管理図を作成するためのパラーメーターの種類はたくさんあります。
代表的な種類を以下に示します。
- Xbar
- R Chart
- S Chart
- X-MR
- I-MR
- u-chart
- c-chart
- p-chart
- np-chart
パラメーターそれぞれの定義と計算方法は単純なため、数字を導き出すことは簡単です。
一方、
という、管理図の使い分けが曖昧ではないでしょうか。
これらは統計的プロセス管理(SPC: Statistical Process Control)で用いられる管理図の種類です。管理図は、工程が安定しているかどうかを確認し、異常が発生しているかどうかを判断するために使用されます。各管理図は、特定のデータの種類や状況に適した方法でデータを分析します。以下、それぞれの管理図の概要を説明します。
X̄-R 管理図 (Xbar-R Chart)
- 概要: X̄-R管理図は、工程の平均(X̄)と範囲(R)を同時に監視する管理図です。サブグループ(バッチ)のデータに対して使用され、製造プロセスの平均とばらつきを確認します。
- X̄図: サブグループの平均値をプロットし、プロセスの平均レベルを監視。
- R図: サブグループ内の範囲(最大値と最小値の差)をプロットし、ばらつきを監視。
- 使用場面: サンプルサイズが小さい場合(一般的に2~10の範囲)に使用。バッチデータや定期的にサンプリングされるプロセスに適しています。
X̄-R 管理図の例題
X̄-Rチャートは、プロセスの平均(X-barチャート)と変動(Rチャート)を同時に監視するための管理図です。ここでは、具体例を使ってX̄-Rチャートを作成する方法を説明します。
条件
製造ラインで製品の重量を測定し、10個のサンプル(各サンプル5個のデータ)を収集したとします。
サンプル番号 | 測定値1 | 測定値2 | 測定値3 | 測定値4 | 測定値5 | サンプル平均 (X-bar) | サンプル範囲 (R) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 50.1 | 49.9 | 50.2 | 50.0 | 50.1 | 50.06 | 0.3 |
2 | 49.8 | 50.0 | 50.1 | 49.9 | 49.7 | 49.90 | 0.4 |
3 | 50.2 | 50.3 | 50.1 | 50.0 | 50.2 | 50.16 | 0.3 |
4 | 49.9 | 50.1 | 49.8 | 50.0 | 50.2 | 50.00 | 0.4 |
5 | 50.0 | 49.9 | 50.2 | 50.1 | 50.3 | 50.10 | 0.4 |
6 | 49.9 | 50.1 | 50.0 | 50.2 | 50.0 | 50.04 | 0.3 |
7 | 50.1 | 50.0 | 49.9 | 50.1 | 49.8 | 50.00 | 0.3 |
8 | 50.0 | 49.9 | 50.1 | 50.2 | 50.0 | 50.04 | 0.3 |
9 | 50.2 | 50.1 | 50.0 | 50.2 | 50.3 | 50.16 | 0.3 |
10 | 49.8 | 50.0 | 49.9 | 50.0 | 50.2 | 49.98 | 0.4 |
ステップ1: X-barとRの平均値を計算する
- X-barの平均値(\(\bar{X}\)):
\[\begin{eqnarray*}
\bar{X} &=& \frac{\sum_{i=1}^{10} \text{X-bar値}}{10}\\
&=& \frac{50.06 + 49.90 + 50.16 + 50.00 + 50.10 + 50.04 + 50.00 + 50.04 + 50.16 + 49.98}{10}\\
&=& 50.04
\end{eqnarray*}\] - Rの平均値(\(\bar{R}\)):
\[\begin{eqnarray*}
\bar{R} &=& \frac{\sum_{i=1}^{10} R}{10}\\
&=& \frac{0.3 + 0.4 + 0.3 + 0.4 + 0.4 + 0.3 + 0.3 + 0.3 + 0.3 + 0.4}{10}\\
&=& 0.34
\end{eqnarray*}\]
ステップ2: 制御限界の計算
サンプルサイズ \( n = 5 \) なので、統計的な定数 \( A_2 \)、\( D_3 \)、\( D_4 \) を使用します。
- \( A_2 = 0.577 \)
- \( D_3 = 0 \)
- \( D_4 = 2.114 \)
- X-barチャートの上限(UCL\(_{\bar{X}}\))と下限(LCL\(_{\bar{X}}\)):
\[
UCL_{\bar{X}} = \bar{X} + A_2 \times \bar{R} = 50.04 + 0.577 \times 0.34 = 50.235
\]
\[
LCL_{\bar{X}} = \bar{X} – A_2 \times \bar{R} = 50.04 – 0.577 \times 0.34 = 49.845
\] - Rチャートの上限(UCL\(_{R}\))と下限(LCL\(_{R}\)):
\[
UCL_R = D_4 \times \bar{R} = 2.114 \times 0.34 = 0.719
\]
\[
LCL_R = D_3 \times \bar{R} = 0 \times 0.34 = 0
\]
まとめ
チャート | 平均 | 上限 | 下限 |
---|---|---|---|
X-barチャート | 50.04 | 50.235 | 49.845 |
Rチャート | 0.34 | 0.719 | 0 |
解釈
X-bar-Rチャートを用いて、サンプルデータが制御限界内に収まっているかを監視します。
X̄-S 管理図 (Xbar-S Chart)
- 概要: X̄-S管理図は、サブグループの平均(X̄)と標準偏差(S)を監視する管理図です。X̄-R図と似ていますが、ばらつきを表すために範囲(R)ではなく標準偏差(S)を使用します。
- X̄図: サブグループの平均をプロット。
- S図: サブグループの標準偏差をプロットし、工程のばらつきをより詳細に監視。
- 使用場面: サンプルサイズが大きい(一般的に10以上)場合に使用。標準偏差の方が範囲よりも正確にばらつきを表すため、データが多い場合に適しています。
X̄-S 管理図の例題
X̄-S管理図(平均-標準偏差管理図)は、プロセスの平均と標準偏差の変動を同時に監視する管理図です。X̄(平均)とS(標準偏差)を使用して、製造やプロセスの安定性をチェックするのに役立ちます。以下に具体例を示します。
条件
ある製造ラインで、製品の重量を測定し、10個のサンプル(各サンプル5個のデータ)を収集したとします。
サンプル番号 | 測定値1 | 測定値2 | 測定値3 | 測定値4 | 測定値5 | サンプル平均 (X̄) | 標準偏差 (S) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 50.2 | 49.8 | 50.1 | 50.0 | 50.3 | 50.08 | 0.19 |
2 | 50.0 | 49.7 | 49.8 | 50.1 | 50.0 | 49.92 | 0.16 |
3 | 50.1 | 50.2 | 50.3 | 50.0 | 50.1 | 50.14 | 0.11 |
4 | 49.9 | 50.0 | 49.8 | 50.2 | 50.1 | 50.00 | 0.15 |
5 | 50.3 | 50.2 | 50.0 | 50.1 | 49.9 | 50.10 | 0.15 |
6 | 50.0 | 49.9 | 50.1 | 50.0 | 50.2 | 50.04 | 0.11 |
7 | 49.8 | 50.0 | 49.9 | 50.1 | 50.0 | 49.96 | 0.10 |
8 | 50.1 | 50.2 | 50.3 | 50.1 | 50.2 | 50.18 | 0.09 |
9 | 50.2 | 50.1 | 50.0 | 50.1 | 50.2 | 50.12 | 0.08 |
10 | 50.0 | 49.8 | 50.1 | 50.0 | 50.1 | 49.98 | 0.12 |
ステップ1: X̄とSの平均値を計算する
- X̄の平均値(\(\bar{X}\)):
\[\begin{eqnarray*}
\bar{X} &=& \frac{\sum_{i=1}^{10} \text{X̄値}}{10}\\
&=& \frac{50.08 + 49.92 + 50.14 + 50.00 + 50.10 + 50.04 + 49.96 + 50.18 + 50.12 + 49.98}{10}\\
&=& 50.05
\end{eqnarray*}\] - Sの平均値(\(\bar{S}\)):
\[\begin{eqnarray*}
\bar{S} &=& \frac{\sum_{i=1}^{10} S}{10}\\
&=& \frac{0.19 + 0.16 + 0.11 + 0.15 + 0.15 + 0.11 + 0.10 + 0.09 + 0.08 + 0.12}{10}\\
&=& 0.126
\end{eqnarray*}\]
ステップ2: 制御限界の計算
サンプルサイズ \( n = 5 \) の場合、統計的な定数 \( A_3 \)、\( B_3 \)、\( B_4 \) を使用します。
- \( A_3 = 1.427 \)
- \( B_3 = 0.566 \)
- \( B_4 = 1.788 \)
- X̄チャートの上限(UCL\(_{\bar{X}}\))と下限(LCL\(_{\bar{X}}\)):
\[
UCL_{\bar{X}} = \bar{X} + A_3 \times \bar{S} = 50.05 + 1.427 \times 0.126 = 50.23
\]
\[
LCL_{\bar{X}} = \bar{X} – A_3 \times \bar{S} = 50.05 – 1.427 \times 0.126 = 49.87
\] - Sチャートの上限(UCL\(_{S}\))と下限(LCL\(_{S}\)):
\[
UCL_S = B_4 \times \bar{S} = 1.788 \times 0.126 = 0.225
\]
\[
LCL_S = B_3 \times \bar{S} = 0.566 \times 0.126 = 0.071
\]
まとめ
チャート | 平均 | 上限 | 下限 |
---|---|---|---|
X̄チャート | 50.05 | 50.23 | 49.87 |
Sチャート | 0.126 | 0.225 | 0.071 |
解釈
サンプルデータが制御限界内に収まっているかをX̄-Sチャートで確認し、プロセスの平均値と変動が安定しているかを判断します。この管理図を用いることで、標準偏差の変動も含めてプロセスの変化を早期に検出できます。
X-MR 管理図 (X-Moving Range Chart)
- 概要: X-MR管理図は、1つのプロセスデータに対して、平均(X)と移動範囲(MR: Moving Range)を監視する管理図です。個別観測のデータに適しており、連続的に測定されるデータで用いられます。
- X図: 各データ点をプロットし、工程の平均を監視。
- MR図: 隣接するデータ点間の差(移動範囲)をプロットし、ばらつきを監視。
- 使用場面: データが個別に記録される場合(例えば、一日一度の計測データ)やサブグループを作れない場合に使用。
X-MR 管理図の具体例
X-MR管理図(個別値-移動範囲管理図)は、サンプルサイズが小さく、個別の測定データしか得られない場合にプロセスの安定性を確認するために用いられます。X-MRチャートは、個別データ(Xチャート)と、隣接する測定値の範囲(MRチャート)を使って変動を監視します。
以下にX-MRチャートの具体例を示します。
条件
ある製造ラインで、各サンプルが連続して1つずつ測定された製品の寸法データが得られているとします。
サンプル番号 | 測定値(X) | 移動範囲(MR) |
---|---|---|
1 | 50.2 | – |
2 | 50.0 | 0.2 |
3 | 49.9 | 0.1 |
4 | 50.1 | 0.2 |
5 | 50.3 | 0.2 |
6 | 50.2 | 0.1 |
7 | 50.0 | 0.2 |
8 | 50.1 | 0.1 |
9 | 50.3 | 0.2 |
10 | 50.2 | 0.1 |
ステップ1: XとMRの平均値を計算する
- Xの平均値(\(\bar{X}\)):
\[\begin{eqnarray*}
\bar{X} &=& \frac{\sum_{i=1}^{10} X}{10}\\
&=& \frac{50.2 + 50.0 + 49.9 + 50.1 + 50.3 + 50.2 + 50.0 + 50.1 + 50.3 + 50.2}{10}\\
&=& 50.13
\end{eqnarray*}\] - MRの平均値(\(\overline{\text{MR}}\)):
\[\begin{eqnarray*}
\overline{\text{MR}} &=& \frac{\sum_{i=2}^{10} MR}{9}\\
&=& \frac{0.2 + 0.1 + 0.2 + 0.2 + 0.1 + 0.2 + 0.1 + 0.2 + 0.1}{9}\\
&=& 0.156
\end{eqnarray*}\]
ステップ2: 制御限界の計算
X-MR管理図では、サンプルサイズが1であるため、以下の統計的な定数を使用します:
- \( E_2 = 2.66 \)
- Xチャートの上限(UCL\(_{X}\))と下限(LCL\(_{X}\)):
\[
UCL_{X} = \bar{X} + E_2 \times \overline{\text{MR}} = 50.13 + 2.66 \times 0.156 = 50.544
\]
\[
LCL_{X} = \bar{X} – E_2 \times \overline{\text{MR}} = 50.13 – 2.66 \times 0.156 = 49.716
\] - MRチャートの上限(UCL\(_{MR}\))と下限(LCL\(_{MR}\)):
- MRチャートのLCLは通常0とします。
\[
UCL_{MR} = 3.267 \times \overline{\text{MR}} = 3.267 \times 0.156 = 0.51
\]
\[
LCL_{MR} = 0
\]
まとめ
チャート | 平均 | 上限 | 下限 |
---|---|---|---|
Xチャート | 50.13 | 50.544 | 49.716 |
MRチャート | 0.156 | 0.51 | 0 |
解釈
X-MRチャートを用いて、各測定値と移動範囲が制御限界内に収まっているかを確認します。製造プロセスが安定している場合、XとMRの両方が制御限界内に収まり、異常な外れ値や変動がないことが示されます。
I-MR 管理図 (Individual-Moving Range Chart)
- 概要: I-MR管理図は、X-MR図と同様に個別の観測値に対して用いられるが、ここではI(Individual)として単一の観測値を扱い、MR(Moving Range)を使ってばらつきを評価します。
- I図: 各観測値をプロットし、個々のデータ点の工程の中心傾向を確認。
- MR図: 移動範囲を使用して工程の変動を評価。
- 使用場面: 単一の観測値を時間の経過に従って監視する場合に適用される。工程が安定しているかどうかを個別のデータ点で確認することができます。
I-MR 管理図の例題
I-MR管理図(個別値-移動範囲管理図)は、データが個別観測値である場合や、サンプルサイズが1でプロセスの変動を確認したい場合に使用される管理図です。「I(Individual)チャート」は個別観測値の管理、「MR(Moving Range)チャート」は隣接するデータ間の変動(移動範囲)を管理します。以下に具体例を示します。
条件
製品の重量を1個ずつ測定し、10回分のデータが得られたとします。
サンプル番号 | 測定値 (I) | 移動範囲 (MR) |
---|---|---|
1 | 50.2 | – |
2 | 50.1 | 0.1 |
3 | 50.3 | 0.2 |
4 | 50.0 | 0.3 |
5 | 50.4 | 0.4 |
6 | 50.1 | 0.3 |
7 | 50.2 | 0.1 |
8 | 50.3 | 0.1 |
9 | 50.1 | 0.2 |
10 | 50.2 | 0.1 |
ステップ1: IとMRの平均値を計算する
- Iの平均値(\(\bar{X}\)):
\[\begin{eqnarray*}
\bar{X} &=& \frac{\sum_{i=1}^{10} X_i}{10}\\
&=& \frac{50.2 + 50.1 + 50.3 + 50.0 + 50.4 + 50.1 + 50.2 + 50.3 + 50.1 + 50.2}{10}\\
&=& 50.19
\end{eqnarray*}\] - MRの平均値(\(\overline{\text{MR}}\)):
\[\begin{eqnarray*}
\overline{\text{MR}} &=& \frac{\sum_{i=2}^{10} MR_i}{9}\\
&=& \frac{0.1 + 0.2 + 0.3 + 0.4 + 0.3 + 0.1 + 0.1 + 0.2 + 0.1}{9}\\
&=& 0.2
\end{eqnarray*}\]
ステップ2: 制御限界の計算
I-MR管理図では、以下の統計的な定数を使用します:
- \( E_2 = 2.66 \)(サンプルサイズが1のIチャートの制御限界係数)
- \( D_4 = 3.267 \)(MRチャートの上限係数)
Iチャートの制御限界
- Iチャートの上限(UCL\(_{I}\))と下限(LCL\(_{I}\)):
\[
UCL_{I} = \bar{X} + E_2 \times \overline{\text{MR}} = 50.19 + 2.66 \times 0.2 = 50.722
\]
\[
LCL_{I} = \bar{X} – E_2 \times \overline{\text{MR}} = 50.19 – 2.66 \times 0.2 = 49.658
\]
MRチャートの制御限界
- MRチャートの上限(UCL\(_{MR}\))と下限(LCL\(_{MR}\)):
- 通常、MRチャートの下限は0とします。
\[
UCL_{MR} = D_4 \times \overline{\text{MR}} = 3.267 \times 0.2 = 0.653
\]
\[
LCL_{MR} = 0
\]
まとめ
チャート | 平均 | 上限 | 下限 |
---|---|---|---|
Iチャート | 50.19 | 50.722 | 49.658 |
MRチャート | 0.2 | 0.653 | 0 |
解釈
このI-MR管理図を使用すると、各測定値(Iチャート)とその変動(MRチャート)が管理限界内に収まっているかどうかを確認できます。プロセスが安定している場合、すべての点が上限と下限の間に収まります。
u-chart
- 概要: u-chartは、単位あたりの欠陥数(不良数)を監視する管理図です。サンプルサイズが異なる場合にも対応できます。
- 各サンプルに含まれる欠陥数をプロットし、単位あたりの欠陥率を評価します。
- 使用場面: ある製品や工程で、1つのユニットに複数の欠陥が含まれる場合に適用。例えば、1つのシートに複数の欠陥がある状況など。
u-chartの具体例
uチャートは、不良数の平均を単位あたりで管理する際に使用される管理図で、特に不良品が検査単位ごとに発生し得る工程に適しています。ここでは、不良数が一定の分布をしている場合に用いる具体例を示します。
条件
ある製造ラインで、10日間にわたって検査を行い、1日の検査数は変動しています。不良数(不具合の合計数)を各日ごとに記録し、単位あたりの平均不良数(u値)を求めることでプロセスの安定性を確認します。
日数 | 検査数 (n) | 不良数 (c) | u値 (c/n) |
---|---|---|---|
1 | 120 | 6 | 0.050 |
2 | 150 | 7 | 0.047 |
3 | 130 | 8 | 0.061 |
4 | 140 | 5 | 0.036 |
5 | 160 | 6 | 0.038 |
6 | 120 | 9 | 0.075 |
7 | 130 | 4 | 0.031 |
8 | 140 | 7 | 0.050 |
9 | 150 | 8 | 0.053 |
10 | 120 | 5 | 0.042 |
ステップ1: u値の平均 (\(\bar{u}\)) を計算する
\[\begin{eqnarray*}
\bar{u} &=& \frac{\sum_{i=1}^{10} c_i}{\sum_{i=1}^{10} n_i}\\
&=& \frac{6 + 7 + 8 + 5 + 6 + 9 + 4 + 7 + 8 + 5}{120 + 150 + 130 + 140 + 160 + 120 + 130 + 140 + 150 + 120}\\
&=& \frac{65}{1360}\\
&=& 0.0478
\end{eqnarray*}\]
ステップ2: 制御限界の計算
uチャートの制御限界は、平均u値 \(\bar{u}\) に基づき、各検査数 \( n_i \) に対して変動します。
- 上限 (UCL\(_u\)) および 下限 \(LCL(_u\)):
\[
UCL_{u} = \bar{u} + 3 \sqrt{\frac{\bar{u}}{n_i}}
\]
\[
LCL_{u} = \bar{u} – 3 \sqrt{\frac{\bar{u}}{n_i}}
\]
各日ごとのUCLとLCL計算例
- 1日目 (n=120):
\[\begin{eqnarray*}
UCL_{u} &=& 0.0478 + 3 \sqrt{\frac{0.0478}{120}}\\
&=& 0.0478 + 3 \times 0.0199\\
&=& 0.1075
\end{eqnarray*}\]
\[\begin{eqnarray*}
LCL_{u} &=& 0.0478 – 3 \sqrt{\frac{0.0478}{120}}\\
&=& 0.0478 – 3 \times 0.0199\\
&=& -0.0119\\
&\approx& 0 \text{(0未満の場合は0に設定)}
\end{eqnarray*}\] - 2日目 (n=150):
\[\begin{eqnarray*}
UCL_{u} &=& 0.0478 + 3 \sqrt{\frac{0.0478}{150}}\\
&=& 0.0478 + 3 \times 0.0178\\
&=& 0.1012
\end{eqnarray*}\]
\[\begin{eqnarray*}
LCL_{u} &=& 0.0478 – 3 \sqrt{\frac{0.0478}{150}}\\
&=& 0.0478 – 3 \times 0.0178\\
&=& -0.0056\\
&\approx& 0
\end{eqnarray*}\]
他の日も同様に計算できます。
まとめ
日数 | 検査数 (n) | 不良数 (c) | u値 | UCL(_u) | LCL(_u) |
---|---|---|---|---|---|
1 | 120 | 6 | 0.050 | 0.1075 | 0 |
2 | 150 | 7 | 0.047 | 0.1012 | 0 |
3 | 130 | 8 | 0.061 | 0.1050 | 0 |
… | … | … | … | … | … |
解釈
uチャートにて、各日のu値がUCLとLCL内に収まっているか確認することで、不良発生の傾向を監視します。プロセスが安定している場合、ほとんどのu値は制御限界内に収まります。
c-chart
- 概要: c-chartは、固定されたサンプルサイズでの欠陥数(不良数)を監視する管理図です。サンプルごとの欠陥数をそのままプロットします。
- 使用場面: サンプルサイズが固定であり、欠陥の総数を追跡したい場合に使用。製造ラインでの製品の不良数の監視など。
c-chartの具体例
cチャートは、一定の検査範囲で発生する不良数を管理する際に使用される管理図です。特に検査範囲が一定のままで、1単位あたりの不良数や欠陥数を測定したいときに適しています。ここでは、cチャートの具体例を挙げて説明します。
条件
ある製造工程において、1日に100個の製品をランダムに抽出し、10日間にわたって不良の個数を記録したデータが以下のとおりです。
日数 | 検査数(n = 100) | 不良数(c) |
---|---|---|
1 | 100 | 4 |
2 | 100 | 3 |
3 | 100 | 6 |
4 | 100 | 5 |
5 | 100 | 7 |
6 | 100 | 4 |
7 | 100 | 6 |
8 | 100 | 5 |
9 | 100 | 3 |
10 | 100 | 5 |
ステップ1: 平均不良数 (\(\bar{c}\)) の計算
cチャートでは、すべてのサンプルの不良数を合計し、日数で割ることで平均不良数を求めます。
\[\begin{eqnarray*}
\bar{c} &=& \frac{\sum_{i=1}^{10} c_i}{10}\\
&=& \frac{4 + 3 + 6 + 5 + 7 + 4 + 6 + 5 + 3 + 5}{10}\\
&=& \frac{48}{10}\\
&=& 4.8
\end{eqnarray*}\]
ステップ2: 制御限界の計算
cチャートの制御限界は、平均不良数 \(\bar{c}\) を基に、次の式を使って計算します。
- 上限 \(UCL(_{c}\)) および 下限 \(LCL(_{c}\)):
\[\begin{eqnarray*}
UCL_{c} &=& \bar{c} + 3 \sqrt{\bar{c}}\\
&=& 4.8 + 3 \sqrt{4.8}\\
&=& 4.8 + 3 \times 2.19\\
&=& 11.37
\end{eqnarray*}\]
\[\begin{eqnarray*}
LCL_{c} &=& \bar{c} – 3 \sqrt{\bar{c}} = 4.8 – 3 \times 2.19\\
&=& -1.77\\
&\approx &0 \quad (\text{下限が0未満の場合、0に設定})
\end{eqnarray*}\]
まとめ
チャート | 平均不良数 (\(\bar{c}\)) | 上限 (UCL\(_{c}\)) | 下限 (LCL\(_{c}\)) |
---|---|---|---|
cチャート | 4.8 | 11.37 | 0 |
解釈
このcチャートで、各日の不良数(c)が制御限界内に収まっているか確認することで、不良発生の変動が管理可能な範囲にあるかを判断します。すべての不良数が上限と下限の範囲内に収まっている場合、プロセスが安定していると判断できます。もしデータが上限を超えるような場合には、製造過程に異常がある可能性があるため、原因の特定と対策が必要です。
この方法により、製造プロセスの一貫性をチェックし、品質管理を効果的に進めることができます。
p-chart
- 概要: p-chartは、不良品率を監視する管理図です。サンプル内の不良品の割合(パーセンテージ)を監視し、サンプルサイズが変動する場合にも適しています。
- 各サンプルにおける不良品の割合をプロットします。
- 使用場面: 不良品の割合を監視する際に使用。例えば、生産された製品のうち何%が不良品かを追跡する場合。
p-chartの具体例
pチャート(不良率管理図)は、サンプルごとに異なる検査数を持つ場合の不良率を管理する際に使用されます。製品やプロセスの品質を安定させるために、サンプル中の不良品の割合を監視する際に効果的です。
条件
製造業の品質管理の一環として、10日間にわたり検査を行い、1日ごとの検査数(サンプルサイズ)が異なる場合のpチャートを考えます。
日数 | 検査数 (n) | 不良品数 (c) | 不良率 (p = c/n) |
---|---|---|---|
1 | 200 | 10 | 0.050 |
2 | 180 | 8 | 0.044 |
3 | 220 | 12 | 0.055 |
4 | 210 | 9 | 0.043 |
5 | 190 | 11 | 0.058 |
6 | 200 | 10 | 0.050 |
7 | 230 | 13 | 0.057 |
8 | 240 | 10 | 0.042 |
9 | 220 | 11 | 0.050 |
10 | 210 | 9 | 0.043 |
ステップ1: 平均不良率 (\(\bar{p}\)) の計算
pチャートでは、全体の不良品数を全体の検査数で割ることで平均不良率を求めます。
\[\begin{eqnarray*}
\bar{p} &=& \frac{\sum_{i=1}^{10} c_i}{\sum_{i=1}^{10} n_i}\\
&=& \frac{10 + 8 + 12 + 9 + 11 + 10 + 13 + 10 + 11 + 9}{200 + 180 + 220 + 210 + 190 + 200 + 230 + 240 + 220 + 210}\\
&=& \frac{103}{2100}\\
&\approx& 0.049
\end{eqnarray*}\]
ステップ2: 制御限界の計算
pチャートの制御限界は、各サンプルの検査数 \( n_i \) に基づき、以下の式で計算します。
- 上限 (UCL\(_p\)) および 下限 (LCL\(_p\)):
\[
UCL_{p} = \bar{p} + 3 \sqrt{\frac{\bar{p} (1 – \bar{p})}{n_i}}
\]
\[
LCL_{p} = \bar{p} – 3 \sqrt{\frac{\bar{p} (1 – \bar{p})}{n_i}}
\]
各日ごとのUCLとLCL計算例
- 1日目 (n=200):
\[\begin{eqnarray*}
UCL_{p} &=& 0.049 + 3 \sqrt{\frac{0.049 \times (1 – 0.049)}{200}}\\
&=& 0.049 + 3 \times 0.015\\
&=& 0.094
\end{eqnarray*}\]
\[\begin{eqnarray*}
LCL_{p} &=& 0.049 – 3 \sqrt{\frac{0.049 \times (1 – 0.049)}{200}}\\
&=& 0.049 – 3 \times 0.015\\
&=& 0.004
\end{eqnarray*}\] - 2日目 (n=180):
\[\begin{eqnarray*}
UCL_{p} &=& 0.049 + 3 \sqrt{\frac{0.049 \times (1 – 0.049)}{180}}\\
&=& 0.049 + 3 \times 0.016\\
&=& 0.097
\end{eqnarray*}\]
\[\begin{eqnarray*}
LCL_{p} &=& 0.049 – 3 \sqrt{\frac{0.049 \times (1 – 0.049)}{180}}\\
&=& 0.049 – 3 \times 0.016\\
&=& 0.002
\end{eqnarray*}\]
他の日も同様に計算できます。
まとめ
日数 | 検査数 (n) | 不良品数 (c) | 不良率 (p) | UCL\(_p\) | LCL\(_p\) |
---|---|---|---|---|---|
1 | 200 | 10 | 0.050 | 0.094 | 0.004 |
2 | 180 | 8 | 0.044 | 0.097 | 0.002 |
3 | 220 | 12 | 0.055 | 0.092 | 0.006 |
… | … | … | … | … | … |
解釈
このpチャートを使うと、各日の不良率が管理限界内に収まっているか確認することで、工程の安定性を判断できます。不良率が上限を超えていれば、製造過程に異常が発生している可能性があるため、調査が必要です。
np-chart
- 概要: np-chartは、不良品の数(個数)を監視する管理図です。サンプルサイズが一定の場合に使用され、サンプルごとの不良品の総数をプロットします。
- 使用場面: サンプルサイズが固定されている場合で、不良品の総数を直接監視したいときに適用されます。
np-chartの具体例
npチャートは、サンプルサイズが一定である場合の不良品数を管理するためのチャートで、一定の検査範囲の中での不良数(不良品数)に着目します。npチャートは、不良率ではなく不良品の個数そのものをプロットするため、サンプルサイズが固定されている状況で適しています。
条件
ある製造ラインで、10日間にわたって1日100個の製品を検査し、不良品数を記録しました。このデータを使用してnpチャートを作成します。
日数 | 検査数 (n = 100) | 不良品数 (np) |
---|---|---|
1 | 100 | 5 |
2 | 100 | 4 |
3 | 100 | 7 |
4 | 100 | 3 |
5 | 100 | 6 |
6 | 100 | 8 |
7 | 100 | 4 |
8 | 100 | 5 |
9 | 100 | 6 |
10 | 100 | 4 |
ステップ1: 平均不良品数 (\(\bar{np}\)) の計算
npチャートでは、全期間の不良品数の合計を、期間数で割ることで平均不良品数を求めます。
\[\begin{eqnarray*}
\bar{np} &=& \frac{\sum_{i=1}^{10} np_i}{10}\\
&=& \frac{5 + 4 + 7 + 3 + 6 + 8 + 4 + 5 + 6 + 4}{10}\\
&=& \frac{52}{10}\\
&=& 5.2
\end{eqnarray*}\]
ステップ2: 制御限界の計算
npチャートの制御限界は、平均不良品数 \(\bar{np}\) と検査数 \( n \) を基に、次の式で計算します。
- 上限 (UCL\(_{np}\)) および 下限 (LCL\(_{np}\)):
\[
UCL_{np} = \bar{np} + 3 \sqrt{\bar{np} \times (1 – \frac{\bar{np}}{n})}
\]
\[
LCL_{np} = \bar{np} – 3 \sqrt{\bar{np} \times (1 – \frac{\bar{np}}{n})}
\]
計算例
ここで、\( \bar{np} = 5.2 \) および \( n = 100 \) を代入します。
- UCL\(_{np}\):
\[\begin{eqnarray*}
UCL_{np} &=& 5.2 + 3 \sqrt{5.2 \times (1 – \frac{5.2}{100})}\\
&=& 5.2 + 3 \times 2.223\\
&=& 11.869\\
&\approx& 12
\end{eqnarray*}\] - LCL\(_{np}\):
\[\begin{eqnarray*}
LCL_{np} &=& 5.2 – 3 \sqrt{5.2 \times (1 – \frac{5.2}{100})}\\
&=& 5.2 – 3 \times 2.223\\
&=& -1.469\\
&\approx& 0 \quad (\text{下限が0未満の場合、0に設定})
\end{eqnarray*}\]
まとめ
チャート | 平均不良品数 (\(\bar{np}\)) | 上限 (UCL\(_{np}\)) | 下限 (LCL\(_{np}\)) |
---|---|---|---|
npチャート | 5.2 | 12 | 0 |
解釈
このnpチャートでは、各日の不良品数が制御限界内に収まっているか確認することで、製造工程の安定性を判断します。不良品数が上限を超えていれば、製造工程に異常が発生している可能性があり、調査が必要です。また、0未満になった場合は0に設定し、異常な低さがないかも監視します。
管理図の選定における留意点
- データの種類: データが連続値か、カウントデータ(不良品や欠陥の数)かに応じて、適切な管理図を選択します。例えば、連続データであればX̄-R図やX̄-S図、カウントデータであればu-chartやc-chartが適しています。
- サンプルサイズ: サンプルサイズが一定かどうかによっても、管理図の選択が変わります。p-chartやu-chartはサンプルサイズが変動する場合でも使用できますが、np-chartやc-chartは固定されたサンプルサイズが必要です。
- プロセスの特性: 工程の安定性やばらつきを監視したい場合、X̄-R図やX̄-S図のような平均とばらつきの両方を監視する管理図が有効です。一方、欠陥や不良品の発生率を監視したい場合、p-chartやu-chartが適しています。
まとめ
管理図は、製造プロセスやサービスプロセスの安定性を確保し、異常が発生した際に早期に対応するために重要なツールです。データの種類やプロセスの状況に応じて適切な管理図を選択し、継続的なプロセス改善に活用することが大切です。
コメント