技術士法3義務2責務は、技術士が順守しなければならない義務と責務です。
技術士一次試験、技術士二次試験の必須科目 I、口頭試験で必ず問われます。
そして、技術士倫理綱領は技術士の「行動指針」です。
この記事では、技術士法3義務2責務と技術士倫理綱領の説明と、相互関係について説明いたします。
読めば、技術士が取るべき行動が明確になりますよ。
- 技術士一次試験の適性試験対策をしたい
- 技術士二次試験の筆記試験、口頭試験対策をしたい
- すでに技術士だけど、技術者倫理をおさらいしたい
技術士法3義務2責務とは
技術士法3義務2責務は、技術士法の第四章に規定されている内容です。
技術士には3つの義務と2つの責務が課せられていて、まとめて「3義務2責務」と呼んでいます。
<3義務>
- 信用失墜行為の禁止(技術士法第 44 条)
- 秘密保持義務(技術士法第 45 条)
- 名称表示の場合の義務(技術士第 46 条)
<2責務>
- 公益確保の責務(技術士法第 45 条の 2)
- 資質向上の責務(技術士法第 47 条の 2)
この規定に違反した場合は、技術士法第三十六条の2に従って資格はく奪や刑罰が科されます。
ちなみに2責務は、2000年の法改正で追加されました。
当時は公益よりも私益を優先してもよかったのかなー、、、?
信用失墜行為の禁止(第44条)
技術士又は技術士補は、技術士若しくは技術士補の信用を傷つけ、又は技術士及び技術士補全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
日本技術士会
技術士等の秘密保持義務(第45条)
技術士又は技術士補は、正当の理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。技術士又は技術士補でなくなった後においても、同様とする。
日本技術士会
技術士の名称表示の場合の義務(第46条)
技術士は、その業務に関して技術士の名称を表示するときは、その登録を受けた技術部門を明示してするものとし、登録を受けていない技術部門を表示してはならない。
日本技術士会
技術士等の公益確保の責務(第45条の2)
技術士又は技術士補は、その業務を行うに当たっては、公共の安全、環境の保全その他の公益を害することのないよう努めなければならない。
日本技術士会
技術士の資質向上の責務(第47条の2)
技術士は、常に、その業務に関して有する知識及び技能の水準を向上させ、その他その資質の向上を図るよう努めなければならない。
日本技術士会
技術士倫理綱領
技術士倫理綱領(ぎじゅつし りんり こうりょう)とは、技術士の10個の行動指針です。
これに従って行動すれば、おのずと技術士法第四章の3義務2責務が守られます。
日本技術士会のホームページでも確認できます。
技術士倫理綱領はこちら。
技術士倫理綱領【前文】
技術士は、科学技術が社会や環境に重大な影響を与えることを十分に認識し、業務の履行を通して持続可能な社会の実現に貢献する。
技術士は、その使命を全うするため、技術士としての品位の向上に努め、技術の研鑚に励み、国際的な視野に立ってこの倫理綱領を遵守し、公正・誠実に行動する。
日本技術士会
現行の技術士倫理綱領は2011年3月17日(平成23年)に発行(承認)されました。
ちょうど、東北地方太平洋沖地震の直後ですね。
時期を考えると、原発事故の件は改定には考慮されていないと思います。
しかし、”科学技術が社会や環境に重大な影響を与えることを十分に認識”は重い一文です。
そして、” 持続可能な社会の実現に貢献”は、Sustainable Development、SDGに通ずる一文です。
技術士倫理綱領【基本綱領】
公衆の利益の優先
1.技術士は、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮する。
日本技術士会
前版には相当する項目はありませんでした。
よくある事例として、製品コストの低減という組織の利益と、安全確保という公衆の利益の相反があります。
この場合、組織の利益より公衆の安全を優先する、ということです。
持続可能性の確保
2.技術士は、地球環境の保全等、将来世代にわたる社会の持続可能性の確保に努める。
日本技術士会
前版には相当する項目はありませんでした。
- 可能なかぎり原材料とエネルギー消費を低減する。
- 施設の立地や土地利用にあたり、環境委置ける生態系の構造、景観的かつ、社会経済システムに生じる影響の可能性を調査し、環境の安定性と持続性を保つ開発方策を選択すること。
- 生産⇒消費⇒廃棄の過程の中で、可能な限り資源とエネルギーが循環するシステムを構築すること
有能性の重視
3.技術士は、自分の力量が及ぶ範囲の業務を行い、確信のない業務には携わらない。
日本技術士会
- 業務の受託に際し、自分の専門範囲以外の事項を表示したり、誇大な広告はしない
- 経験不十分な業務において、十分な事前に学習・研究を行う
- 技術士と名乗って業務をするときは、技術部門(専門領域)を表示すること
- 自分の学歴、業績、資格を詐称しないこと
真実性の確保
4.技術士は、報告、説明又は発表を、客観的でかつ事実に基づいた情報を用いて行う。
日本技術士会
前版には相当する項目はありませんでした。
公衆に対する説明責任ですね。
一般の技術士の場合、直接「説明責任」を追う相手は、雇用者・依頼者になることが多いと思います。
この場合、雇用者・依頼者が公衆への説明責任を負います。
技術士は、その業務における立場の上で必要とされる場合のみ、公衆に対する説明責任を果たします。
公正かつ誠実な履行
5.技術士は、公正な分析と判断に基づき、託された業務を誠実に履行する。
日本技術士会
- 業務にあたり、事前に自分の立場、業務範囲などを明確にすること
- 利益相反の事態を回避するよう努めること
- 自分が履行した業務、自分の指導の下で履行した業務に対して責任を持つこと
秘密の保持
6.技術士は、業務上知り得た秘密を、正当な理由がなく他に漏らしたり、転用したりしない。
日本技術士会
信用の保持
7.技術士は、品位を保持し、欺瞞的な行為、不当な報酬の授受等、信用を失うような行為をしない。
日本技術士会
- 品位ある行動を務めること
- 改ざん、捏造、誇大広告、学歴・業績査証の禁止
- 利害関係者から、公式契約以外の報酬を受け取らない
相互の協力
8.技術士は、相互に信頼し、相手の立場を尊重して協力するように努める。
日本技術士会
- 共に働く者の、安全、健康、権利を守る
- 公正かつ自由な競争の維持に努める
- ほかの技術者の名誉を傷つけ、権利を侵害し、業務を妨げない
法規の遵守等
9.技術士は、業務の対象となる地域の法規を遵守し、文化的価値を尊重する。
日本技術士会
前版には相当する項目はありませんでした。
ポイントは「文化的価値を尊重」ですね。
技術者が海外業務をに従事するときに留意すべき行動ですね。
例えば、その国や地域の法規に従い、社会慣行、生活様式、宗教などの文化を尊重することです。
継続研鑚
10.技術士は、常に専門技術の力量並びに技術と社会が接する領域の知識を高めるとともに、人材育成に努める。
日本技術士会
- 専門分野:業務だけでなく、研修会参加、論文発表を通して常に新しい情報に接すること。
- 専門分野以外:研修会参加、文献学習を通じて、 常に視野を広げる努力をすること
- 自分だけでなく、部下や後進の技術指導に努める。社会全体の技術向上に寄与する。
3義務2責務と技術士倫理綱領の対応
3義務2責務と技術士倫理綱領を対応表を示します。
「目的」と「行動」を紐づけたことになります
技術法 3義務2責務 | 技術士倫理綱領 |
---|---|
信用失墜行為の禁止 | 4.真実性の確保 5.公正かつ誠実な履行 7.信用の保持 9. 法規の遵守等 |
秘密保持義務 | 6.秘密の保持 |
名称表示の場合の義務 | 3.有能性の重視 8. 相互の協力 |
公益確保の責務 | 1.公衆の利益の優先 2.持続可能性の確保 |
資質向上の責務 | 10. 継続研鑚 |
対応表によって、3義務2責務を果たすために取るべき行動が明確になりますね。
まとめ
技術士二次試験で、技術者倫理について問われたときは、3義務2責務よりも技術者倫理綱領を元に解答を考えたほうが効率的でしょう。
なぜなら、「具体的な行動」がまとまっているからです。
論文作成トレーニングの際には、技術者倫理綱領のどの項目に当てはまるのかを照らし合わす癖をつけましょう。
漠然と理解したつもりにならず、日々の業務を技術者倫理綱領と結びつけると口頭試験対策になりますよ。