関係紛争については「仲裁」は行わないため誤りです。
区分 | 対象 | 労働相談 | 助言・指導 | あっせん | 調停 | 仲裁 |
---|---|---|---|---|---|---|
個別労働関係紛争 | 個々の労働者と事業主との間に発生した労働条件、その他労働関係に関する様々なトラブル | 〇 | 〇 | 〇 | ー | ー |
労働争議 | 労働組合と事業主との間に発生したトラブル | ー | ー | 〇 | 〇 | 〇 |
I-1-13 組織開発
組織開発に関する次の記述のらち,最も適切なものはどれか。
① 人材開発は「個人」への働きかけであることに対し,組織開発は「グループ」や「組織全体」に働きかける取組であり,「個人」への働きかけは含まない。
② 組織開発の2つの手法である診断型と対話型のうち,診断型組織開発は,サーベイなどによる診断フェーズのある手法であるが,対話も重視される。
③ 組織開発で大切にされる価値観の1つとして人間尊重の価値観があり,マクレガーが提唱したX理論もその表れである。
④ 組織開発でキーとなる概念の「コンテント」と「プロセス」のうち,「コンテント」とは,どのようにコミュニケーションがなされているか,どのように課題や仕事が進められているかなど,組織メンバー間の関係性などの諸要素を指す。
⑤ アプリシエイティブ・インクワイアリーは診断型組織開発手法の1つであり,データ収集等に基づく診断フェーズによって部署や職場の強みに光を当て,その強みや潜在力を引き出すことを目指す。
解答と解説
【正解②】
①「組織開発」はグループ、組織全体だけでなく「個人」への働きかけも含みます。
③X理論は、「人間は本来怠け者であり、強制されなければ仕事をしない」とする考え方です。「人間尊重の価値観」は関係なく誤りです。
④説明文は「プロセス」の内容です。
⑤アプリシエイティブ・インクワイアリーは「組織の真価を肯定的な質問によって発見し、可能性を拡張させるプロセス」で、対話型組織開発手法です。「診断型組織開発手法」ではないので誤りです。
I-1-14 社員格付け制度
我が国で用いられている社員格付け制度に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。
① 職能資格制度は,高い等級者が多くなりやすいなどの理由により,職務等級制度や役割等級制度に比べ,総人件費が高くなりがちである。
② 職務等級制度のメリットの1つは,人事異動・職務変化に適し,組織の柔軟性が保てることである。
③ ジョブ型雇用における格付け制度では,職務等級制度や役割等級制度が用いられる。
④ 職能資格制度では,いったん身についた能力は減らないという考えを基本としており,降格はなじまない。
⑤ 職務等級制度は,キャリア目標と報酬が連動し,そのことがインセンティブとして働くため,キャリア意識が高まる。
解答と解説
【正解②】
職務等級制度のメリットとデメリットは次の表のとおりです。
メリット | ・明確な評価基準を設けやすく、人事評価の公正さを保ちやすい ・スペシャリストを育成しやすい ・人件費を削減できる |
デメリット | ・成果が主な基準となるため、誠実さや勤勉さ等が評価に反映されにくい ・社員の業務への柔軟性が損なわれる可能性がある |
I-1-15 教育訓練
教育訓練に関する次の(A)~(D)の技法と,その効果の説明である(ア)~(エ) の組合せとして,最も適切なものはどれか。
技法
(A)ケースメソッド
(B)インバスケット
(C)ロールプレイング
(D)ブレインストーミング
効果の説明
(ア)グループをつくり,くつろいだ雰囲気の中で自由にアイディアを出し合い,相互に影響し合って各人の発想力や創造性を高める。
(イ)現実の企業経営の事例の問題点を分析させ,具体的な解決行動を起こさせることにより,実践に役立つ原理・原則を習得させ,意思決定能力を高める。
(ウ)限られた時間内に大量の書類を処理させることにより,読取りの能力,判断力,決断力などを高める。
(エ)所定の立場で行動させることによって,その立場の理解や状況に対応する行動力,コミュニケーション能力を高める。
A | B | C | D | |
---|---|---|---|---|
① | イ | ウ | ア | エ |
② | ウ | イ | エ | ア |
③ | ア | ウ | イ | エ |
④ | ウ | イ | ア | エ |
⑤ | イ | ウ | エ | ア |
解答と解説
【正解⑤】
ケースメソッド | 現実の企業経営の事例の問題点を分析させ,具体的な解決行動を起こさせることにより,実践に役立つ原理・原則を習得させ,意思決定能力を高める。 |
インバスケット | 限られた時間内に大量の書類を処理させることにより,読取りの能力,判断力,決断力などを高める。 |
ロールプレイング | 所定の立場で行動させることによって,その立場の理解や状況に対応する行動力,コミュニケーション能力を高める。 |
ブレインストーミング | グループをつくり,くつろいだ雰囲気の中で自由にアイディアを出し合い,相互に影響し合って各人の発想力や創造性を高める。 |
I-1-16 心理的安全性
激しく変化し続ける時代において,高い業績を上げる組織・チームを作るためには,心理的安全性が重要とされている。職場における,心理的安全性と業績基準を分類した下表の(A)~(D)と,それらの職場の典型的な状態の説明である(ア)~(エ)の組合せとして,最も適切なものはどれか。
業績基準が低い | 業績基準が高い | |
心理的安全性が高い | A | B |
心理的安全性が低い | C | D |
(ア)人々は,懸命に努力するより保身に腐心し,言われたこと以上の仕事はしない。
(イ)人々は,お互いに意見したり,協力したりするが,仕事の充実感はあまり感じられない。
(ウ)人々は,「余計なことは考えず,成果を出せ」と言われ,自分の考えを言うことにビクビクしている。
(エ)人々は協力し,互いから学び,複雑で革新的な仕事をやり遂げることができる。
エ | A | B | C | D |
---|---|---|---|---|
① | イ | エ | ウ | ア |
② | エ | ウ | ア | イ |
③ | イ | エ | ア | ウ |
④ | エ | ア | イ | ウ |
⑤ | エ | イ | ア | ウ |
解答と解説
【正解③】
業績基準が低い | 業績基準が高い | |
心理的安全性が高い | お互いに意見したり 、協力したりするが 、仕事の充実感はあまり感じられない。 | 人々は協力し、互いから学び 、 複雑で革新的な仕事をやり遂げることができる。 |
心理的安全性が低い | 懸命に努力するより保身に腐心し 、言われたこと以上の仕事はしない。 | 「余計なことは考えず 、成果を出せ」と言われ 、 自分の考えを言うことにビクビクしている。 |