価値工学 VEと価値分析VA

価値工学(VE: Value Engineering)価値分析(VA: Value Analysis)は、いずれも製品やサービスの価値を最大化し、コストを最適化するための方法論ですが、適用されるフェーズや焦点が若干異なります。

目次

価値工学VE

価値工学 (バリューエンジニアリング) は,製品・半製品の品質や機能性を損なわずにコストを下げる工学で、1947年にアメリカの GE社で始められました。製品やサービスなどの、製造コスト当たりの機能・性能・満足度を最大にする手法です。

V価値 = F 機能 / C コスト

で定義し、価値を最大にするために、機能と価格の組み合わせの最適解を導き出します。

機能とは何か

VEにおける「機能」は、主語と述語の関係、すなわち「○○を△△する」で表現します。
モーターならば「軸を回す」、LEDであれば「光を放つ」と定義します。
また、後者は「部屋を明るくする」という表現にもなります。
機能は大きく、使用機能、魅力機能、不要機能の3つに分類されます。

使用機能製品.サービスを使用しようとする、本来の目的にかかわる機能
魅力機能色彩、形状の美しさなど、感覚的満足感に関わる機能
不要機能その製品・サービスには不必要な機能

Value Engineering (VE)(価値工学)は、コスト削減と価値向上を同時に実現するための体系的なアプローチです。VEは、プロジェクトや製品の設計・開発段階で機能を分析し、不要なコストを削減しながら、同じまたはより高い価値を提供するための手法です。ここでは、VEの手法、留意点、そして実施例について説明します。

VEの手法

VEのプロセスは、以下のステップを体系的に進めることで進行します。このプロセスはVEワークショップとも呼ばれ、クロスファンクショナルなチームによって実施されます。

情報収集(Information Phase)

  • 目的: プロジェクトや製品の詳細情報を集め、現状を把握する。
  • 実施内容: 製品の仕様、設計、コスト構造、運用方法を収集。製品やプロジェクトの機能、コスト、価値を定義する。
  • 使用ツール: 成本分析表、製品フロー図、機能樹形図などを活用。

機能分析(Function Analysis Phase)

  • 目的: 各要素の機能を明確化し、それに伴うコストを把握する。
  • 実施内容: 製品やプロジェクトの主要な機能を「動詞+名詞」の形で定義し、その機能を提供するためのコストを評価。機能を「基本機能」と「付加機能」に分類し、付加機能のコスト削減を目指す。
  • 使用ツール: 機能分析システム技法(FAST図)を用いて、機能の階層化を図る。

創造段階(Creative Phase)

  • 目的: コスト削減と価値向上のための代替案を出す。
  • 実施内容: 各機能を実現するためのさまざまな代替案をブレインストーミングなどを通じて創造的に出し合う。品質や性能を維持または向上させる新たな設計や方法を検討。
  • 使用ツール: ブレインストーミング、アイデア生成法、6-3-5法(グループ発想法)など。

評価段階(Evaluation Phase)

  • 目的: 創造段階で出た代替案の中から最適なものを選ぶ。
  • 実施内容: 各代替案を技術的な実現可能性、コスト削減効果、品質への影響などの観点から評価し、最も効果的な解決策を選定。
  • 使用ツール: SWOT分析、コストベネフィット分析、デシジョンマトリックスなど。

開発段階(Development Phase)

  • 目的: 評価された代替案を具体化し、実行可能な計画を作成する。
  • 実施内容: 選ばれた代替案の詳細な設計を行い、必要なリソースやスケジュールを考慮して実行計画を作成する。変更点を反映させた新しいプロセスや製品仕様を策定。
  • 使用ツール: ワークフロー図、ガントチャートなどを用いてスケジュールを策定。

実行段階(Implementation Phase)

  • 目的: 選定された代替案を実際の製品やプロジェクトに導入する。
  • 実施内容: 設計の変更や生産プロセスの改善を実行に移す。コスト削減と価値向上が計画通りに達成されるようにモニタリングを行う。

フィードバック段階(Feedback Phase)

  • 目的: VEの結果を振り返り、今後の改善に活かす。
  • 実施内容: VEの実施結果を評価し、成功点や改善点をフィードバックとしてプロジェクトや組織の将来の活動に反映させる。

VE実施時の留意点

  • チームの構成: VEは、設計者、エンジニア、購買担当者、品質管理者、製造担当者など、さまざまな部門のメンバーを含むクロスファンクショナルなチームで行うことが重要です。異なる視点からの意見を集めることで、創造的な代替案を出すことができます。
  • 機能の正確な定義: VEの中心は「機能の分析」であり、製品やプロジェクトの本来の機能(基本機能)と、不要な機能(付加機能)を正確に定義することが成功の鍵です。
  • コスト削減と品質維持のバランス: VEの目的はコスト削減だけでなく、価値の向上にあります。コスト削減を優先しすぎて品質や機能を損なわないよう、バランスを取ることが重要です。
  • 代替案の創造性: 創造的な代替案を出す段階では、既存の枠組みにとらわれず、新しい視点からの提案を積極的に考えることが求められます。
  • VE実施のタイミング: VEは設計・開発段階で実施するのが最も効果的です。後の段階では設計変更が難しくなり、コスト削減の余地が減るため、できるだけ早期に実施することが望まれます。

VEの実施例

例1: 自動車業界でのVE

ある自動車メーカーが、新しい車種を開発する際にVEを適用しました。以下の結果が得られました。

  • 現状分析: 既存の車種のコスト構造を調査し、ドアの設計にコストが集中していることが判明。
  • 機能分析: ドアの基本機能は「開閉」と「安全性の確保」であり、それに関わる部品の高コストな仕様を再検討。
  • 代替案: 軽量で耐久性のある新素材を使用し、ドアの重量を削減しつつ安全性を維持するという代替案が提案されました。
  • 結果: この変更により、ドアの製造コストが15%削減され、車両全体の重量が軽減されたため、燃費向上も実現しました。

例2: 建設プロジェクトでのVE

あるプラント建設プロジェクトでは、VEによって配管システムの設計が大幅に改善されました。

  • 現状分析: プロジェクトの初期段階で配管システムのコストが予算を超過する見込みとなり、VEチームが設置されました。
  • 機能分析: 配管の基本機能は「液体の輸送」ですが、一部のルートが不必要に複雑であることが判明。
  • 代替案: 配管の設置ルートを簡素化し、使用する材料を変更する代替案が提案されました。
  • 結果: 配管システムのコストが20%削減され、プロジェクトの総コストが抑えられました。また、設置時間も短縮され、プロジェクトの完了が早まりました。

例3: 家電製品のVE

ある家電メーカーでは、新型冷蔵庫の開発にVEを導入し、コスト削減と機能改善を実現しました。

  • 現状分析: 冷蔵庫の製造コストが予算を超える可能性があり、VEチームが構成されました。
  • 機能分析: 冷蔵庫の基本機能は「食材の保存」と「冷却」であり、付加機能の一部に過剰なコストがかかっていることが確認されました。
  • 代替案: より効率的な冷却システムを採用し、電力消費量を削減しつ

価値分析

使用する材料の特性・機能、加工技術及び設計方法などを分析・検討することにより、コスト低減を図ることを示します。
VAとの違いは、製品を作る前の提案が「VE」、製造したあとの提案が「VA」となります。
VAは、設計や工程の変更にあたるため、自由度はVEよりも下がります。生産計画への影響を最小限に抑え、大掛かりな変更なしにコストを下げるという点がポイントとなります。

VAの利点

  • 既存製品の改善: 市場に出ている製品を継続的に改善することで、競争力を維持できます。
  • 継続的なコスト削減: 運用段階での無駄を特定し、コスト削減を実現します。
  • 顧客満足度の向上: 製品やサービスの品質やパフォーマンスを改善し、顧客満足度を高めます。

VEとVAの違い

  • タイミング: VEは設計・開発段階で適用され、VAは既存製品の運用段階で適用されます。
  • 目的: VEは新製品の価値最大化とコスト削減を目指し、VAは既存製品のコスト削減と価値向上を目指します。
  • アプローチ: VEは設計段階での創造的な代替案を探ることが多く、VAは既存のものを分析し、改善することに焦点を当てています。

実務での応用

あなたが担当されている業務では、VEは新しいプロジェクトや設備の設計段階でのコスト効率化に役立ちます。たとえば、海外のプラント建設現場で機器設計を進める際、VEを活用してコストを抑えつつ性能を維持する方法を検討できます。

一方で、VAは、既存の製品やサービスの効率化、たとえば石油精製プラントの運営管理において、既存プロセスの無駄を減らしつつ、品質やパフォーマンスを向上させるための手段として有効です。どちらの手法も、業務自動化や効率化の文脈で役立つでしょう。

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