規模の経済、経験曲線効果、範囲の経済

以下に、規模の経済、経験曲線効果、範囲の経済のそれぞれの概念を説明し、具体例を示します。

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規模の経済(Economies of Scale)

規模の経済とは、製品やサービスの生産量が増加するに従い、1単位あたりの生産コストが減少する現象です。これは生産規模の拡大により、資源の効率化や固定費の分散が可能になるためです。

規模の経済の具体例


例えば、ある工場が年間100万個の製品を生産し、固定費が1億円で変動費が1個あたり50円かかるとします。

  • 生産コストは、1億円(固定費)+100万個 × 50円(変動費)= 1億5,000万円です。
  • 1個あたりのコストは 150円 です。

これが生産量200万個に増加した場合、固定費は変わらず1億円で、変動費は1個あたり50円とします。

  • 新たな生産コストは、1億円(固定費)+200万個 × 50円(変動費)= 2億円です。
  • 1個あたりのコストは 100円 に減少し、50円のコストダウンが達成されます。

自動車産業が典型例です。大手メーカーが年間数百万台の車を製造することで、生産設備や部品購入にかかる固定費を低減し、結果として車両の単位あたりコストが下がります。また、Amazonなどの物流企業も、大量の出荷を通じて配送コストを抑え、価格競争力を高めています。

経験曲線効果(Experience Curve Effect)

経験曲線効果は、企業が製品を生産し続けることで、効率が向上し、コストが削減される現象です。経験が増えることで、工程の改善や作業時間の短縮、スキル向上が進み、結果的にコストが減少します。

経験曲線効果の具体例

ある工場で、新製品を初めて作る場合、初回生産のコストが1個あたり200円だったとします。この工場が生産を繰り返す中で効率が改善され、累積生産量が2倍に達すると、1個あたりのコストが20%減少する場合、次のように計算されます:

  • 初期生産のコスト:200円
  • 累積生産量が2倍で、コストが20%減少 → 200円 × (1 – 0.2) = 160円

さらに累積生産量が4倍になれば、さらに20%コストが減少し、128円になります。このように、経験が積み重なることで、1個あたりの生産コストが段階的に減少していきます。

航空機の製造企業は、同じモデルを何機も製造するうちに、製造プロセスが洗練されるため、一機あたりの製造コストが下がります。ボーイングやエアバスは経験曲線効果を活かして製造コストを削減し、利益を高めています。また、ファーストフード店も、同一メニューを大量に調理することで、時間と材料の使用を最適化しています。

範囲の経済(Economies of Scope)

範囲の経済は、複数の異なる製品やサービスを同時に生産することでコストを削減できる現象です。製品ラインが多様化することで、資源や設備、流通などを共有できるため、個別に生産するよりも効率的です。

範囲の経済の具体例

ある会社が、A製品とB製品の両方を生産するとします。A製品単体の生産コストが5000万円、B製品単体の生産コストが3000万円で、合わせて8000万円が必要だと仮定します。しかし、A製品とB製品の生産を同じ設備・流通を利用して行うことで、両製品の生産コスト合計が6000万円に削減できた場合、2000万円のコスト削減が達成できます。

P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)は、家庭用品やパーソナルケア製品など幅広い製品ラインを展開しており、同じ販売網やマーケティングチームを利用することで、個別のマーケティングコストを抑えています。また、コンビニエンスストアも、食料品、雑誌、生活用品を一つの店舗で販売することで、在庫管理や物流コストを削減しています。

このように、範囲の経済は異なる製品の生産で共通のリソースを活用することでコストの削減を可能にします。

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