リスクとリターンの計算における期待値と標準偏差は、投資の収益性とリスクを評価するために用いられる代表的な統計的指標です。これらの概念を理解することで、投資のパフォーマンスやリスクを予測し、最適な投資選択が可能になります。以下でそれぞれの説明と具体例を紹介します。
期待値とは
期待値は、投資のリターン(収益)の平均的な値を示します。つまり、投資のリターンが複数のシナリオで異なる場合、それらのリターンの加重平均を期待値として計算します。期待値は「平均リターン」とも呼ばれ、投資の収益性を評価する基本的な指標です。
期待値の計算式
$$E(R) = \sum_{i=1}^{n} P_i \times R_i$$
- \(E(R)\):期待値(平均リターン)
- \(P_i\):各シナリオが発生する確率
- \(R_i\):各シナリオにおけるリターン
具体例
ある投資案件で、次のようなリターンと確率が予測されています。
- リターンA: 5% のリターンが30%の確率で発生
- リターンB: 10% のリターンが50%の確率で発生
- リターンC: -2% のリターンが20%の確率で発生
期待値\(E(R)\)は次のように計算します:
$$\begin{eqnarray*}E(R) &=& (0.30 \times 5\%) + (0.50 \times 10\%) + (0.20 \times -2\%)\\
&=& 1.5\% + 5.0\% + (-0.4\%)\\
&=& 6.1\%
\end{eqnarray*}
$$
この投資の期待リターンは6.1%です。
標準偏差とは
標準偏差は、リターンの変動の大きさ、つまりリスクを表す指標です。投資のリターンが期待値からどの程度ばらつくか(分散しているか)を示し、リスクの尺度として使われます。標準偏差が大きいほどリターンの変動が大きく、リスクが高いことを意味します。
標準偏差の計算式
標準偏差 (\(\sigma\)) は、分散の平方根で求めます。
$$
\sigma = \sqrt{\sum_{i=1}^{n} P_i \times (R_i – E(R))^2}
$$
- \(P_i\):各シナリオが発生する確率
- \(R_i\):各シナリオにおけるリターン
- \(E(R)\):期待値(平均リターン)
具体例
先ほどの投資案件で、期待値は6.1%でした。これを使って標準偏差を計算します。
- 各シナリオごとに、リターンの期待値からの差を計算します。
- リターンA: \( (5\% – 6.1\%) = -1.1\% \)
- リターンB: \( (10\% – 6.1\%) = 3.9\% \)
- リターンC: \( (-2\% – 6.1\%) = -8.1\% \)
2. 差を二乗して、各シナリオの確率を掛けます。
- \( (-1.1\%)^2 \times 0.30 = 0.00363 \)
- \( (3.9\%)^2 \times 0.50 = 0.07605 \)
- \( (-8.1\%)^2 \times 0.20 = 0.13122 \)
3. それをすべて足して分散を求めます。
\[
分散 = 0.00363 + 0.07605 + 0.13122 = 0.2109
\]
4. 分散の平方根を取って標準偏差を求めます。
\[
標準偏差 = \sqrt{0.2109} \approx 0.4593 = 45.93\%
\]
この投資案件の標準偏差は45.93%であり、リターンの変動がかなり大きい(リスクが高い)ことがわかります。
まとめ
- 期待値は、投資の平均的なリターンを示し、投資の収益性を表します。
- 標準偏差は、リターンの変動幅を表し、リスクを定量的に評価します。
具体的な投資判断では、期待値が高く標準偏差が低い投資(リスクが低くリターンが高い投資)が好まれることが多いです。しかし、リスク許容度や目標リターンによって適切な選択肢が異なります。
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