傾向分析モデル|季節調整法は季節性の影響を排除

傾向分析モデルは、時間の経過に伴うデータの変化を理解するための手法であり、特に季節調整法は季節性の影響を排除して、データの基本的な傾向を把握するのに役立ちます。以下に、傾向分析モデルの一般式、具体例、及び数式を説明します。

目次

傾向分析モデルの一般式

傾向分析モデルは通常、以下の一般式で表されます:

\[
Y_t = T_t + S_t + E_t
\]

  • \( Y_t \):観測値(時点 \( t \) のデータ)
  • \( T_t \):傾向成分(長期的なトレンド)
  • \( S_t \):季節成分(季節的な変動)
  • \( E_t \):誤差成分(ランダムな変動)

このモデルを用いて、データを傾向、季節性、そして誤差に分解します。

季節調整法

季節調整法は、季節成分を除去するために以下のステップで行われます:

  1. 移動平均法を用いて傾向成分 \( T_t \) を推定します。
  2. 季節成分を計算します。
  3. 季節調整済みのデータを得るために、観測値から季節成分を引きます。

具体的には、季節調整済みデータ \( Y_{adj} \) は次のように求められます:

\[
Y_{adj} = Y_t – S_t
\]

簡単な例 : ある店舗の月別売上高データ

ある店舗の月別売上高データが以下のようだとします。

売上高 (\( Y_t \))移動平均 (\( T_t \))季節成分 (\( S_t \))季節調整済み (\( Y_{adj} \))
1月1201155115
2月14013010130
3月16015010150
4月18017010170
5月20019010190
6月22021010210
7月24023010230
8月26025010250
9月28027010270
10月30029010290
11月32031010310
12月34033010330

数式の適用

傾向成分の計算

    • 移動平均を用いて、例えば3か月の移動平均を使用して傾向成分 \( T_t \) を推定します。

    季節成分の計算

      • 各月の平均から傾向成分を引いて季節成分 \( S_t \) を求めます。

      \[
      S_t = Y_t – T_t
      \]

      季節調整済みデータの計算

        • 季節成分を観測値から引いて季節調整済みデータを得ます。

        \[
        Y_{adj} = Y_t – S_t
        \]

        例題:季節調整法によるGDPの予測

        季節調整法を用いて、国民総生産(GDP)の推移を予測するプロセスを説明します。具体的なデータは仮定の数値を使用し、手順に沿って国民総生産の1期先、2期先、3期先の予測値を算出します。

        原系列から季節変動の抽出を行う

        仮定のデータとして、国民総生産(GDP)の四半期ごとの値を以下のように示します。

        四半期GDP (兆円)
        Q1500
        Q2520
        Q3580
        Q4600
        Q1510
        Q2530
        Q3590
        Q4610
        Q1515
        Q2540
        Q3600
        Q4620

        このデータから、季節変動を抽出するために四半期ごとの平均値を計算します。

        四半期ごとの平均

        \[
        \text{平均}(Q1) = \frac{500 + 510 + 515}{3} = 508.33
        \]

        \[
        \text{平均}(Q2) = \frac{520 + 530 + 540}{3} = 530
        \]

        \[
        \text{平均}(Q3) = \frac{580 + 590 + 600}{3} = 590
        \]

        \[
        \text{平均}(Q4) = \frac{600 + 610 + 620}{3} = 610
        \]

        次に、全体の平均を計算します。

        \[
        \text{全体平均} = \frac{500 + 520 + 580 + 600 + 510 + 530 + 590 + 610 + 515 + 540 + 600 + 620}{12} = 572.5
        \]

        季節成分の計算

        季節成分は、各四半期の平均から全体平均を引いて計算します。

        \[
        S(Q1) = 508.33 – 572.5 = -64.17
        \]

        \[
        S(Q2) = 530 – 572.5 = -42.5
        \]

        \[
        S(Q3) = 590 – 572.5 = 17.5
        \]

        \[
        S(Q4) = 610 – 572.5 = 37.5
        \]

        季節変動を取り除く

        季節変動を取り除いたGDPの値を計算します。

        \[
        \text{季節調整済みGDP} = \text{GDP} – S_t
        \]

        四半期GDP (兆円)季節成分季節調整済みGDP (兆円)
        Q1500-64.17564.17
        Q2520-42.5562.5
        Q358017.5562.5
        Q460037.5562.5
        Q1510-64.17574.17
        Q2530-42.5572.5
        Q359017.5572.5
        Q461037.5572.5
        Q1515-64.17579.17
        Q2540-42.5577.5
        Q360017.5582.5
        Q462037.5582.5

        回帰分析により予測値を算出する

        季節調整済みGDPを使って回帰分析を行います。ここでは単純な線形回帰モデルを使って、次の四半期のGDPを予測します。例えば、四半期を数値に変換して、以下のようなデータを用います。

        • \( X \):四半期(1, 2, 3, …, 12)
        • \( Y \):季節調整済みGDP
        四半期 (X)季節調整済みGDP (Y)
        1564.17
        2562.5
        3562.5
        4562.5
        5574.17
        6572.5
        7572.5
        8572.5
        9579.17
        10577.5
        11582.5
        12582.5

        ここでは単純な線形回帰モデルを以下のように仮定します:

        \[
        Y = a + bX
        \]

        このモデルのパラメータ \( a \) と \( b \) を求めるために、最小二乗法を使います。仮に以下のように求めたとしましょう:

        • \( a \) = 550
        • \( b \) = 2.5

        予測値の計算

        次の四半期(1期先)、2期先、3期先の予測値は次のようになります。

        • 1期先(Q1-2024):
          \[
          Y_{1} = 550 + 2.5 \times 13 = 556.5
          \]
        • 2期先(Q2-2024):
          \[
          Y_{2} = 550 + 2.5 \times 14 = 559
          \]
        • 3期先(Q3-2024):
          \[
          Y_{3} = 550 + 2.5 \times 15 = 561.5
          \]

        まとめ

        このように、季節調整法を用いて国民総生産の推移を分析し、1期先、2期先、3期先のGDPを予測することができます。実際のデータに基づいて適切な分析を行うことで、より精度の高い予測が可能となります。

        結論

        このように、傾向分析モデルを利用することで、データに含まれる季節的な変動を排除し、より正確な傾向を把握することができます。これにより、ビジネスの意思決定や戦略策定に役立てることができます。

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