SECI(セキ)モデルは、一橋大学大学院教授の野中郁次郎氏が提唱した広義のナレッジマネジメントにおける基礎理論で、個人が持つ知識や経験などの暗黙知を形式知に変換し、組織全体で共有・管理し、それらを組み合わせることで、新たな知識を生み出すフレームワークです。
SECIモデルの構成
SECIモデルは次の4つのプロセスで構成されています。
共同化プロセス Socialization
言葉ではなく体験や経験によって、暗黙知を他人に移転させる。
経験や技能を通じて、人々が非公式な場で情報を交換し、信頼関係を築くことが重要です。これは、特にチームの一体感を高める要素となります。
表出化プロセス Externalization
暗黙知から形式知に変化させるプロセス。
思考や感情を言語化する過程で、グループディスカッションやブレインストーミングが効果的です。この段階でのアウトプットが、後のプロセスにおける基礎となります。
結合化プロセス Combination
表出された知識を他の知識と組み合わせることで、新たな形式知を創出する。
データや情報を組み合わせ、新しい知識を生み出すことに重点を置きます。情報技術を活用することで、効率的に情報を管理し、知識を融合させることが可能です。
内面化プロセス Internalization
新たに創出された形式知を、各個人で習得するために反復練習等を行うことでまた自分のものとし、形式知から個人の暗黙知へと変化させる。
学習した知識を実践に活かし、フィードバックを受けて改善を図ります。この過程を通じて、知識が深まり、定着します。
これらのプロセスはスパイラル構造となっており、この一連のプロセスを繰り返す(暗黙知→形式知→暗黙知→形式知…)ことにより、よりレベルの高い知識を生み出すことで組織全体のレベルアップを図ります。
この4つのプロセスを効率よく行うためには「場」が必要であると提唱されています。
創発場:共同化プロセス
気軽な会話を通して、他社と知識の交換を行う
対話場:表出化プロセス
オフィシャルなミーティングで暗黙知を形式知に変換する
システム場:結合化プロセス
ミーティングでExcelファイルを使用して形式知と形式知を組み合わせる。
実践場:内面化プロセス
個人が新しい形式知を実践する場所(デスク、作業場など)
メリット
- 知識の有効活用: SECIモデルにより、組織内の知識が体系的に管理され、活用されるため、競争力が向上します。
- イノベーションの促進: 知識の創造と変換が促進されることで、新しいアイデアや技術の開発が加速します。
- チームの結束力向上: 共同作業や対話を通じて、メンバー間の信頼関係が築かれ、チームワークが強化されます。
注意点
- 時間とリソースの投入: 知識創造は時間を要するため、十分なリソースを確保する必要があります。
- 文化の理解: 組織の文化がSECIプロセスに影響を与えるため、文化的なバリアを乗り越えることが求められます。
- 継続的なプロセス: SECIモデルは一回限りのプロセスではなく、継続的に実施することが重要です。
効果的な進め方
- 目的の明確化: SECIモデルの導入目的を明確にし、全員が理解することが重要です。
- 適切なツールの選定: 知識共有のための適切なツールやプラットフォームを選定し、活用します。
- 定期的な振り返り: プロセスの進捗を定期的に振り返り、改善点を見つけていくことが重要です。
- メンバーの参加促進: 全てのメンバーが積極的に参加できる環境を整え、意見交換を促進します。
このように、SECIモデルは組織内での知識創造と活用を促進し、持続的な成長を支えるための効果的なフレームワークです。
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