ブルー・オーシャン戦略は、2005年にW.チャン・キムとレネ・モボルニュによって提唱された経営戦略の考え方です。従来の激しい競争が存在する市場(レッド・オーシャン)とは異なり、まだ開拓されていない新しい市場(ブルー・オーシャン)を作り出すことを目指します。
目次
ブルー・オーシャン戦略とは
ブルー・オーシャン戦略の核心は、既存の競争が激しい市場ではなく、競争のない新しい市場を創造することです。この戦略は、競争相手を打ち負かすのではなく、競争自体を無意味にすることを目的としています。
具体的には、企業が競争優位を得るために、以下のような4つのアクションを実行することが推奨されています。
- 削減(Reduce):業界での競争要素を削減し、コストを抑える。
- 排除(Eliminate):既存の業界では当然とされているが、価値を生み出さない要素を排除する。
- 増加(Raise):顧客にとって重要な要素を増やし、差別化を図る。
- 創造(Create):業界には存在しなかった新しい価値を創造し、市場を拡大する。
ブルー・オーシャン戦略は、これらのアクションを通じて「価値イノベーション」を達成し、従来の競争の枠を超えた全く新しい市場空間を開拓することを目指しています。
マイケル・ポーターの競争戦略との違い
マイケル・ポーターの競争戦略は、既存市場で競争優位を築くための「コストリーダーシップ」「差別化」「集中」の3つの基本戦略に基づいています。ポーターの競争戦略は、企業が競争相手と対峙し、市場シェアを拡大する方法を中心に考えられています。
競争戦略(ポーター):既存市場での競争をいかに制するかに焦点を当てる
- 競争優位を築くために、競争相手に勝つことを重視。
- 価格競争や差別化戦略による市場シェアの拡大を追求。
ブルー・オーシャン戦略:競争がない新しい市場を創造することに焦点を当てる
- 競争そのものを無意味にし、新しい価値を創造。
- 既存市場ではない新しい市場空間で独自の立場を築く。
メリット
- 競争が少ない:未開拓の市場を開発するため、競争がほとんど存在しない。
- 高い利益率:価値創造を行い、独自の製品やサービスを提供することで、価格競争に巻き込まれず、高い利益率を維持できる。
- イノベーションの促進:新しい市場を創造する過程で、革新や創造性を高めることができる。
デメリット
- リスクが高い:新市場は未確定であり、顧客の需要が不明瞭なため失敗するリスクがある。
- 時間と資源の投資が大きい:新しい市場を作るためには、時間とリソースを大量に投下する必要がある。
- 模倣されやすい:成功すると他社が追随しやすいため、一度創造されたブルー・オーシャンも後にはレッド・オーシャンに変わる可能性がある。
成功事例
- シルク・ド・ソレイユ(Cirque du Soleil)
従来のサーカスが行っていた動物や派手なショーに頼るのではなく、演劇的要素を加えた新しい形のエンターテインメントを提供し、競争相手のいない市場を創出しました。伝統的なサーカス業界ではなく、パフォーマンスアートとして新しい価値を提供したことが成功の要因です。 - ニンテンドーWii
任天堂のWiiは、高度なグラフィックや高性能を追求する代わりに、簡単に操作できるモーションセンサー機能を取り入れ、ゲームを楽しむ層を従来のゲーマーから家族や高齢者にまで広げました。これにより、新しい顧客層を獲得し、ブルー・オーシャンを作り出しました。
ブルー・オーシャン戦略とレッド・オーシャン戦略と競争戦略の比較
ブルー・オーシャン戦略、レッド・オーシャン戦略、そしてポーターの競争戦略を比較した表です。
比較項目 | ブルー・オーシャン戦略 | レッド・オーシャン戦略 | ポーターの競争戦略 |
---|---|---|---|
戦略の目的 | 新市場の創造・競争を無意味化 | 既存市場での競争に勝つ | 競争優位を確立する |
市場の特徴 | 未開拓・競争の少ない市場 | 既存市場・競争が激しい | 既存市場・競争に基づく |
アプローチ | 価値イノベーションを通じて新しい市場を創出 | 競争相手を打ち負かし市場シェアを奪取 | コストリーダーシップ、差別化、集中戦略で競争優位を追求 |
競争環境 | 競争がない、または少ない | 競争が非常に激しい | 競争相手を意識し戦略を策定 |
戦略の焦点 | 新しい価値を提供し、非顧客を取り込む | 既存の顧客を奪い合う | 価格競争や差別化による競争優位 |
メリット | 高い利益率、独自の立場 | 市場における競争相手の淘汰 | 競争に勝てば市場シェアを拡大できる |
デメリット | 市場開拓のリスクが高い | 価格競争で利益率が低下しやすい | 差別化やコスト優位を維持するための負担が大きい |
リソースの使い方 | 新しい市場ニーズに対して革新を行う | 効果的に競争相手を打ち負かすために使う | コスト削減や差別化のために使う |
例 | 任天堂Wii、シルク・ド・ソレイユ | 価格競争による商品販売 | トヨタの低コスト生産(コストリーダーシップ)やAppleの製品デザイン(差別化) |
まとめ
- ブルー・オーシャン戦略は、競争そのものを無意味にし、まったく新しい市場空間を創造します。
- レッド・オーシャン戦略は、既存市場において競争相手を打ち負かすための戦略で、価格競争や差別化による競争が中心です。
- ポーターの競争戦略は、競争優位を築くために「コストリーダーシップ」「差別化」「集中」の3つの基本戦略を活用しますが、競争相手との直接対峙を前提としています。
それぞれの戦略にはメリットとデメリットがあり、状況に応じて最適な戦略を選択することが重要です。
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