必須科目(問題I)は、令和元年度試験から記述式問題になりました。
それまでは択一問題形式で出題されていました。
ここでは「技術部門」全般にわたる、
- 専門知識
- 応用能力
- 問題解決能力及び課題遂行能力
が評価されます。
主に問題IIで専門知識と応用能力が評価されるため、ここでは「問題解決能力及び課題遂行能力」が主に評価されます。
問題 I の内容
令和元年度からは概念と出題内容、評価項目が公表され、出題意図が理解しやすくなりました。
問題Iに関しては次のように定義されています。
概念 | 専門知識 専門の技術分野の業務に必要で幅広く適用される原理等に関わる汎用的な専門知識 応用能力 これまでに習得した知識や経験に基づき、与えられた条件に合わせて、問題や課題を正しく認識し、必要な分析を行い、業務遂行手順や業務上留意すべき点、工夫を要する点等について説明できる能力 問題解決能力及び課題遂行能力 社会的なニーズや技術の進歩に伴い、社会や技術における様々な状況から、複合的な問題や課題を把握し、社会的利益や技術的優位性などの多様な視点からの調査・分析を経て、問題解決のための課題とその遂行について論理的かつ合理的に説明できる能力 |
出題内容 | 現代社会が抱えている様々な問題について、「技術部門」全般に関わる基礎的なエンジニアリング問題としての観点から、多面的に課題を抽出して、その解決方法を提示し遂行していくための提案を問う。 |
評価項目 | 技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち、専門的学識、問題解決、評価、技術者倫理、コミュニケーションの各項目 |
「技術部門」共通問題のため、その技術部門に共通したテーマが出題されます。
選択科目だけの視点ではなく、
「技術部門」に関するトピックス、時事問題などに日ごろからアンテナを張り巡らせていれば、おのずと出題される問題を予測できるはずです。
そのためにも、過去問題を使って、出題されたテーマを分析しておきましょう。
予測したテーマに対して、自分の意見を準備する癖をつけておくと、試験本番で焦ることも少なくなるでしょう。
各設問で問われている内容
各設問で問われている内容は、技術部門によらずパターン化されています。
ここでは、そのパターンについて説明いたします。
設問1: 課題抽出
出題されたテーマに対して、
技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ
技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ
という問いです。まとめると、
ことが求められています。
多面的と問われている場合、3つの観点以上から挙げるべきでしょう。
4つ以上となると内容が薄くなる、もしくは紙面が足りなくなる可能性があるため、全体のバランスをみて個数を決めましょう。
設問2 : 解決策
設問1で挙げた課題の中からもっとも重要と考える課題を挙げ、その課題に対する複数の解決策を提示します。
解決策数は、具体的に「3つ示せ」と指定してされることもあります。
設問に「複数」とあれば解決策を3つ挙げるのが無難でしょう。
設問3 : 新たに生じるリスク、波及効果への対応策
設問2で挙げた解決策を全て実施したうえで、
新たに生じるリスクとそれへの対策
生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策
が問われます。
設問3で問われているポイントは、新たに生じるリスク、波及効果、懸念事項です。
プロジェクト・マネジメントにおける、リスク・マネジメント分野の残留リスク (または、残存リスク、残余リスク、リスクエクスポージャーとも呼ぶ)に相当します。
設問1は「リスクの特定」、設問2は「リスク対応策の実施」、設問3は「残留リスクの評価と対策」
という一連の流れが明確になります。
つまり、
設問3の解答を意識して設問1の解答を考えることで、スムーズな論文作成につなげられます
設問4 : 倫理、社会の保全、社会の持続可能性、社会的使命
設問4は一番目から三番目に示した内容に関する設問で、基本的に、下記の3つのパターンがあります。
① 技術者としての倫理、社会の保全の観点から必要となる要件・留意点を述べよ
② 業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持統可能性の観点から述べよ。
③ 業務遂行において必要な要件を技術者としての社会的使命、および倫理の観点から述べよ。
技術者倫理のなかで最も重要な項目は公益の確保です。
つまり、
に対して留意すべき項目をあげましょう。
各設問の記述配分
必須科目(I)の解答は、解答用紙3枚が割り当てられています。
各設問の問いを比べると、3点ずつ答える必要がある設問1と設問2のボリュームが大きくなることに気づきます。
それぞれに1枚を割り当て、設問3と設問4で1枚を割けばよいでしょう。
評価項目の資質能力 (コンピテンシー)
評価項目とされている資質能力の定義と、対応する設問番号を記載いたします。
資質能力と設問を1対1で理解することで、設問が求めている解答をより簡単に理解できると思います。
資質能力を確認すると、設問4は「技術者倫理」だけでなく「専門的学識」の法令、特許侵害と絡めた解答も考えられます。
専門的学識 (全設問)
・技術士が専門とする技術分野(技術部門)の業務に必要な,技術部門全般にわたる専門知識及び選択科目に関する専門知識を理解し応用すること。
・技術士の業務に必要な,我が国固有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を理解し応用すること。
問題解決 (設問 1, 2)
・業務遂行上直面する複合的な問題に対して,これらの内容を明確にし,調査し,これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。(設問 1)
・複合的な問題に関して,相反する要求事項(必要性,機能性,技術的実現性,安全性,経済性等),それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮したうえで,複数の選択肢を提起し,これらを踏まえた解決策を合理的に提案し,又は改善すること。(設問 2)
評価 (設問 3)
・業務遂行上の各段階における結果,最終的に得られる成果やその波及効果を評価し,次段階や別の業務の改善に資すること。
技術者倫理 (設問 4)
・業務遂行にあたり,公衆の安全,健康及び福利を最優先に考慮したうえで,社会,文化及び環境に対する影響を予見し,地球環境の保全等,次世代にわたる社会の持続性の確保に努め,技術士としての使命,社会的地位及び職責を自覚し,倫理的に行動すること。
・業務履行上,関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること。
・業務履行上行う決定に際して,自らの業務及び責任の範囲を明確にし,これらの責任を負うこと。
コミュニケーション (全設問)
・業務履行上,口頭や文書等の方法を通じて,雇用者,上司や同僚,クライアントやユーザー等多様な関係者との間で,明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。
・海外における業務に携わる際は,一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え,現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。
まとめ
この記事では、技術士二次試験 筆記試験、選択科目Iの問題と設問の考え方について説明しました。
選択科目I は、技術部門に共通したテーマが出題されることがポイントです。
広く、一般的な課題 (SDGs系など)がよく出題される傾向があります。
この考えをもとに論文作成のトレーニングを重ねましょう。
論文作成上達の道は、「書く⇒添削」を繰り返すしかありません。
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