ワークサンプリング法 | 作業の占める割合を推定

ワークサンプリング法は、作業時間の測定において、ランダムにサンプリングした瞬間の状態を観察し、特定の作業が全体の作業時間に対してどの程度占めているかを統計的に推定する方法です。ストップウォッチでの連続的な観測が難しい場合や、ランダムな観測で精度を担保したい場合に有効です。

目次

ワークサンプリング法の基本的な数式

ワークサンプリング法において、ある作業の稼働率\(P\)を求めるための式は次の通りです:

\[
P = \frac{X}{N}
\]

  • \( P \):観測対象作業の稼働率
  • \( X \):観測したい作業が行われていた回数(観測対象作業の成功回数)
  • \( N \):全体の観測回数

また、サンプル数 \( N \) を決定するためには、次の式を用います:

\[
N = \frac{Z^2 \times P(1 – P)}{E^2}
\]

  • \( Z \):信頼水準に対応するZ値(通常95%信頼水準では1.96)
  • \( P \):予想される稼働率
  • \( E \):許容誤差(例:5%)

ワークサンプリング法の具体例

たとえば、工場において機械が実際に稼働している割合を調べたいとします。この工場では、作業時間の70%が稼働しており、30%は非稼働状態(メンテナンスやトラブルなど)だと予測されています。目標とする信頼水準を95%、許容誤差を5%と設定し、必要なサンプル数を計算します。

サンプル数の計算

予測稼働率 \( P = 0.7 \)、許容誤差 \( E = 0.05 \)、信頼水準95%に対する \( Z = 1.96 \) です。

サンプル数 \( N \) は次のように計算します:

\[\begin{eqnarray*}
N &=& \frac{(1.96)^2 \times 0.7 \times (1 – 0.7)}{(0.05)^2}\\
&=& \frac{3.8416 \times 0.7 \times 0.3}{0.0025}\\
&=& \frac{0.806736}{0.0025}\\
&=& 322.6944 \approx 323
\end{eqnarray*}\]

したがって、約323回の観測が必要です。

実際の観測と稼働率の計算

次に、実際にランダムに323回の観測を行い、うち230回が機械稼働中、93回が非稼働中だったとします。

稼働率 \( P \) は次のように求められます:

\[
P = \frac{X}{N} = \frac{230}{323} \approx 0.712
\]

つまり、機械の稼働率は約71.2%と推定されます。


ワークサンプリング法の利点と適用例

ワークサンプリング法は、以下のような場面で有効です:

  • 不規則な作業:連続的な観測が難しい作業に対して、ランダムなタイミングで観測が可能。
  • 間接作業:直接的な生産作業だけでなく、メンテナンスや待機などの間接作業にも適用可能。
  • 広範囲の観測:複数の機械や作業者の稼働率を短期間で調査することが可能。

例として、工場の複数ラインでの稼働率調査や、複数の部署での作業効率調査にも応用されています。

ワークサンプリング法のデメリット

ワークサンプリング法には多くの利点がありますが、いくつかのデメリットも存在します。以下にその主なデメリットを挙げます。

サンプルの偏り

  • ランダム性の欠如:観測が不十分または偏ったタイミングで行われると、実際の作業状況を正確に反映しない場合があります。特定の時間帯や作業者によってデータが偏ることがあり、信頼性に欠ける結果が得られる可能性があります。

統計的誤差

  • 推定の不確実性:ワークサンプリング法は、サンプル数が少ない場合、統計的誤差が大きくなる可能性があります。これは、観測回数が多いほど推定値の精度が高まるため、適切なサンプルサイズを確保することが重要です。

非稼働時間の評価が難しい

  • 非稼働状態の解釈:ワークサンプリング法では、作業者や機械が非稼働の状態にある理由を正確に把握することが難しいです。非稼働の時間が必ずしも効率の悪さを示すわけではなく、例えば休憩時間や計画的なメンテナンスも含まれます。

作業内容の多様性

  • 作業の複雑さ:特に多様な作業が行われる環境では、各作業の観測が難しいことがあります。観測者が作業内容を正しく理解していない場合、誤った分類が行われる可能性があります。

観察者のバイアス

  • 主観的な判断:観察者の主観が結果に影響を与えることがあります。観察者の経験や知識に依存するため、結果の一貫性に欠ける可能性があります。

時間の制約

  • 観察時間の確保:ワークサンプリング法では、一定の時間内に観察を行う必要があるため、時間が制約される場合、サンプル数を確保するのが難しいことがあります。観察が短期間で行われる場合、全体の作業状況を正確に反映できないリスクがあります。

データの解釈

  • 結果の解釈が難しい:データをどのように解釈するかが難しい場合があります。特に、複数の要因が絡んでいる場合、その影響を明確にすることが難しいです。

これらのデメリットを理解し、ワークサンプリング法を適切に実施することが重要です。事前に観察計画を立て、観測の設計や実施においてこれらの課題に対処することで、より信頼性の高いデータを得ることができます。

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