ブレイク&ムートンのマネジリアルグリッド

ブレイク&ムートンのマネジリアルグリッド(Blake & Mouton’s Managerial Grid)は、リーダーシップスタイルを評価するためのフレームワークで、マネジメントの2つの重要な側面である「人間関係への関心(人間志向)」と「業務遂行への関心(業務志向)」のバランスを視覚的に表現しています。このモデルでは、リーダーの行動を5つの基本的なスタイルに分類し、リーダーがどのスタイルを用いるべきかを示唆しています。


目次

ブレイク&ムートンのマネジリアルグリッドの概要

マネジリアルグリッドは、2つの軸でリーダーシップスタイルを評価します。

  • X軸(業務志向): 仕事の目標達成や生産性、効率性に対する関心の度合い。
  • Y軸(人間志向): 部下の幸福やチームの協力関係、満足度に対する関心の度合い。

これら2つの軸の組み合わせによって、リーダーシップスタイルが以下の5つに分類されます。

マネジリアルグリッドの5つのリーダーシップスタイル

1,1:無関心型(放任型)
業務にも人間関係にも関心が低いスタイル。リーダーシップがほとんど発揮されない。

  • : 自分のポジションに無関心なリーダー。

9,1:独裁型(タスク型)
業務には高い関心があるが、人間関係にはほとんど関心がないスタイル。成果を最優先し、厳しい指示や命令が行われる。

  • : 目標達成のためにチームの士気や関係性を犠牲にするリーダー。

1,9:カントリークラブ型
人間関係には高い関心があるが、業務達成には低い関心しかないスタイル。従業員の幸福や満足を重視するが、業務達成が疎かになる可能性がある。

  • : 職場環境の改善に力を入れるが、生産性を二の次にするリーダー。

5,5:中道型
業務と人間関係のバランスを取ろうとするスタイル。成果も重視するが、社員の関与や士気を保つために妥協もする。

  • : 両方に適度に注意を払うが、どちらも最大限に発揮しないリーダー。

9,9:チーム型
業務にも人間関係にも高い関心を持ち、どちらも重視するスタイル。高い成果を達成しながら、強固なチームワークを築くことを目指す。

  • : チーム全員が主体的に仕事に取り組み、モチベーションも高い理想的なリーダーシップ。

PM理論との違い

PM理論(Performance-Maintenance理論)は、三隅二不二によって提唱されたリーダーシップ理論で、日本のリーダーシップスタイルを分析するために作られました。PM理論では、リーダーシップをP(パフォーマンス)M(メンテナンス)の2軸で評価します。これらはそれぞれ、ブレイク&ムートンの業務志向と人間関係志向に対応していますが、以下の点で異なります。

分類方法

  • マネジリアルグリッド: 5つのリーダーシップスタイルに分け、リーダーの関心の度合いを強弱で示します。
  • PM理論: 4つのタイプに分類し、P機能(業務達成機能)とM機能(集団維持機能)がそれぞれ高いか低いかで評価します。
    • PM型(P高、M高)
    • Pm型(P高、M低)
    • pM型(P低、M高)
    • pm型(P低、M低)

アプローチの背景

  • マネジリアルグリッドは欧米のリーダーシップ理論に基づいており、業務の効率と人間関係のバランスをグローバルに適用できるものとしています。
  • PM理論は日本の集団主義や企業文化を反映しており、リーダーシップをより協調的な集団維持の観点から分析しています。

マネジリアルグリッドのメリットとデメリット

メリット

  1. 視覚的な理解: リーダーシップスタイルをグリッド上に配置することで、視覚的に分かりやすく、リーダーの傾向を簡単に把握できます。
  2. バランス重視の理想モデル(9,9型): チーム型(9,9)は、業績とチームの満足度を両立させる理想的なリーダーシップスタイルとして示されており、目指すべき目標が明確です。
  3. 多様なリーダーシップスタイルを包括: 幅広いリーダーシップスタイルをカバーしているため、異なるリーダーの傾向に対応した指導や育成が可能です。

デメリット

  1. 状況依存性が考慮されていない: マネジリアルグリッドは、状況に応じた柔軟なリーダーシップスタイルの変化を重視しておらず、すべての場面で9,9型が理想とされています。しかし、実際には、状況によって適切なリーダーシップスタイルが異なる場合があります。
  2. 文化的背景を考慮していない: 欧米中心の考え方で、日本や他の文化圏では、特にカントリークラブ型や独裁型のリーダーシップが適切に機能しない場合があります。
  3. 変化への対応が不明確: 一度決定されたスタイルから、状況に応じてどのようにリーダーシップスタイルを変更するべきかについての指針が不足しています。

結論

ブレイク&ムートンのマネジリアルグリッドは、リーダーシップスタイルを「人間関係志向」と「業務志向」の2軸で分析し、バランスの取れた理想的なスタイルを示しています。一方で、日本の企業文化を反映したPM理論は、集団の維持機能と業務達成機能に焦点を当てています。マネジリアルグリッドの利点は視覚的に理解しやすい点ですが、状況依存性の欠如や文化的な適用性に関する課題もあるため、柔軟なリーダーシップが求められる場合には、PM理論や他の状況対応理論も併せて検討する必要があります。

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