【令和2年 2020年】総合技術監理部門 択一問題 解答と解説

目次

I-1-1 品質管理で用いられる図とグラフ

品質管理で用いられる図やグラフと、そこから読み取ることのできる内容の例の組合せとして、最も適切なものはどれか。

① 系統図:
ある工場で作られる部品の重量について、平均値は規格の中心とほぼ一致しているが、分布の幅は規格の幅よりも大きい。
② 連関図:
ある製品について、日々の不適合品率が一定範囲内で推移しており、製造工程は安定した状態にある。
③ 管理図:
ある製造部品の寸法誤差と作業時間との関係について、作業時間が短いほど寸法誤差が大きい傾向にある。
④ パレート図:
ある書類の記入項目のうち、不備件数の最も多い「日付」と、その次に多い「口座番号」の2 つで、不備件数全体のおおよそ80%を占めている。
⑤ ヒストグラム:
ある商品について、顧客満足度に対する影響は、価格よりもアフターサービスの方が大きい。

正解と解説

【正解④】
QC7つ道具、新QC7つ道具に関する出題です。
① : ヒストグラムの内容。
② : 管理図など、品質管理の統計的手法の内容。
③ : 散布図の内容。2つの要素からなる1組のデータが得られたときに、2つの要素の関係を見るための手法です。
⑤ : 連関図の内容です。原因と結果や目的と手段などの関係が複雑でかつ絡み合っている場合,これらの相互関係を図解することによってわかりやすく表現する手法です。

I-1-2 投資先検討

5 つの投資先A~E の中から1 つを選択して投資することを考える。各投資先の、ある金額を投資した場合に投資後4 年間にわたって見込まれる利益が下表のとおりであるとき、4 年間に見込まれる利益の現在価値の合計が最も高い投資先はどれか。ただし、割引率(年利率) は3%とし、利益はいずれも年末に得られるものとする。

投資先1 年後2年後3年後4年後
A1800210100
B0180210100
C80100100210
D020080210
E1501300210

① 投資先A
② 投資先B
③ 投資先C
④ 投資先D
⑤ 投資先E

正解と解説

【正解①】
投資先Aの現在価値
180÷1.03+0/1.032+210÷1.033+100÷1.034 = 455.79万円

投資先Bの現在価値
0÷1.03+0/1.032+210÷1.033+100÷1.034 = 450.70万円

投資先Cの現在価値
80÷1.03+100/1.032+100÷1.033+210÷1.034 = 450.02万円

投資先Dの現在価値
0÷1.03+200/1.032+80÷1.033+210÷1.034 = 448.31万円

投資先Eの現在価値
150÷1.03+130/1.032+0÷1.033+210÷1.034 = 454.75万円

I-1-3 PMOKガイドに関する知識

プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK ガイド) 第6 版に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① プロジェクトとは、独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有期的な業務のことをいう。
② CPM は、プロジェクト・チームがプロジェクト目標を達成するために実行する作業の全範囲を階層的に分解したものである。
③ アクティビティ所要期間の見積りやコストの見積りに用いられる技法として、三点見積りやパラメトリック見積りがある。
④ ガントチャートは、スケジュール情報を視覚的に示す図の1 つであり、縦軸にアクティビティをリストアップし、横軸に時間軸をとる。
⑤ リスク対応の計画において、脅威に対処するために考慮され得る戦略として、回避、軽減、転嫁、受容などがある。

正解と解説

【正解②】

最も不適切なものは です。

② CPM は、プロジェクト・チームがプロジェクト目標を達成するために実行する作業の全範囲を階層的に分解したものである。
この記述は不正確です。CPM(Critical Path Method)は、プロジェクトのアクティビティの所要時間を考慮して、プロジェクトのスケジュールを管理する手法であり、特に重要なタスク(クリティカルパス)を特定するために使用されます。作業の全範囲を階層的に分解するのはWBS(Work Breakdown Structure)であり、CPMはスケジュールの管理手法に関するものです。

他の選択肢は適切な記述です:

⑤ リスク対応の計画に関する戦略についても正確な説明です。
設問の内容はCPMではなく、WBS (Work Breakdown Structure) の内容です。
CPMはCritical Path Methodの略で、プロジェクトの一連の活動をスケジューリングするための数学的アルゴリズムです。

① プロジェクトの定義については正しい内容です。

③ アクティビティ所要期間の見積りに関する技法についても正確です。

④ ガントチャートの説明も正しいです。

I-1-4 計画・管理における科学的・数理的手法

計画・管理における科学的・数理的手法に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

① 線形計画問題は、一般に、変数が整数値をとることを条件として加えると解くことが容易になる。
② 多目的最適化では、通常、パレート最適解がただ1 つ求まる。
③ ゲーム理論は、意思決定をする主体が複数存在する状況を数学的に取り扱う方法論であり、非協力ゲームと協力ゲームとに大きく分けることができる。
④ デルファイ法では、複数の参加者が、回覧されるシートに各自のアイデアを記入していくことで、1 人で考えながらも全員の協同作業でアイデアを広げていくことを目指す。
⑤ 階層化分析は、分析対象のすべてをいくつかの群に分ける手法であり、何らかの基準に従って似ているものが同じ群に入るように分類する。

正解と解説

【正解③】

① : 線形整数問題は、解が整数に限定されることで買いの導出が難しくなります。
② : 目的関数が「1つ」だけの最適化を単目的最適化、目的関数が複数ある最適化多目的最適化と呼びます。
④ : デルファイ法 とは、専門家を含むグループによりアンケート回答→集約→修正を繰り返し、意見を収斂させる手法です。
⑤ : 階層化分析は、多基準の選択問題があるとき、これを目標・評価基準・代替案の階層構造に整理したうえで、各階層における要素同士の相対的な重要度をシステマチックに導き出し、それらを総合することで最適な評価・選択を図る意思決定手法です。

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I-1-5 サプライチェーン途絶リスク対策

サプライチェーンの途絶リスクに対しては、一般に、途絶時の影響を検証し、投入コストと効果を考慮した日ごろの取組など、平常時の競争力と非常時のリスク対応の両立が求められる。
災害などの発生後、サプライヤからセットメーカに至るサプライチェーンの途絶に関して、そのロバストネスやレジリエンスの度合いを高め、 リスクの低減に寄与する事前方策として、次の記述のうち、最もそぐわないものはどれか。

① セットメーカによるすべてのサプライヤの情報の一元的把握
② サプライヤとセットメーカの協働による調達リードタイム・発注間隔の短縮
③ 利用可能な複数サプライヤによる代替供給体制の構築
④ サプライヤの工場に対するセットメーカによる支援体制の構築
⑤ セットメーカで使用する部品の共通化。標準化の推進

正解と解説

【正解②】
「調達リードタイム・発注間隔の短縮」はサプライチェーンの途絶対策にはつながりません。

I-1-6 標準原価計算の原価差異分析

標準原価計算の原価差異分析では、標準原価から実際原価を差し引いた差が原価差異として計算分析され、その目的は原価の管理に資することにある。原価差異は、その正負により、それぞれ有利差異及び不利差異と呼ばれる。参考のため、これらの原価差異分析でよく利用される分析概念図を下に示す。ここでは直接材料費と直接労務費を対象とした差異分析の例を取り上げる。

製造企業のA 社は、品目X について、次に示す標準原価を設定している。
a.標準直接材料費:標準単価は500 円/kg、標準消費量は1,000kg である。
b.標準直接労務費:標準賃率は1,000 円/時間、標準作業時間は500 時間である。

実際に発生した原価として、次に示す数値が得られた。
c.実際直接材料費:実際単価は450 円/kg、実際消費量は1,100kg であった。
d.実際直接労務費:実際賃率は1,200 円/時間、実際作業時間は400 時間であった。

なお、差異分析に当たっては、 a~ d に述べた事項以外の条件は考えないものとする。
直接材料費と直接労務費の原価差異分析に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 標準直接材料費及び標準直接労務費は、いずれも500,000 円である。
② 数量差異は-50,000 円(不利差異)である。
③ 賃率差異は-80,000 円(不利差異)である。
④ 直接材料費の差異は5,000 円(有利差異)である。
⑤ 直接労務費の差異は-20,000 円(不利差異)である。

正解と解説

【正解⑤】

工業簿記の基礎知識問題です。
直接労務費差異 = 標準賃率×標準作業時間-実際賃率×実際作業時間
       = 1000 ×500 – 1200 × 400

       = 20000 (有利差異)

よって、不利差異は誤りで、正しくは有利差異です。

I-1-7 財務諸表

財務諸表に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、ここでのキャッシュ・フロー計算書は間接法によるものとする。

① 損益計算書には、前期末から当期末までの期間において、銀行からの借入やその返済など、資産・負債を直接増減させる個別の取引が記載される。
② 貸借対照表には、前期末から当期末までの期間において、会社の現金の出入りに係わる個別の取引が記載される。
③ キャッシュ・フロー計算書には、前期末から当期末までの期間における収益・費用と資産・負債などの期末残高が記載される。
④ 減価償却費は、キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローにおいて、利益に加え戻されて記載される。
⑤ フリー・キャッシュ・フローは、キャッシュ・フロー計算書の投資活動によるキャッシュ・フローに財務活動によるキャッシュ・フローを加えたものである。

正解と解説

【正解④】

最も適切なものは です。

④ 減価償却費は、キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローにおいて、利益に加え戻されて記載される。
この記述は正しいです。減価償却費は、損益計算書では費用として計上されますが、キャッシュ・フロー計算書では、非現金支出であるため、営業活動によるキャッシュ・フローの計算の際に利益に加算されて戻されます。これにより、実際のキャッシュの流出を反映したキャッシュ・フローが算出されます。

他の選択肢は不適切です:

  • ① 損益計算書には、前期末から当期末までの期間において、銀行からの借入やその返済など、資産・負債を直接増減させる個別の取引が記載される。
    → 損益計算書には、収益と費用のみが記載され、借入や返済は記載されません。
  • ② 貸借対照表には、前期末から当期末までの期間において、会社の現金の出入りに係わる個別の取引が記載される。
    → 貸借対照表には、特定の期間の現金の出入りは記載されず、特定時点における資産・負債の残高が表示されます。
  • ③ キャッシュ・フロー計算書には、前期末から当期末までの期間における収益・費用と資産・負債などの期末残高が記載される。
    → キャッシュ・フロー計算書は、期間中のキャッシュの流入・流出を示し、期末残高は含まれません。
  • ⑤ フリー・キャッシュ・フローは、キャッシュ・フロー計算書の投資活動によるキャッシュ・フローに財務活動によるキャッシュ・フローを加えたものである。
    → フリー・キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを引いたものです。

I-1-8 機械設備の保全活動

機械設備の保全活動は、計画・点検・検査・調整・修理・取替などを含む設備のライフサイクル全般の観点から行われる。
保全活動を、設備の故障・不良を排除するための対策を講じたり、それらを起こしにくい設備に改善したりするための「改善活動」と、設計時の技術的側面を正常・良好な状態に保ち、効率的な生産活動を維持するための「維持活動」に分類するとすれば、次の組合せのうち最も適切なものはどれか。

改善活動維持活動
定期保全・保全予防予知保全・改良保全
改良保全・事後保全定期保全・予知保全
保全予防・改良保全事後保全・予防保全
改良保全・予知保全保全予防・事後保全
予防保全・事後保全改良保全・保全予防
正解と解説

【正解③】

保全活動は大きく、改善活動、維持活動の2つに分けることができます。それぞれ、次のような活動が存在します。

  • 改善活動:改良保全 保全予防
  • 維持活動:事後保全 定期保全 予知保全

I-1-9 高齢化社会に対応するための関係法令

高齢化社会の進展に伴い、関係法令が整備されてきた。いわゆる男女雇用機会均等法、高齢者雇用安定法等の諸法令に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

①事業主が、厚生年金の支給年齢の男女差と整合を図ることを理由として、男女で異なる定年を定めることは法令で禁じられている。
②65 歳以上の労働者は雇用保険の加入対象とならない。
③定年の定めを廃止した事業主は、定められた方法により年齢制限の理由を明らかにした場合に、65歳以下であることを条件として労働者の募集及び採用を行うことができる。
④継続雇用制度を導入している事業主は、定年退職者の希望に合致した条件で雇用を行う義務がある。
⑤継続雇用制度を導入している事業主は、継続雇用制度で雇用を希望する定年退職者を自己の子法人等に引き継いで雇用させてはならない。

正解と解説

【正解①】

②65歳以上も雇用保険に加入できます。
③年齢を条件にして募集及び採用活動はできません。
④継続雇用は、「定年退職者の希望に合致した条件」という義務はありません。
⑤「定年退職者を自己の子法人等に引き継いで雇用する」ことは可能です。

I-1-10 労働者のメンタルヘルスケア

労働者(高度プロフェッショナル制度適用者、研究開発業務従事者を除く)のメンタルヘルスケアやストレスチェックに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

①衛生委員会の設置が義務付けられている事業場においては、労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立について、衛生委員会が調査審議を行う。
②産業医の選任が義務付けられていない事業場においては、労働者へのストレスチェックは努力義務である。
③事業者は、法定労働時間を超えて労働した時間が月80時間を超えた労働者に対して、その超えた時間に関する情報を当該労働者に通知しなければならない。
④高ストレス者を選定するための選定基準は、医師等のストレスチェック実施者の意見等を踏まえ事業者が決定する。
⑤事業者は、ストレスチェックでは面接指導対象者として選定されなかった労働者に対しても、面接指導の申出に応じる義務がある。

正解と解説

【正解⑤】

最も不適切なものは です。

についての理由:
事業者は、ストレスチェックで面接指導対象者として選定されなかった労働者に対しても面接指導の申出に応じる義務はありません。面接指導は、ストレスチェックの結果に基づき、特定の基準を満たした高ストレス者に対して行われるものであり、対象外の労働者に対しては申出に応じる法的義務はないため、不適切な記述です。

他の選択肢はそれぞれ正しい内容を含んでいます:

  • 衛生委員会の設置が義務付けられている事業場での精神的健康の保持増進策の調査審議に関する内容は正しい。
  • 産業医の選任が義務付けられていない事業場でのストレスチェックが努力義務である点も正しい。
  • 法定労働時間を超えた労働者への情報通知義務についても正しい。
  • 高ストレス者の選定基準が医師等の意見を踏まえて事業者が決定することも正しいです。

I-1-11 障害者雇用促進法

いわゆる障害者雇用促進法に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

①事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して障害者でない者と均等な機会を与えなければならないとされており、障害者のみを対象とした求人は差別に当たる。
②雇用の義務や障害者雇用納付金制度の対象となる障害者とは、身体障害者、知的障害者、精神障害者(精神障害者保険福祉手帳の交付を受けている者に限る。)をいう。
③障害者雇用納付金制度では、民間企業に対して、常用雇用労働者数にかかわらず、法定雇用率未達成の企業から納付金を徴収し、法定雇用率を超えて雇用を行っている企業には調整金を支給している。
④国及び地方公共団体は、障害者雇用率について法令の定めはないが、障害者の採用に関する計画を作成しなければならない。
⑤障害者雇用率に関する労働者の算定に当たっては、パート、アルバイトは、常用雇用する労働者の総数に含まれない。

正解と解説

【正解②】

①障害者雇用促進法に、このような記述はありません。似たような文章として、第三十四条
“事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない。”とあります
③「常用雇用労働者数にかかわらず」は誤りです。正しくは、「常用雇用労働者数100 人以上の企業から」です。
④令和5年度からの障害者雇用率は2.7%です。ただし、雇入れに係る計画的な対応が可能となるよう、令和5年度においては2.3%で据え置き、令和6年度から2.5%、令和8年度から2.7%と段階的に引き上げることになっています。
⑤パート・アルバイトなどの短時間労働者は、1人あたり0.5人としてカウントします。

I-1-12 ダイバーシティ・マネジメント

企業経営におけるダイバーシティ・マネジメントとは、性別、人種、雇用形態などが異なる多様な人材を適材適所で活用することとされている。ダイバーシティ・マネジメントに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

①ダイバーシティ・マネジメントは企業内の差別の解消や人権の確立と密接な関係がある。
②ダイバーシティ・マネジメントの推進に当たっては、売上高等の業績に関する指標や生産性に関する指標などと連関させることは避けるべきである。
③ダイバーシティ・マネジメントは、労働力の量的な確保だけでなく質的確保という面からも重要である。
④ワークライフバランスを重視し働き方改革を進めることは、ダイバーシティ・マネジメントを推進する上で重要な施策である。
⑤人材の多様化により個人の評価を丁寧に行うことが必要となり、人材のきめ細かい評価と効果的な活用が行われることにつながる。

正解と解説

【正解②】

最も不適切なものは です。

についての理由:
ダイバーシティ・マネジメントの推進に当たっては、売上高や生産性などの業績指標と関連づけることは重要です。ダイバーシティが業績向上に寄与することが期待されるため、業績指標との連関を避けるべきではありません。むしろ、ダイバーシティの取り組みが企業の業績にどう影響しているかを測定することが、今後の改善や戦略的な取り組みにつながります。

他の選択肢はそれぞれ正しい内容です:

ダイバーシティ・マネジメントは企業内の差別の解消や人権の確立と関係がある。

ダイバーシティ・マネジメントは、労働力の量的・質的確保の両方に重要である。

ワークライフバランスを重視することは、ダイバーシティ・マネジメントの推進において重要な施策である。

人材の多様化により個人の評価を丁寧に行う必要があり、きめ細かい評価と効果的な活用が求められる。

I-1-13 ジョブローテーション

ジョブローテーションに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
①長期雇用を前提とする正職員よりも有期雇用の職員に対しての適用性が高い。
②職員の適性を重視して異動先を決めるシステムであるため、異動先の部署は適材適所の人材を得ることができる。
③特定分野の専門家などの、スペシャリストを育成するために適している。
④職務給制度を採用する企業においては導入が容易である。
⑤職員の、組織全体の業務に対する理解促進、環境変化への適応力向上などの効果が期待できる

正解と解説

【正解⑤】

ジョブローテーションとは、様々な業務経験を積ませるために、定期的な配置転換を行うことです。ジョブローテーションによって、従業員は在籍期間中に複数の部署を経験することができるため、俯瞰的に会社全体の業務内容や経営環境を知ることが可能となります。

このことから、①有期雇用職員よりも長期雇用向け、②異動先を決めるシステムではない、③スペシャリスト育成目的ではない、ということがわかります。

職務給制度は、仕事内容によって給与が決まる制度です。よって、仕事内容が変わると給与も変わるため、ジョブローテーションシステムの導入は難しくなります。

I-1-14 外国人技能実習制度

いわゆる技能実習法(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)に基づく外国人技能実習制度に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

①技能実習生を受け入れる企業は、実習生のグループ単位で、技能実習計画を作成しなければならない。
②技能実習生は、初年度に2 か月間の講習を受講することをもって、2 年度目以降の技能実習に進むことができる。
③技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。
④技能実習生の賃金は、使用者と実習生が最低賃金法による最低賃金を下回る賃金で合意し労働契約を締結した場合は、合意した額とすることができる 。
⑤技能実習生は、日本国内において最長10 年間の技能実習を受けることが可能である。

正解と解説

【正解③】

①技能実習計画はグループ単位ではなく、技能実習生ごとに作成しなければなりません。
②初年度の活動の6分の1以上の活動が必要です。
④最低賃金法第4条は適用され、最低賃金法を下回ると違法です。
⑤「最長10年間」は誤りで、正しくは「5年間」です。

I-1-15 能力開発手法

ある管理職が、次の(ア)~(オ)のような部下の能力開発について検討を行っている。それぞれの部下が経験する能力開発手法の組合せで、最も適切なものはどれか。

(ア)A 君は、仕事のやり方は概ね覚えたが、対人能力を高める必要があることから、当社と契約している教育機関のマンツーマントレーニングに参加させたい。
(イ)B 君には、将来海外部門で幹部となってほしいことから、まずは海外支店に異動させ、支店長の指導の下で、語学力向上も目指して海外業務を経験させたい。
(ウ)C 君は、事務処理能力は優れているが、企画能力は十分ではないため企画課に数か月預け、業務を手伝いながら学んでもらいたい。
(エ)D 君は、週に一度職務時間外の英語講座に通いたいと話していた。彼ができるだけ参加できるよう、その曜日の残業は配慮したい。
(オ)E 君には、問題解決能力を高めるために、ブレインストーミングの社内研修に参加してもらいたい。

OFF-JTOJTOJT自己啓発OFF-JT
OJT自己啓発OJTOFF-JTOFF-JT
OFF-JT自己啓発OFF-JT自己啓発OJT
OJTOFF-JTOJTOFF-JTOFF-JT
自己啓発OJTOJTOFF-JT自己啓発
正解と解説

【正解①】

「OJT」とは、英語の「On the Job Training」を略した言葉で、「職場内訓練」を意味します。代表的な人材育成の手法のひとつで、おもに先輩社員が新入社員の指導担当者として、実際の業務を行いながら仕事を学びます。

「Off-JT」とは、英語の「Off the Job Training」を略した言葉です。「職場外訓練」を意味し、実際の業務とは離れた場所で人材育成を行います。

例えば、講義などの集合研修や、業務時間中の書籍による学習、eラーニングが挙げられます。自己啓発」は、「Self Development」を略してSDとも呼ばれ、社員による自発的な学習を意味します。OJTやOff-JTとの大きな違いは、自発的に、業務時間外に実施する点です。

I-1-16 人的資源管理に関する用語

人的資源管理に関するA~D に示した用語について、それぞれの下にある(ア)、(イ)のうち、ふさわしい説明の組合せとして、最も適切なものはどれか。

A:コンピテンシー
(ア)組織の業績向上をもたらす適度な競争環境。
(イ)高い業績をあげている社員のもつ業績達成能力。

B:サーバントリーダーシップ
(ア)企業において上司の指示を正確に理解して行動する社員(サーバント)と、部下に 的確な指示を出すリーダーの最適な組合せにより高い効率を追求する経営哲学。
(イ)「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」というリーダーシップ哲学。

C :人事評価における「ハロー効果」
(ア)被評価者のある一点が優れているとほかの点も優れていると考えてしまうことにより生じる評価誤差。
(イ)評価者の身近で仕事をしている被評価者に対して個人的な親しみを感じることにより生じる評価誤差。

D:組織開発における「コンテント」と「プロセス」
(ア)「コンテント」は、組織において何が話され、何が取り組まれているか等のwhat の側面をいい、「プロセス」はどのように参加がなされ、どのように進められているか等のhow の側面をいう。
(イ)「コンテント」は、診断型組織開発を行う際に必要な調査項目をいい、「プロセス」はそのための手順をいう。

ABCD
正解と解説

【正解④】

A: コンピテンシー
正しい説明は(イ)です。コンピテンシーは高い業績をあげている社員の持つ能力や行動特性を指します。

B: サーバントリーダーシップ
正しい説明は(イ)です。サーバントリーダーシップは、リーダーが部下に奉仕することを重視するリーダーシップ哲学です。

C: 人事評価における「ハロー効果」
正しい説明は(ア)です。ハロー効果は、ある一点の優れた特性が他の評価にも影響を与える現象を指します。

D: 組織開発における「コンテント」と「プロセス」
正しい説明は(ア)です。コンテントは「何を」、プロセスは「どのように」という側面を指します。

I-1-17 知的財産の出願件数

我が国の2009 年から2018 年までの知的財産の出願件数に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① いわゆるPCT 国際出願の件数は、増加傾向を示しており、2018 年に過去最高を記録した。
② 特許出願件数(PCT 国際出願のうち国内移行したものを含む。)は、2009 年以降漸減傾向であったが、ここ数年、ほぼ横ばいで推移している。
③ 意匠登録の出願件数は、多少の増減を繰り返しながらほぼ横ばいで推移している。
④ 商標登録の出願件数は、 ここ数年、増加傾向が続いている。
⑤ 実用新案登録出願件数は、多少の増減はあるものの特許出願件数のほぼ1/6 で推移している。

正解と解説

【正解⑤】

実用新案登録出願数は特許出願数よりも少なく、約1/60で推移しています。よって、「1/6で推移している」は誤りです。

I-1-18 無人航空機に関する法律

無人航空機は、緊急時の情報収集をはじめとする様々な場面での活用が期待されている。無人航空機(航空法によるもの)を飛行させる際に順守すべき事項に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

① 無人航空機及びその周囲の目視による常時監視には、双眼鏡による常時監視や補助者による常時監視は含まれない。
② 屋内であっても人口集中地区は航空法の規制対象となるので、他の条件によらず飛行に国土交通大臣の許可が必要となる。
③ 無人航空機を用いて農薬を散布する場合には、国土交通大臣の承認は必要ない。
④ 無人航空機の操縦や画像伝送に利用する無線通信システムは電波法令の規制対象外となるので、使用する周波数と送信出力によらず飛行に無線技士の資格は必要ない。
⑤ 無人航空機を用いて計測機器を設置する場合には、他の条件によらず国土交通大臣の承認が必要となる。

正解と解説

【正解①】

ドローンに関する規制内容は、こちらのページにまとめられています。

ドローンの規制内容と許可基準
飛行の方法に関する規制 ドローンの規制と許可について説明します。ドローンのご相談は、中野・杉並行政書士事務所へお尋ねください(全国対応)。

無人航空機の飛行に関する記述の中で、最も適切なものは です。

以下に各選択肢の説明を示します:

無人航空機及びその周囲の目視による常時監視には、双眼鏡による常時監視や補助者による常時監視は含まれない。

  • 適切:無人航空機の飛行にあたっては、操縦者が無人航空機とその周囲を目視で確認することが求められますが、双眼鏡や補助者による監視はこの要件に含まれません。

屋内であっても人口集中地区は航空法の規制対象となるので、他の条件によらず飛行に国土交通大臣の許可が必要となる。

  • 不適切:屋内での飛行については、通常、人口集中地区であっても航空法の対象外となります。

無人航空機を用いて農薬を散布する場合には、国土交通大臣の承認は必要ない。

  • 不適切:無人航空機を使用して農薬を散布する場合、国土交通大臣の承認が必要です。

無人航空機の操縦や画像伝送に利用する無線通信システムは電波法令の規制対象外となるので、使用する周波数と送信出力によらず飛行に無線技士の資格は必要ない。

  • 不適切:無線通信システムは電波法令の規制対象であり、無線技士の資格が必要です。

無人航空機を用いて計測機器を設置する場合には、他の条件によらず国土交通大臣の承認が必要となる。

  • 不適切:特定の条件によっては承認が不要な場合もあります。

したがって、最も適切な記述は です。

I-1-19 MTBFから見た信頼性

ある会社では、 2 機種(機種A、機種B)のサーバを使用しており、いずれの機種のカタログにもMTBF(平均故障間隔)は1,000 時間と記載されている。使用しているすべてのサーバの運用開始から現時点までの総稼働時間、総修理時間、故障件数を調べ、機種ごとに集計したところ下表が得られた。MTBF の観点から見た、機種A と機種B の信頼性に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

表 機種A、機種B の総稼働時間、総修理時間、故障件数
総稼働時間 総修理時間 故障件数
機種A 1,093,800 時間 121,040 時間 987 件
機種B 1,148,300 時間 114,720 時間 1,283 件

① 機種A、機種B の信頼性は、 ともにカタログ値を下回る。
② 機種A の信頼性はカタログ値を上回るが、機種B の信頼性はカタログ値を下回る。
③ 機種A、機種B の信頼性は、 ともにカタログ値と一致する。
④ 機種A の信頼性はカタログ値を下回るが、機種B の信頼性はカタログ値を上回る。
⑤ 機種A、機種B の信頼性は、 ともにカタログ値を上回る。

正解と解説

【正解②】

MTBF = (総稼働時間) / (故障件数)

で定義されます。それぞれのMTBFは次のように求まります。

故障件数総修理時間故障件数MTBF
機種A1,093,800 時間121,040 時間987 件1,108
機種B1,148,300 時間114,720 時間1,283 件895

I-1-20 統計手法

統計手法を適用した以下の事例の(ア)~ (エ)について、それぞれ用いられた手法の組合せとして、最も適切なものはどれか。

(ア) 不規則変動が激しい時系列データの傾向を読みやすくするため、一定の期間ごとにずらしながら平均をとった。
(イ) 時系列データの基準時点に対しての変化の大きさを読みやすくするため、基準時点の値を100 とした相対値でデータを表した。
(ウ) 2 つの異なる変数x、yの関係を見るため、横軸をx、縦軸をyとする散布図を描いた。
(エ) 分析結果に基づいて変数yの将来の値を予測するため、変数xを用いて変数yを表す予測式を求め
た。

調和平均指数化因子分析主成分分析
移動平均指数化因子分析回帰分析
移動平均正規化相関分析主成分分析
移動平均指数化相関分析回帰分析
調和平均正規化因子分析主成分分析
正解と解説

【正解④】

(ア) 不規則変動が激しい時系列データの傾向を読みやすくするため、一定の期間ごとにずらしながら平均をとった。
これは「移動平均」の手法です。

(イ) 時系列データの基準時点に対しての変化の大きさを読みやすくするため、基準時点の値を100 とした相対値でデータを表した。
これは「指数化」の手法です。

(ウ) 2 つの異なる変数x、yの関係を見るため、横軸をx、縦軸をyとする散布図を描いた。
これは「相関分析」の一部です。散布図を描くことで、2変数間の関係を視覚的に確認できます。

(エ) 分析結果に基づいて変数yの将来の値を予測するため、変数xを用いて変数yを表す予測式を求めた。
これは「回帰分析」の手法です。

指数化:任意の基準時点の数値を100や10,000などの数値(基準値)に置き換え、各数値の動きを基準値からの変化で表すことで、変化の割合をわかりやすくする手法です。

I-1-21 Society5.0

政府が推進するSociety5.0 によって新たに実現される社会等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① Society5.0 とは、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、人類社会発展の歴史における5 番目の新しい社会を指す。
② Society5.0 では、IoT で、人とモノがつながり様々な知識や情報が共有されることで新たな価値が生まれ、また、人工知能により必要な情報が必要な時に提供されるようになる。
③ Society5.0 の新たなしくみでは、サイバー空間に存在するクラウドサービスにフィジカル空間にいる人間がアクセスし自ら情報を解析することで価値が生まれる。
④ Society5.0 では、イノベーションで創出される新たな価値により、格差なく、多様なニーズにきめ細かな対応が可能となり、社会システム全体が最適化され 、経済発展と社会的課題の解決が両立できる社会となる。
⑤ Society5.0 では、人工知能やロボットに支配され監視されるような未来ではなく、誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる人間中心の社会を実現していく。

正解と解説

【正解③】

① 適切です。Society 5.0は、これまでの社会発展の段階に続く5番目の社会として位置づけられています。

② 適切です。Society 5.0ではIoTや人工知能の活用により、新たな価値創造や情報提供が行われます。

③ 不適切です。Society 5.0では、サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合し、人間が自ら情報を解析するのではなく、AIなどの技術が自動的に必要な情報を分析・提供します。

④ 適切です。Society 5.0は、経済発展と社会的課題の解決の両立を目指し、多様なニーズに対応できる社会システムの最適化を目指しています。

⑤ 適切です。Society 5.0は人間中心の社会を目指しており、技術に支配されるのではなく、技術を活用して人々の生活の質を向上させることを目的としています。

したがって、最も不適切なものは ③ です。
Society 5.0では、人間が自らサイバー空間の情報を解析するのではなく、AIやビッグデータ解析などの技術が自動的に情報を処理し、必要な情報や解決策を提供することが想定されています。これにより、人間の負担を軽減し、より効率的で高度な社会システムの実現を目指しています。

I-1-22 オプトインとオプトアウト

個人情報の保護に関する法律における個人情報の第三者への提供に関する本人の同意を確認する方法として、オプトインとオプトアウトの2 種類の手続がある。これらの手続に関する次の記述のう、最も不適切なものはどれか。

① オプトイン手続により、個人データの第三者への提供に関して、あらかじめ本人から同意を得た場合、この同意に基づき個人データを第三者に提供できる。
② オプ卜イン手続により個人データを第三者に提供しようとする者は、オプトイン手続を行っていること等を個人情報保護委員会へ届け出ることが必要である。
③ オプトアウト手続では、第三者に提供される個人データの項目等について、あらかじめ、本人に通知するか、文は本人が容易に知り得る状態に置く必要がある。
④ オプトアウト手続の届出義務の主な対象者は、いわゆる名簿業者であり、名簿業者以外の事業者の場合、届出が必要となるかどうかは個別の判断となる。
⑤ 要配慮個人情報の取得や第三者への提供には、原則として本人の同意が必要であり、オプトアウト手続による第三者提供は認められていない。

正解と解説

【正解②】

個人情報の保護に関する法律におけるオプトインとオプトアウトの手続きについて、各記述の正確性を評価します。

オプトイン手続により、個人データの第三者への提供に関して、あらかじめ本人から同意を得た場合、この同意に基づき個人データを第三者に提供できる。

  • 適切。オプトインでは、本人の明示的な同意が必要です。

オプトイン手続により個人データを第三者に提供しようとする者は、オプトイン手続を行っていること等を個人情報保護委員会へ届け出ることが必要である。

  • 不適切。オプトイン手続を行っていることの届け出は、法律上必要ありません。届け出義務があるのはオプトアウト手続の場合です。

オプトアウト手続では、第三者に提供される個人データの項目等について、あらかじめ、本人に通知するか、または本人が容易に知り得る状態に置く必要がある。

  • 適切。オプトアウトでは、提供されるデータの情報を事前に本人に通知する必要があります。

オプトアウト手続の届出義務の主な対象者は、いわゆる名簿業者であり、名簿業者以外の事業者の場合、届出が必要となるかどうかは個別の判断となる。

  • 適切。名簿業者は届出義務があり、他の事業者については状況に応じて判断が必要です。

要配慮個人情報の取得や第三者への提供には、原則として本人の同意が必要であり、オプトアウト手続による第三者提供は認められていない。

  • 適切。要配慮個人情報については、本人の同意が必要であり、オプトアウトによる提供は認められません。

したがって、最も不適切なものは です。

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I-1-23 機械学習によるデータ活用のプロセス

機械学習によるデータ活用のプロセスを表した以下の図の(ア)~(エ)に 該当する用語の組
合せとして、最も適切なものはどれか。

学習前処理モデル推論
テスト可視化データセット推論
テスト前処理モデル拡張
学習可視化データセット推論
学習可視化モデル拡張
正解と解説

【正解①】

機械学習の大まかな流れを理解しておきましょう。

(出典)総務省「AIネットワーク社会推進会議AI経済検討会」資料を基に作成

I-1-24 暗号方式とデジタル署名

インターネットのプロトコルなどで用いられている暗号方式やデジタル署名に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、以下において、「メッセージ」は送信者から受信者に伝達したい通信内容(平文)、「ダイジェスト」はセキュアハッシュ関数を用いてメッセージを変換して生成した固定長のビット列のことをそれぞれ指す。

① 暗号通信では、暗号方式が同一であれば、用いられる鍵を長くすると安全性は向上するが、暗号化と復号が遅くなるという欠点がある。
② 共通鍵暗号方式による暗号通信では、送信者によるメッセージの暗号化と受信者による暗号文の復号に同じ鍵が用いられることから、送信者と受信者が同一の鍵を共有する必要がある。
③ 公開鍵暗号方式による暗号通信では、送信者が生成した公開鍵を用いてメッセージを暗号化したうえで送信し、受信者は秘密鍵を用いて復号する。
④ デジタル署名では、送信者が生成した秘密鍵を用いてメッセージに対するダイジェストを暗号化したうえで送信し、受信者は公開鍵を用いて復号する。
⑤ デジタル署名により、メッセージが改ざんされていないこととダイジェストを生成した人が確かに署名者であることを確認できるが、メッセージの機密性は確保できない。

正解と解説

【正解③】

公開鍵暗号方式では、受信者が公開鍵と秘密鍵を生成し、公開鍵を公開します。

暗号方式には、共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式の2種類があります。

①共通鍵暗号方式
– 暗号化(送信側)と複合(受信側)が同じ鍵を使用する。
– 通信接続先ごとに共通鍵を生成する必要があり、鍵交換を盗聴されずに行う必要がある。
②公開鍵暗号方式
– 暗号化に使用する鍵を公開鍵、復号に使用する鍵を秘密鍵と呼ぶ。
1. 受信者 : 公開鍵と秘密鍵を生成する
2.受信者 : 公開鍵だけを送信側の暗号鍵として公開
3. 送信者 : 公開鍵を使用して暗号化
4. 受信者 : 暗号化されたデータを秘密鍵で復号

I-1-25 システム安全工学手

次のA~D のシステム安全工学手法と、その特徴の説明である(ア)~(エ)の組合せとして、最も適切なものはどれか。

A:VTA
B:FTA
C:FMEA
D:ETA

(ア)作業がすべて通常どおりに進行していれば事故は起こらないとの考えの下で、通常から逸脱した操作や判断、その結果としての状態を時間軸に沿って分析する。
(イ)頂上事象の発生に必要な条件と要因の因果関係を明らかにし、それをツリー状に展開して表現する。
(ウ)初期事象がいろいろな経路をたどり、最終的にどのような事象にまで進展するのかを明らかにする。
(エ)システムの構成要素ごとに固有の故障モードを同定し、それらの故障モードが発生したときのシステムに及ぼす影響を分析する。

ABCD
正解と解説

【正解④】

各システム安全工学手法(A~D)とその特徴(ア~エ)の組み合わせを考察します。

各手法の説明

  • A:VTA (Verification and Validation Techniques)
    VTAは通常のプロセスからの逸脱や異常を分析します。
  • B:FTA (Fault Tree Analysis)
    FTAは頂上事象の発生に必要な条件や要因をツリー状に展開して、因果関係を明らかにします。
  • C:FMEA (Failure Mode and Effects Analysis)
    FMEAはシステムの各構成要素における故障モードを同定し、その影響を分析します。
  • D:ETA (Event Tree Analysis)
    ETAは初期事象がどのように進展し、最終的な事象に至るのかを分析します。

各特徴の説明

  • (ア) 作業がすべて通常どおりに進行していれば事故は起こらないとの考えの下で、通常から逸脱した操作や判断、その結果としての状態を時間軸に沿って分析する。
  • VTA(A)
  • (イ) 頂上事象の発生に必要な条件と要因の因果関係を明らかにし、それをツリー状に展開して表現する。
  • FTA(B)
  • (ウ) 初期事象がいろいろな経路をたどり、最終的にどのような事象にまで進展するのかを明らかにする。
  • ETA(D)
  • (エ) システムの構成要素ごとに固有の故障モードを同定し、それらの故障モードが発生したときのシステムに及ぼす影響を分析する。
  • FMEA(C)

組合せ

この情報をもとに、最も適切な組合せを見つけます。

  • ①エイアウ:FMEA(エ)、VTA(ア)、ETA(ウ)
  • ②エウアイ:FMEA(エ)、ETA(ウ)、FTA(イ)
  • ③ウアイエ:ETA(ウ)、VTA(ア)、FMEA(エ)
  • ④アイエウ:VTA(ア)、FMEA(エ)、ETA(ウ)
  • ⑤アウエイ:VTA(ア)、ETA(ウ)、FTA(イ)

正しい組合せ

  1. VTA(ア)
  2. FTA(イ)
  3. FMEA(エ)
  4. ETA(ウ)

したがって、正しい組合せは ④アイエウ です。

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I-1-26 労働者派遣事業と請負により行われる事業

労働者派遣事業と請負により行われる事業について、その区分や労働安全に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

① 労働者派遣事業と請負により行われる事業とでは、労働者の安全衛生の確保に関して、雇用主、派遣先事業主、注文主が負うべき責任が異なる。
② 元方事業者は、関係請負人に対して労働安全衛生法に基づく必要な指導を行うが、関係請負人の労働者へは指導してはならない。
③ 総括安全衛生管理者の選任に係る事業場の規模を算定するための労働者数に関して、派遣労働者は、派遣先あるいは派遣元のいずれか一方の事業者において算入される。
④ 派遣先事業者は、雇入れ時の安全衛生教育、一般健康診断の実施等の労働安全衛生法上の措置を講じなければならない。
⑤ 派遣元事業者は、派遣労働者が派遣先において一定の危険又は有害な業務に従事するときは、当該派遣労働者に対し、必要な特別教育を行わなければならない。

正解と解説

【正解①】

元方事業者:事業の仕事の一部を請負人に請け負わせている事業者のこと。
関係請負人:元方事業者から仕事を請け負っている請負人のこと

  • 安全管理者の選任と、安全委員会の設置の義務は、「派遣先」のみに課せれる
    →派遣労働者は、派遣先事業者にのみ算入される
  • 総括安全衛生管理者・衛生管理者・産業医・衛生委員会、安全衛生推進者は、「派遣先」「派遣元」双方に課される
    →派遣労働者は、派遣元事業者及び派遣先事業者の双方に算入される

②:元方事業者は、関係請負人の労働者の指導をおこなう (労働安全衛生法第29条第1項)
③:派遣元事業者及び派遣先事業者の双方の労働者の数に含める。
④:雇い入れ時の安全衛生教育、一般健康診断、ストレスチェックなどは、派遣元事業者の責務です。
⑤:特別教育は、派遣先事業者の責務です。

I-1-27 技術の安全

技術の安全に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 定格出力が80w を超える産業用ロボットにおいては、労働安全衛生法で定められた危険性等の調査に基づく措置を実施し、危険のおそれが無くなったと評価できるときは、人との協働作業が可能である 。
② 患者と一体となって運動する機能回復ロボッ卜の安全性については、国際標準が発行されたことから、我が国の先端医療技術の国際市場への導入促進が期待されている。
③ AI によって多くの社会システムが自動化され安全性が向上する一方で、新たなりスクも生じることから、社会はAI のベネフィットとリスクのバランスに留意する必要がある。
④ 遠隔型自動運転システムの公道実証実験において、一定の基準を満たす場合には、1 名の遠隔監視・操作者が複数台の実験車両を走行させることができる 。
⑤ IoT 機器では、サイバー攻撃を受けた場合にその影響が当該機器にとどまるため、他の関連するIoTシステムやIoT サービスへの波及を回避できる。

正解と解説

【正解⑤】

技術の安全に関する記述の中で、最も不適切なものを検討します。

定格出力が80Wを超える産業用ロボットにおいては、労働安全衛生法で定められた危険性等の調査に基づく措置を実施し、危険のおそれが無くなったと評価できるときは、人との協働作業が可能である。

  • 適切:労働安全衛生法では、危険が無くなった場合、人との協働作業が可能とされています。

患者と一体となって運動する機能回復ロボットの安全性については、国際標準が発行されたことから、我が国の先端医療技術の国際市場への導入促進が期待されている。

  • 適切:国際標準が発行されることで、安全性が確保され、導入促進が期待されることは妥当です。

AIによって多くの社会システムが自動化され安全性が向上する一方で、新たなリスクも生じることから、社会はAIのベネフィットとリスクのバランスに留意する必要がある。

  • 適切:AIの導入によりリスクとベネフィットが存在することは広く認識されています。

遠隔型自動運転システムの公道実証実験において、一定の基準を満たす場合には、1名の遠隔監視・操作者が複数台の実験車両を走行させることができる。

  • 適切:一定の基準を満たせば、遠隔監視・操作者が複数台を監視することが可能です。

IoT機器では、サイバー攻撃を受けた場合にその影響が当該機器にとどまるため、他の関連するIoTシステムやIoTサービスへの波及を回避できる。

  • 不適切:IoT機器がサイバー攻撃を受けた場合、その影響が他のシステムやサービスに波及する可能性があるため、この記述は誤りです。

結論

最も不適切なものは です。この選択肢は、IoT機器がサイバー攻撃を受けた場合の影響範囲に関して誤解を招く内容です。

I-1-28 信頼性

ある地域では、主要な電源が三系統あり、そのいずれかが稼働していれば停電を免れることがで
きる。また、それとは別に、予備の緊急電源が2 台準備されており、主要電源が三系統すべて稼働を
止めた場合であっても、その際に起動要求を受ける緊急電源が2 台とも稼働すれば停電を避けられ
る。主要電源の1 つが稼働を止める確率はそれぞれp であり、緊急電源1 つ当たりの起動要求時の故
障確率はいずれもq である。それぞれの電源の稼働停止や故障などの事象は互いに独立であるとする
とき、この地域で停電が発生する確率は、 次のうちどれか。

① p3q2
② p3(1-q)2
③ (1-p)3q2
④ p3{1-(1-q)2}
⑤ {1-(1-p)3}q2

正解と解説

【正解④】

STEP
正常時のシステムを図式化する

正常時のシステムはこのように表すことができます。
正常時は、緊急電源の存在はシステムの信頼度や故障率に関与しません。

主要電源すべてが故障すると、緊急電源が動作します。

STEP
並列でつながれた3つの主要電源を一つにまとめます
STEP
並列でつながれた2つの緊急電源を一つにまとめます。
STEP
主要電源と緊急電源を「全主要電源故障時の電源系統」として一つにまとめます。

I -1 -29 リスクコミュニケーション

リスクコミュニケーションに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

①地城社会において一般市民とともに潜在的な問願を掘り起こしてリスクのより適切なマネジメントにつなげていくことは、リスクコミュニケーションの目的の1 つである。
②津波防災教育として、想定されている水域への思い込みなどが避難行動の障害とならないように、津波対処への主体的な姿勢を身につけることを促すことは、リスクコミケーションの取組の1 つである。
③リスクコミュニケーションは、ステークホルダー間の異なる意見や価値観を一致させ、1 つの結論を導き出すことを可能にするための手段と考えられる。
④技術士などの専門家が、難解な専用語を避け、データの意味や不確実性の程度、蓋然性の高いシナリオなどを伝える努力をすることは、リスクコミュニケーションの一環である。
⑤技術士などの専門家が媒介機能を担う場合、特定のステークホルダーの利害によらない科学的な根拠に基づいた独立性のある発信をすることが求められている。

正解と解説

【正解③】

この質問に答えるために、リスクコミュニケーションの本質と目的を理解し、各選択肢を評価する必要があります。

① 適切です。リスクコミュニケーションの重要な目的の一つは、潜在的な問題を特定し、より効果的なリスク管理につなげることです。

② 適切です。防災教育を通じて主体的な姿勢を身につけさせることは、リスクコミュニケーションの重要な取り組みの一つです。

③ 不適切です。リスクコミュニケーションの目的は、意見や価値観を一致させることではなく、異なる意見や価値観を持つステークホルダー間の対話と相互理解を促進することです。

④ 適切です。専門家が複雑な情報をわかりやすく伝えることは、効果的なリスクコミュニケーションの重要な要素です。

⑤ 適切です。リスクコミュニケーションにおいて、専門家には科学的根拠に基づいた独立性のある情報提供が求められます。

したがって、最も不適切なものは ③ です。リスクコミュニケーションは、異なる意見や価値観を一致させることを目的とするのではなく、むしろ多様な視点を尊重しながら、相互理解と情報共有を促進することを目的としています。一つの結論を導き出すことを可能にする手段というよりも、リスクに関する情報や認識を共有し、より良い意思決定や対策立案につなげるためのプロセスです。

I-1-30 リスク認知におけるバイアスの種類

リスク認知におけるバイアスの種類とその説明である(ア)~(オ)の組合せとして、最も適切なものはどれか。

(ア) 極めてまれにしか起きないが被害規模が巨大な事象に対して、 そのリスクを過大視する傾向のことである。
(イ) ある範囲内であれば、異常な兆候があっても正常なものとみなしてしまう傾向のことである。
(ウ) 経験が豊富であることで、異常な兆候を過小に評価してしまう傾向のことである。
(エ) 経験したことのない事象について、そのリスクを過大若しくは過少に評価してしまい、合理的な判断ができない傾向のことである。
(オ) 異常事態をより明るい側面から見ようとする傾向のことである。

カタストロフィーバイアスバージンバイアス正常性バイアス楽観主義バイアスベテランバイアス
正解と解説

【正解⑤】

リスク認知におけるバイアスの種類とその説明を正しく対応させると、以下のようになります:

(ア) カタストロフィーバイアス:極めてまれにしか起きないが被害規模が巨大な事象に対して、そのリスクを過大視する傾向。

(イ) 正常性バイアス:ある範囲内であれば、異常な兆候があっても正常なものとみなしてしまう傾向。

(ウ) ベテランバイアス:経験が豊富であることで、異常な兆候を過小に評価してしまう傾向。

(エ) バージンバイアス:経験したことのない事象について、そのリスクを過大若しくは過少に評価してしまい、合理的な判断ができない傾向。

(オ) 楽観主義バイアス:異常事態をより明るい側面から見ようとする傾向。

これらの対応関係を選択肢と照らし合わせると、最も適切な組み合わせは ⑤ アエイオウ となります。

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I-1-31 安全文化の考え方

安全文化という考え方についての次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

①安全文化という考えは、チェルノブイリ原発事故の原因調査をきっかけとして生まれたものであり、当時の原子力安全の考え方や意識そのものへの問題提起であった。
②組織においては、自己のエラーやミスを自ら報告することは難しいので、厳格な検査や監査による他者の指摘を重視する雰囲気を熟成する必要がある。
③組織においては、緊急時にトップの判断が常に正しいとは限らないので、一時的に専門家に権限委譲するといった柔軟性も必要である。
④粗織においては、改善すべきことを正しく認識し、改華を実行していくための意思と能力を持つ必要がある。
⑤組織においては、 公正さを保つため、 許容できる行動と許容できない行動を繰引きし、皆が合意する必要がある。

正解と解説

【正解②】

① 適切です。安全文化の概念は、チェルノブイリ原発事故の調査後に提唱され、原子力安全に対する従来の考え方や意識を見直す契機となりました。

② 不適切です。安全文化では、自己のエラーやミスを自ら報告する「報告する文化」が重要とされています。厳格な検査や監査による他者の指摘を重視するのではなく、組織メンバーが自発的に問題を報告できる環境を作ることが求められます。

③ 適切です。安全文化では、状況に応じて適切な判断ができる柔軟性が重要です。緊急時には専門家に権限を委譲するなど、状況に応じた対応が必要です。

④ 適切です。安全文化では、継続的な改善が重要な要素です。組織が問題を認識し、改善を実行する能力と意思を持つことは、安全文化の核心的な部分です。

⑤ 適切です。安全文化において、許容できる行動と許容できない行動を明確に区別し、組織全体で合意することは重要です。これは「公正な文化」の一部であり、安全文化の重要な要素です。

したがって、最も不適切なものは ② です。安全文化では、厳格な検査や監査による他者の指摘を重視するのではなく、組織メンバーが自発的に問題を報告できる「報告する文化」を醸成することが重要です。この選択肢は安全文化の基本的な考え方と矛盾しています。

「厳格な検査や監査による他者の指摘を重視する」が誤りです。個人的なエラーやヒヤリハット事例、組織にとって望ましくないと思われる情報等を懸念なく報告できる雰囲気が職場づくりの醸成が望まれます。

I-1-32 長期使用製品安全点検制度

平成19 年2 月の小型ガス湯沸器に係る死亡事故等を背景として、消費生活用製品安全法に基づく長期使用製品安全点検制度が設けられた。本制度は、「特定保守製品(9 品目が定められている。)を購入した所有者が所有者登録することで、メーカー等からの点検時期の通知によって点検を受け、経年劣化による製品事故を未然に防止するための制度である。次の機器(ただし、家庭用として一般に市販されているものとする。)のうち、「特定保守製品」として最も適切なものはどれか。

①ビルトイン式の電気食器洗機
②ガスで沸かした温水を利用するタイプの浴室用乾燥機
③屋外式のガス用瞬間湯沸器
④屋内空気を使って燃焼する開放式の石油温風暖房機
⑤スチーム式の加湿器

正解と解説

【正解①】

この質問に答えるために、特定保守製品の定義と対象品目を理解する必要があります。

特定保守製品は、長期間の使用に伴い生ずる劣化(経年劣化)により安全上支障が生じ、一般消費者の生命または身体に対して特に重大な危害を及ぼすおそれが多いと認められる消費生活用製品です。

9品目の特定保守製品は以下の通りです:

  1. ビルトイン式電気食器洗機
  2. 浴室用電気乾燥機
  3. 密閉燃焼式石油温風暖房機
  4. 石油給湯機
  5. 石油ふろがま
  6. ガス瞬間湯沸器(都市ガス用、LPガス用)
  7. ガスふろがま(都市ガス用、LPガス用)
  8. ガス温風暖房機(都市ガス用、LPガス用)
  9. ガス給湯付ふろがま(都市ガス用、LPガス用)

選択肢を検討すると:

① ビルトイン式の電気食器洗機 – これは特定保守製品の一つです。
② ガスで沸かした温水を利用するタイプの浴室用乾燥機 – これは特定保守製品ではありません。
③ 屋外式のガス用瞬間湯沸器 – これは特定保守製品ではありません(屋内式が対象)。
④ 屋内空気を使って燃焼する開放式の石油温風暖房機 – これは特定保守製品ではありません(密閉燃焼式が対象)。
⑤ スチーム式の加湿器 – これは特定保守製品ではありません。

したがって、特定保守製品として最も適切なものは ① ビルトイン式の電気食器洗機 です。

I-1-33 気候変動適応法や気候変動適応計画

気候変動適応法や気候変動適応計画に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 政府には、気候変動適応計画を策定する義務があり、都道府県には、その区域における地域気候変動適応計画を策定する努力義務がある。
② 気候変動適応に関する施策を推進するため、国及び地方公共団体の責務が定められるとともに、事業者及び国民に対して、国及び地方公共団体が進める施策に協力することが求められている。
③ 気候変動適応計画は、我が国唯一の地球温暖化に関する総合計画であり、主な内容として、国内の温室効果ガスの排出削減目標と目標達成のための対策が取りまとめられている。
④ 国立研究開発法人国立環境研究所が果たすべき役割として、気候変動影響及び気候変動適応に関する情報の収集、整理、分析などを行うことが定められている。
⑤ 気候変動適応に関する施策の効果の把握・評価については、適切な指標設定の困難さや効果の評価に長期間を要することもあり、諸外国においても具体的な手法は確立されていない

正解と解説

【正解③】

① 適切です。気候変動適応法では、政府に気候変動適応計画の策定を義務付け、都道府県には地域気候変動適応計画の策定を努力義務としています。

② 適切です。法律は国と地方公共団体の責務を定め、事業者と国民に協力を求めています。

③ 不適切です。気候変動適応計画は温室効果ガスの排出削減を主な目的とする計画ではありません。これは気候変動の影響への適応に焦点を当てた計画です。温室効果ガス排出削減目標は、別の計画(例:地球温暖化対策計画)で扱われます。

④ 適切です。国立環境研究所の役割として、気候変動影響と適応に関する情報の収集、整理、分析が定められています。

⑤ 適切です。気候変動適応策の効果評価は複雑で、適切な指標設定が困難であり、長期的な観察が必要です。多くの国でも具体的な評価手法は確立されていません。

したがって、最も不適切なものは ③ です。気候変動適応計画は、温室効果ガスの排出削減ではなく、気候変動の影響への適応に焦点を当てた計画です。この記述は気候変動適応計画の目的と内容を誤って説明しています。

地域気候変動適応計画
– 都道府県や市町村等が主体となって、その区域における自然的、経済的、社会的状況に応じた気候変動適応に関する施策を推進するための計画

I-1-34 生物多様性の保全

生物多様性の保全に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

① いわゆる種の保存法による個体の取扱い規制や生息地の保護など、保全に必要な措置の対象となる圏内希少野生動植物種は、環境省のレッドリストに掲載された野生動植物種と一致している。
② いわゆるラムサール条約は、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地を対象としており、人工のものや一時的なものは含まれない。
③ いわゆるワシントン条約は、絶滅のおそれのある野生動植物の保護を目的としているが、絶滅のおそれの程度に応じて、条件が整えば学術目的や商業目的のための国際取引 は可能である。
④ 産業構造の変化等に伴う里山林などの資源利用の減少は、我が国全体として、里地里山における生物多様性の質と量の両面での向上につながるものと期待されている。
⑤ いわゆる外来生物法における特定外来生物には、生きている個体及びその器官に限らず、死んだ個体も含まれる。

正解と解説

【正解③】

①「圏内希少野生動植物種は、環境省のレッドリストに掲載された野生動植物種と一致」が誤り。一致していない。

②ラムサール条約では、「湿地とは、天然のものであるか人工のものであるか、永続的なものであるか一時的なものであるかを問わず、更には水が滞っているか流れているか、淡水であるか汽水であるか鹹水(海水)であるかを問わず、沼沢地、湿原、泥炭地又は水域をいい、低潮時における水深が6メートルを超えない海域を含む」と定義しています。

④里山林などの資源利用の減少は、地盤がもろくなったり、野生動物の侵入が発生したりなどの問題が増加につながります。

⑤外来生物法における特定外来生物には、「死んだ個体」は含まれません。

I-1-35 プラスチック資源循環戦略

第四次循環型社会形成推進基本計画を踏まえ、令和元年5 月に策定されたプラスチック資源循環戦略に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 可燃ごみ指定収集袋など、焼却せざるを得ないプラスチックには、カーボンニュートラルであるバイオマスプラスチックを最大限使用し、かっ確実に熱回収する。
② 一度使用した後にその役目を終えるプラスチック製容器包装・製品が不必要に使用・廃棄されないよう、レジ袋の有料化を義務化することなどにより、消費者のライフスタイルの変革を促す。
③ 分別・選別されるプラスチック資源の品質 ・性状等に応じて、材料リサイクル、ケミカルリサイクル、熱回収を最適に組み合わせることで、 資源有効利用率の最大化を図る。
④ 海洋プラスチック対策としては、マイクロプラスチックの海洋への流出の抑制に加え、海洋生分解性プラスチックなど海で分解される素材の開発・利用を進める。
⑤ 廃プラスチックについては、我が国のリサイクルや熱回収の技術を導入したアジア各国と連携して処理するなど、グローバル戦略により対応する。

正解と解説

【正解⑤】

① 適切です。バイオマスプラスチックの使用と確実な熱回収は戦略の一部です。

② 適切です。レジ袋の有料化義務化を含む消費者のライフスタイル変革は戦略の重要な要素です。

③ 適切です。プラスチック資源の最適なリサイクル方法の組み合わせは戦略の一環です。

④ 適切です。マイクロプラスチック対策と海洋生分解性プラスチックの開発・利用は戦略に含まれています。

⑤ 不適切です。プラスチック資源循環戦略では、廃プラスチックの処理を他国と連携して行うというグローバル戦略は主要な方針として掲げられていません。むしろ、国内での資源循環体制の構築や、途上国への技術支援等が重視されています。

したがって、最も不適切なものは ⑤ です。この選択肢は、プラスチック資源循環戦略の実際の方針とは異なる内容を述べています。戦略では、国内での資源循環を重視し、海外への廃プラスチックの輸出量を削減する方針が示されています。

I-1-36 リサイクル関連法

リサイクル関連法に関する次の記述のうち最も適切なものはどれか。

① いわゆる容器包装リサイクル法には、消費者の分別排出、市町村の分別収集、及び特定の容器を製造する事業者に対する一定量の再商品化についての定めがある。
② いわゆる家電リサイクル法ではエアコン、冷蔵庫、パソコン、カメラなどの家電について、小売業者による消費者からの引取りと製造業者等への引渡しを義務付けている。
③ いわゆる食品リサイクル法に基づき策定された基本方針では、事業系の食品ロスを2030 年度までにゼロとする目標を掲げている。
④ いわゆる建設リサイクル法で、定める特定建設資材には、コンクリー卜、コンクリート及び鉄から成る建設資材、木材、建設機械で、使用済みとなった廃油などが含まれる。
⑤ いわゆる自動車リサイクル法では自動車破砕残さ、フロン類、エアバッグの3 品目については、自動車メーカーが引き取り、リサイクルすることを定めている。

正解と解説

【正解①】

②:パソコンとカメラは2012年に制定された小型家電リサイクル法に従って処理されます。

③:サプライチェーン全体で2000年度の半減が目標です。その目標達成に向け、2024年度までに、食品製造業95%、食品卸売業75%、食品小売業60%、外食産業50%という、再生利用など実施率目標が設定されています。上工程の再生利用の取組は進んでいますが、下工程にいくほど削減率は幾位という傾向があります。

④:対象となる建設廃棄物は次の4点で、廃油は含まれません。

  • 建設発生木材 – 木質ボード、木材チップ等
  • コンクリート塊 – 路盤材、骨材、プレキャスト板等
  • アスファルト・コンクリート塊 – 再生加熱アスファルト混合物、路盤材等
  • コンクリート及び鉄から成る建設資材

⑤:内装材料を中心としたシュレッダーダスト、爆発性のあるエアバッグ、オゾン層破壊の原因となるエアコンのフロン類が対象です。自動車破砕残さは含まれません。

I-1-37 影響評価統合レポート2018

気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018 による我が国の気候の長期的傾向に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
なお、猛暑日とは日最高気温が 35℃以上の日、冬日とは日最低気温が0℃未満の日、短時間強雨とは1 時間降水量80mm 以上の降雨無降水日とは日降水量が1mm 未満の日のことをいう。また、統計期間は、年平均気温、猛暑日、冬日、無降水日については概ね100 年間、短時間強雨については概ね40年間である。

① 年平均気温は上昇しており、その上昇速度は世界の平均より大きい。
② 猛暑日の年間日数は増加している。
③ 冬日の年間日数は減少している。
④ 短時間強雨の年開発生回数は増加している。
⑤ 無降水日の年間日数は減少している。

正解と解説

【正解⑤】

① 適切です。日本の年平均気温は上昇しており、その速度は世界平均を上回っています。

② 適切です。猛暑日(35℃以上)の年間日数は増加傾向にあります。

③ 適切です。冬日(0℃未満)の年間日数は減少傾向にあります。

④ 適切です。短時間強雨(1時間降水量80mm以上)の年間発生回数は増加傾向にあります。

⑤ 不適切です。一般的に、日本の無降水日(日降水量1mm未満)の年間日数は増加傾向にあります。これは、降水の極端化(大雨と少雨の両極端化)が進んでいることを示唆しています。

したがって、最も不適切なものは ⑤ です。無降水日の年間日数は減少しているのではなく、増加している傾向にあります。これは気候変動に伴う降水パターンの変化を反映しており、大雨の増加と同時に、乾燥期間も長くなる傾向があることを示しています。

I-1-38 第五次環境基本計画

第五次環境基本計画等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 環境基本計画は、環境基本法に基づき、環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱等を定めるものである。
② 第五次環境基本計画は、持続可能な開発のための2030 アジェンダや、温室効果ガスの排出等に係るパリ協定なども踏まえ、定められた。
③ 第五次環境基本計画では、各地域が自立・分散型の社会を形成しつつ、地域資源を補完し支え合いながら農山漁村も都市も活かす「地域循環共生圏」の創造を目指している。
④ 第五次環境基本計画では、様々な環境分野におけるそれぞれの特定課題を直接的に解決することに比重を置いた分野別の重点戦略を設定している。
⑤ 第五次環境基本計画では、東日本大震災からの復興・創生とともに、南海卜ラフ地震等における災害廃棄物の処理等今後の大規模災害発災時の対応を、重点戦略を支える環境政策の根幹の 1 つと位置付けている。

正解と解説

【正解④】

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環境基本計画は約6年ごとに見直します。第五次環境基本計画はSDG、パリ協定採択後に初めて採択された環境基本計画で、平成30年に閣議決定されました。本計画では、複合的な課題の解決に向け、特定の環境施策が複数の異なる経済・社会的課題をも統合的に解決することを目指す分野横断的な6つの重点戦略(経済、国土、地域、暮らし、技術、国際)を設定しています

よって、④の「特定課題を直接的に解決する」という点が誤りです。

I-1-39 環境影響評価法

環境影響評価法に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

① 計画段階環境配慮書では、第一種事業に係る計画の立案段階において、環境の保全及び費用対効果の観点から配慮すべき事項を検討した結果をとりまとめることが義務付けられている。
② 環境影響評価方法書をもとにして、環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法などをとりまとめるための手続をスクリーニングという。
③ 環境影響評価準備書では、環境影響評価の結果のうち、環境影響評価の項目ごとの調査結果の概要並びに予測及び評価の結果とともに、環境の保全のための措置及び環境影響の総合的な評価についても記載することが義務付けられている。
④ 環境影響評価書は、環境影響評価準備書に対する国民、市町村長、都道府県知事及び環境大臣等からの意見を聴取した結果を踏まえて作成することが義務付けられている。
⑤ 環境影響評価書に記載された全ての環境の保全のための措置については、事業実施後にその結果の報告が義務付けられている。

正解と解説

【正解③】

①:計画立案において、費用対効果についての検討は義務付けられていません。

環境配慮書:事業の早期段階における環境配慮を図るため、第1種事業を実施しようとする者が、事業の位置・規模等の計画の立案段階において、その事業の実施が想定される区域において、環境の保全について適正な配慮をするべき事項について検討を行い、その結果をまとめたものです。また、対象事業が周辺の自然環境、地域生活環境などに与える影響については、一般の方々や地域の特性を良く知っている住民、専門家の方々、地方公共団体などの意見を取り入れるよう努めることとされています。第2種事業を実施しようとする者は、配慮書手続は任意です。

②:問題文はスコーピングの説明です。スクリーニングは第2 種事業のみが実施する、アセス要否を検討する作業です。

④:準備書に、国民、市町村長、都道府県知事の意見が入り評価書になります。評価書環境大臣の意見が入り、補正後の評価書となります。

⑤:事業を実施し、事中に実施した事後調査やそれにより判明した環境状況に応じて講ずる環境保全対策、重要な環境に対して行う効果の不確実な環境保全対策の状況について、工事終了後に図書にまとめ、報告・公表を行います

I-1-40 組織の社会的責任と環境管理活動

様々な組織の社会的責任と環境管理活動に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① ISO 26000 は、企業だけでなく様々な組織の社会的責任に関する国際規格であり、我が国ではJIS化されている。
② エコアクション21 は、中小事業者にも取組みやすい環境マネジメントシステムとして策定されたものであり、近年、建設業者や食品関連事業者向けのガイドラインも公表されている。
③ トリプルボトムラインとは、企業の持続可能性についての考え方であり、企業活動を経済の観点のみならず環境と人的資源の観点からも評価しようとするものである。
④ ESG 投資とは、環境、社会、企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資のことをいい、国際連合が提唱した責任投資原則の基本となる考え方である。
⑤ 環境会計とは、企業等が、事業活動における環境保全のためのコストとその活動により得られた効果を認識し、可能な限り定量的に測定し伝達する仕組のことである。

正解と解説

【正解③】

① 適切です。ISO 26000は様々な組織の社会的責任に関する国際規格であり、日本ではJIS Z 26000としてJIS化されています。

② 適切です。エコアクション21は中小事業者向けの環境マネジメントシステムであり、建設業や食品関連事業者向けのガイドラインも公表されています。

③ 不適切です。トリプルボトムラインは通常、経済(Economy)、環境(Environment)、社会(Society)の3つの観点から企業活動を評価する考え方を指します。「人的資源」ではなく「社会」が正しい表現です。

④ 適切です。ESG投資は環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に配慮した企業への投資を指し、国連の責任投資原則(PRI)の基本的な考え方です。

⑤ 適切です。環境会計は、環境保全のためのコストとその効果を定量的に測定し伝達する仕組みとして正確に説明されています。

したがって、最も不適切なものは ③ です。トリプルボトムラインの定義において、「社会」の観点が「人的資源」と誤って表現されています。トリプルボトムラインは、経済、環境、社会の3つの観点から企業の持続可能性を評価する考え方です。

トリプルボトムラインは企業活動の、

  • 環境的側面
  • 社会的側面
  • 経済的側面

の3つの観点から企業を評価する考え方です。人的資源の観からの評価は含みません。
よって、「人的資源」という箇所が誤りです。

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