「コンテクスト」という言葉を聞いたことがありますか。
英語では”Context”と書き、
文脈、前後関係、事情、背景、状況を意味します。
コンテキストと読むこともありますが、”コンテキスト”のほうが英語発音に近いです。
「con (コン)」+「text(テキスト)」 ですからね。
この記事ではコンテクストで統一して説明いたします。
ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化
「ハイコンテクスト文化」および「ローコンテクスト文化」という概念は、1976年に文化人類学者であるエドワード・T・ホール氏によって提唱されました。
国や地域におけるコミュニケーションスタイルの特徴を表すものです。
コミュニケーションの中で、「言葉 or 言葉以外、どちらが重要」かという違いです。
次のように分類されます。
言葉に重きを置く社会⇒ローコンテクスト文化
言葉以外の意味に重きを置く社会⇒ハイコンテクスト文化
コンテクストとは
エドワード・T・ホールの説においては、
と、シンプルに読み替えられます。
つまり、
と読み替えられます。
「言語外の情報」の重要度が高い、とはこういうこと!
メッセージを伝える際に、
言葉や文字として現れている言語そのものの情報よりも、
歴史的・文化的背景、文脈、行間の理解と推測が重要である
一方、
「言語外の情報」の重要度が低い、とはこういうこと!
メッセージを伝える際、言葉や文字として現れている情報だけで、受け手は理解できる。
歴史的・文化的背景、文脈、行間の理解と推測が不要である。
ローコンテクスト
ローコンテクストには、聞き手が理解やすいというメリットがあります。
歴史的・文化的背景、文脈、行間の理解と推測を必要としない代わりに、すべてのメッセージが言語化されています。
ローコンテクスト文化の国
ローコンテクスト文化として、代表的な国を挙げます。
- アメリカ
- オーストラリア
- カナダ
- オランダ
- ドイツ
移民国家がローコンテクスト文化の傾向があります。
やはり、様々な背景を持つ民族がともに生活するには、ハイコンテクストでは意思の疎通が難しいのでしょう。
ハイコンテクスト
ハイコンテクストには、言葉をシンプルにできるというメリットがあります。
受け手が、主語や目的語を頭の中で加えてくれたり、会話の背景を自主的に推測してくれるからです。
しかし、話し手と受け手のバックグラウンドが異なると、会話が成り立ちません。
ハイコンテクスト文化の国
ローコンテクスト文化として、代表的な国を挙げます。
- 日本
- 韓国
- インドネシア
- イラン
- ケニア
- サウジアラビア
- 中国
日本は、世界で一番ハイコンテクスト文化の国と考えられています。
つまりハイエスト・コンテクスト文化ですね。
主語がなくても会話が成り立ちますしね。
ビジネスにおけるコンテクスト
ビジネスにおいては、ローコンテクストとハイコンテクスト、どちらが適しているでしょうか?
社内でのやり取りではハイコンテクストのほうが、細かな説明をするという手間を省けるでしょう。
しかし社内であっても、こんなギャップがあります
- 異部署とのコミュニケーション⇒専門知識範囲の違い
- 同部署でも年代の違い⇒若手社員は、社内手順・専門知識の理解が浅い
このギャップは言語化しなければ埋まりません。
つまり、「会話の背景を理解できるだけの知識がある」という前提がなければコミュニケーションは取れません。
「以心伝心」、「一を聞いて十を知る」、「忖度」という言葉に期待してはいけません。
誤解が生じたまま業務が進むという事態は避けなければなりません。
発信者に求められる責任
「相手が理解できるような説明。誰が受け取っても理解が同じである」
という発信をしなければなりません。
論文作成におけるコンテクスト
それでは、論文作成ではローコンテクストとハイコンテクスト、どちらが適しているでしょうか?
もちろん「ローコンテクスト」ですね。
採点者は、あなたのすべてを知っているわけではありません。
よって、論文を作成するたびに、次の視点で読み直しましょう。
- 専門用語は通じるのか?
⇒補足説明すべきかも。違う言葉を使用すべきかも。 - 主語を省いても意味は通じるのか?
⇒省かないほうがよいかも - 指示語(これ、あれ)が意味している単語が一読してわかるか?
⇒固有名詞を書いたほうがよいかも - 文と文につながりがあるかな?
⇒論理が飛躍してるかも。文章の間に一文加えるほうがよいかも。
学部生の時の話です。
卒論発表の練習をするときに担当教授から、
「お母ちゃんでも理解できるように説明せい。
発表を評価する教授は、少しでも自分の専門から離れたら素人と一緒や。」
と指導されました。
いまでも、仕事でプレゼンをする際、この言葉を意識しています。
まとめ
まず、
という自覚を持ちましょう。
そして、「言語外の情報」を言語化することを心がけましょう。
論文作成のトレーニングにおいては、第三者に添削してもらうことが最も効率的です。
なぜなら、
「自分の常識」=「他人の常識」か否かを、自分で判断することは難しいからです。
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