【令和3年 2021年】総合技術監理部門 択一問題 解答と解説

目次

I-1-1 投資評価手法

政府や自治体等の政策評価や企業等の投資評価に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 費用便益分析は、政策等の外部経済及び外部不経済を対象として定量的に評価する手法の総称である。
  2. 費用効用分析では、政策等による効果はすべて効用関数によって貨幣価値に換算される。
  3. アウトカム指標は、アウトプット指標を貨幣価値に換算したものである。
  4. 2 つの投資案があるとき、それらの内部収益率の大小関係と正味現在価値の大小関係は常に一致する。
  5. 回収期間法による投資案の評価では、投資回収後のキャッシュ・フローは考慮されない。
正解と解説

【正解⑤】

  • 費用便益分析は外部経済だけでなく、内部経済も対象とします。「外部経済」とは、ある経済活動が市場を通さないところで第三者に良い影響を与えることを意味しており、「正の外部性」とも呼ばれる。 反対に「外部不経済」は、その経済活動が第三者に対して悪影響を及ぼす場合を指し、「負の経済性」ともいう。

【内部経済と外部経済の違い】

内部経済:個々の企業の資金調達能力、経営能力、組織の効率性など、その企業内部の固有の特性から生ずる利得のこと
外部経済:個々の企業の外部の状況、つまり産業全体あるいは国民経済全体の発達などによってもたらされる利得のこと

  • 政策効果などを貨幣価値に換算するのは費用便益分析です。
  • アウトカム指標はアウトプット(活動)による成果をあらわす指標で、貨幣価値換算したものではありません。
  • 内部収益率と正味現在価値の大小に相関関係はありません。
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I-1-2 PFI法

我が国における、いわゆるPFI (Private Finance Initiative) 法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)に基づく事業(以下「PFI 事業」という。)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

① PFI 事業におけるVFM(バリュー・フォー・マネー)とは、事業期間全体を通じた公的財政負担の見込額の現在価値のことである。
② BTO 方式とは、民間事業者が施設を整備し、施設を所有したままサービスの提供を行い、そのサービスに対して公共主体が民間事業者に対価を支払う方式のことである。
③ BOT 方式では、施設完成直後に、施設の所有権が民間事業者から公共主体に移転される。
④ コンセッション方式では、施設の所有権を公共主体が有したまま、施設の運営権が民間事業者に設定される。
⑤ 内閣府の調査によれば、実施方針が公表されたPFI 事業の単年度ごとの件数は、ここ数年減少傾向にある。

正解と解説

【正解④】

①VFM (Value for Money)は、支払い(Money)に対して最も価値の高いサービス(Value)を供給するという考え方です。従来の方式と比べてPFIの方が総事業費をどれだけ削減できるかを示す割合で、次の式で定義されています。

VFM = (従来の公共事業のLCC – PFIのLCC) ÷ (従来の公共事業のLCC) x 100

②③BOT 方式とBTO方式が逆です。B はBuild、O はOperate、T はTrade です。

BTOBuild Transfer and Operate)方式
民間事業者が施設を建設し、施設完成直後に公共に所有権を移転し、民間事業者が維持管理及び運営を行う方式。
BOTBuild Operate and Transfer)方式
民間事業者が施設を建設し、維持管理及び運営し、事業終了後に公共に施設所有権を移転する方式。
BOOBuild Operate and Own)方式
民間事業者が施設を建設し、維持管理及び運営をするが、公共への所有権移転は行わない方式
RORehabilitate Operate)方式
民間事業者が自ら資金を調達し、既存の施設を改修・補修し、管理・運営を行う方式。

⑤平成27年から令和元年までは増加し、令和2年は減少、令和3年は横ばい。

I-1-3 品質管理の統計的手法

品質管理の統計的手法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 管理図の管理限界は、製品の規格が定められている場合、規格値に設定すべきである。
② 工程能力指数の値は、品質特性の測定値のばらつきが小さいほど大きい。
③ 工程能力指数の値から工程能力は十分であると判定できる場合に、検査の簡略化が行われることがある。
④ 抜取検査は、合格ロットの中にある程度の不適合品の混入があることを許容できる場合に用いる。
⑤ 抜取検査を行う場合に満たすべき条件の1 つは、ロットからサンプルをランダムに抜き取ることができることである。

正解と解説

【正解①】

最も不適切な記述は です。

① 管理図の管理限界は、製品の規格が定められている場合、規格値に設定すべきである。
これは不適切です。管理図の管理限界(上方管理限界と下方管理限界)は、通常、工程の自然なばらつきに基づいて設定されます。具体的には、平均値を中心に±3σ(標準偏差)で設定されることが一般的です。一方で、製品の規格限界(規格値)は、顧客や設計に基づいた許容範囲を示しています。管理限界と規格限界は異なるものであり、管理図の管理限界を規格値に設定するのは適切ではありません。

他の選択肢は正しい記述です。

  • 工程能力指数(CpkやCp)は、ばらつきが小さいほど値が大きくなります。
  • 工程能力指数が高く、工程が安定している場合、検査の簡略化が行われることがあります。
  • 抜取検査は、不適合品の混入を完全には防げないが、ある程度許容できる場合に用いられます。
  • 抜取検査では、サンプルはロットからランダムに抜き取られることが必要です。

I-1-4 スケジュール短縮

作業A~G で構成されるプロジェクトがあり、各作業の所要日数と先行作業(その作業を開始する
前に完了しているべき作業)が下の左表のように与えられている。作業A とB は同時に開始するもの
とする。ここで、プロジェクトの最短所要日数を短縮するために作業の見直しを行い、右表のように、
作業F を前半部分のF1 と後半部分のF2 に分割し、作業G をF1 の完了後に開始できるように変更す
ることを考える。この変更によるプロジェクトの最短所要日数の短縮日数として最も適切なものはど
れか。

① 0 日(短縮されない)
② 1 日
③ 2 日
④ 3 日
⑤ 4 日

正解と解説

【正解③】

見直し前には、次の3経路が存在します。クリティカルパスを太字太線で表します。

  • ACE         14日
  • BDE         15日
  • BFG         17日

見直し後は、次の4経路が存在します。クリティカルパスを太字で表します。

  • ACE         14日
  • BDE         15
  • BF1G       14日
  • BF1F2      9日

経路短縮日数は17日-15日 = 2日と求まります。

I-1-5 サプライチェーンマネジメントと生産方式

サプライチェーンマネジメントと生産方式に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

① サプライチェーンマネジメントにおいて、管理の対象となるのは、原材料・資材の供給から生産、流通、販売に至るまでのものであり、サービスは含まない。
② 顧客からの受注後に、完成在庫から出荷するのか、あるいは組み立てて出荷するのか、設計をして生産するのかなどによって、サプライチェーンマネジメントの形態は変わる。
③ 制約条件の理論(TOC) によれば、システムを構成する工程のうち、制約条件となっている工程以外のすべての工程の能力を高めることにより、システム全体のパフォーマンス向上を目指すことができる。
④ プル型生産方式では、需要予測に基づいて生産計画をたて、原材料・部品の購買や製品の生産を行う。
⑤ ジャストインタイム(JIT) 生産を実現するためのかんばん方式では、部品容器から外された「生産指示かんばん」を用いて、部品品目の運搬が指示される。

正解と解説

【正解②】

最も適切な記述は です。

② 顧客からの受注後に、完成在庫から出荷するのか、あるいは組み立てて出荷するのか、設計をして生産するのかなどによって、サプライチェーンマネジメントの形態は変わる。
この記述は正しいです。サプライチェーンマネジメントの形態は、受注のタイミングや生産形態に応じて変わります。例えば、在庫を持つ「受注生産」、一部組立てを行う「組立生産」、設計段階から始める「設計生産」などがあり、それに応じてサプライチェーンの管理方法も変わります。

他の選択肢について:

  • サプライチェーンマネジメントの対象には、製品やサービスの流れ全体が含まれます。サービスも管理対象に含まれるため、この記述は不適切です。
  • 制約条件の理論(TOC)では、制約条件(ボトルネック)となる工程に焦点を当て、そこの能力を向上させることが重要であり、他の工程の能力を単に高めてもシステム全体のパフォーマンスは向上しません。
  • プル型生産方式は、需要に基づいて生産を行う方式であり、需要予測に基づいて生産計画を立てるのは「プッシュ型生産方式」です。この記述はプッシュ型に関する説明です。
  • かんばん方式では、「引取かんばん」と「生産指示かんばん」が使われますが、「生産指示かんばん」は部品の運搬指示に使用されるものではなく、生産の指示に使用されます。

I-1-6 利益計画

あるメーカーの製品X について、次年度の利益計画の設定に関する次の資料がある。

[資料]
a. 販売価格 30,000 円/個
b. 販売量 800 個
c. 変動費 10,000 円/個
d. 固定費 10,000,000 円

この条件下での損益分岐点の分析に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、期首・期末の仕掛品及び製品在庫はゼロであるものとし、次の各記述で取り上げた事項以外については、[資料] a~d に示された内容に変化はないものとする。また、割合を示す数値は有効数字3 桁とする。

① 変動費を5%削減したときの売上高は22,800,000 円となる。
② 固定費を1,000,000 円増加させたときの限界利益は5,000,000 円となる。
③ 販売価格を8%値下げし、販売量が20%増加したときの営業利益は8,496,000 円となる。
④ 予想売上高の83.3%が損益分岐点売上高となる。
⑤ 限界利益率は66.7%となる。

正解と解説

【正解⑤】

① 変動費が減ると、そのぶん利益が増えます。固定費と売上高は変わりません。
よって、計算をしなくても誤りだと判断できます。
ちなみに、22,800,000 円は、売上高 24,000,000円(=3万円 x 800個) x 0.95の計算結果です。

②固定費が増えると、そのぶん営業利益が減ります。変動費と売上高は変わりません。
限界利益は固定費と営業利益の和で定義されます。
つまり、固定費が変動しても、そのぶん利益が変動するため限界利益は変わりません。
よって、計算をしなくても誤りだと判断できます。

③8%値下げした販売価格 : 30 000 × 0.92 = 27,600円
20%増加した販売量 : 800 × 1.2 = 960個

営業利益 = 販売価格 × 販売量 – 変動費 × 販売量 – 固定費

    = 27 600 × 960 – 10 000-× 960 – 10 000 000
    = 6,896,000 円

よって、営業利益は8,496,000 円は誤り。

損益分岐点は、売上高と費用が等しくなる売上高または販売量を指します。

問題を解くために、この等式から個数を求めます。まず、販売個数を求めます。

販売個数 = 固定費 ÷ (単価 – 変動費)
    = 10 000 000 ÷ (30 000 – 10 000)
    = 500 個

この時の売上高は、
売上高 =販売 個数 × 単価
    =500 × 30000
    =15 000 000 円

売上高÷予想売上高=15 000 000 ÷ 24 000 000
         =0.625 (62.5 %)

よって、「予想売上高の83.3%が損益分岐点売上高」は誤り。

⑤ 限界利益率は売上額に対する限界利益の割合のことです。

限界利益=売上高 – 変動費
               = 800 x 30 000 – 800 x 10 000
               = 16 000 000 円

限界利益率= 16 000 000 ÷ 24 000 000
                  = 0.667 (66.7 %)

と求まります。よって、「限界利益率は66.7%」は正しい。

I-1-7 財務諸表

財務諸表に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、キャッシュ・フロー計算書は間接法によるものとする。

① 貸借対照表において、流動負債に対する流動資産の割合が大きいほど、短期的な資金繰りは安全である。
② 損益計算書において、売上高に対する売上総利益の割合が大きいほど、製品やサービスの全体としての付加価値が高い。
③ 営業活動によるキャッシュ・フローの計算では、売上債権の増加にはキャッシュのプラスの調整を行い、仕入債務の増加にはキャッシュのマイナスの調整を行う。
④ フリー・キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローを加えたものである。
⑤ キャッシュ・フロー計算書における現金及び現金同等物の期末残高は、通常、貸借対照表における現金及び預金と同じ程度の金額となる。

正解と解説

【正解③】

最も不適切な記述は です。

③ 営業活動によるキャッシュ・フローの計算では、売上債権の増加にはキャッシュのプラスの調整を行い、仕入債務の増加にはキャッシュのマイナスの調整を行う。
これは不適切です。売上債権の増加は、商品やサービスを販売したがまだ現金が回収されていないため、キャッシュの減少(マイナスの調整)になります。一方、仕入債務の増加は、仕入れに対してまだ支払いが行われていないため、キャッシュは減少せず、キャッシュの増加(プラスの調整)となります。

他の選択肢は正しいです:

  • 流動負債に対する流動資産の割合が大きいほど、短期的な資金繰りは安全になります。
  • 売上高に対する売上総利益の割合が大きいほど、全体としての付加価値が高いと考えられます。
  • フリー・キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローを加えたものです。
  • キャッシュ・フロー計算書の現金及び現金同等物の期末残高は、貸借対照表における現金及び預金の金額とほぼ同じになります。

I-1-8 生産活動又はサービス提供活動における設備管理

生産活動又はサービス提供活動における設備管理に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
① 設備のライフサイクルコストには、設備の開発や取得のための初期投資コストと運転・保全の費用は含まれ、他方、設備の廃却費は含まれない。
② 一般に、設備保全活動に必要な保全費には、設備の新増設、更新、改造などの固定資産に繰り入れるべき支出は含まれない。
③ 設備修理期間中の設備休止に伴う機会損失費は、活動基準原価計算により得られる費用として算出することができる。
④ 生産自動化など計画中の設備投資案の経済計算には、価値分析や原価企画などの方法があり、設備投資案の評価・比較に用いられる。
⑤ 劣化を理由として現在使用中の設備を取り替える場合、絶対的劣化による取替を「設備更新」といい、相対的劣化による取替を「設備取替」という。

正解と解説
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【正解②】

①廃却費もLCCに含まれます。
③活動基準原価計算は間接費の配賦に使います。機会損失費とは無関係です。

価値分析(Value Analysis)は、使用する材料の特性・機能、加工技術及び設計方法などを分析・検討することにより、コスト低減を図る活動です。現在の生産計画への影響を最小限に抑え、大掛かりな変更なしにコストを下げるという点がポイントです。
原価企画は、新製品を市場に導入するに際して、商品構想、製品企画、開発・設計といった初期フェーズにおいて目標利益(目標利益=目標価格-許容原価)を確保してしまおうとする原価作り込み活動です。

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⑤絶対的劣化は老朽化、相対的劣化は旧式化、陳腐化を意味します。相対的劣化は、「当初の機能・性能は保持しているが、新しく求められる機能・性能は保持していないという状況」です。

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I-1-9 労使関係

労使関係に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

① パートタイム労働者は、労働組合に加入することはできない。
② 団体交渉では、賃金や労働時間、休日などの労働条件のほか、団体交渉の手続、組合活動における施設利用の取扱いなどが交渉事項となり得る。
③ 労働委員会は、半数は使用者を代表する者、残りの半数は労働者を代表する者によって構成される。
④ 労働委員会が行うあっせんは、紛争当事者間の自主的解決を援助するため、あっせん員が当事者間の話合いの仲立ちなどを公開で行うものである。
⑤ 労働委員会が調停を進める中で調停案を提示した場合、労働者側、使用者側のいずれもこれを受け入れなければならない。

正解と解説

【正解②】

① パートタイム(非正規)労働者も労働組合に加入できます。
③ 労働委員会は、「公益を代表する者」(公益委員、弁護士など)も含めた三者各同数から構成されます。
④ あっせんは「非公式」でおこなわれます。
⑤ 調停結果を受け入れるか否かは任意です。

あっせんは原則として法律又は 技術の委員一人が担当しますが、調停は三人の委員で行われ、原則として法律委員一人と技術委員二人、若しくは法律委員一人、技術委員一人、一般委員一人の合議制によって運営されます。

あっせんは法律的又は技術的な争点が少ない事案に適し、調停は、法律的又は技術的な争点が多い事案に適していると言えます。

I-1-10 労働者派遣法

いわゆる労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者保護等に関する法律)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 同一の事業所で3 年を超えて労働者派遣の役務の提供を継続して受け入れる場合には、派遣先事業所の労働者の過半数で組織する労働組合、又はそれがないときには労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
② 60 歳以上の定年による退職者を除き、自社で直接雇用していた正社員、契約社員、アルバイトを、離職後1 年以内に派遣元事業主を介して派遣労働者として受け入れることは禁止されている。
③ 派遣先は、派遣労働者に対し派遣先事業所の労使協定の範囲内で時間外労働や休日労働を行わせることができる。
④ 派遣先は、派遣先の労働者が利用する給食施設、休憩室、更衣室については、派遣労働者に対しても利用の機会を与えなければならない。
⑤ 派遣先は、労働者派遣契約を締結するに当たり、あらかじめ派遣元事業主に対し、派遣労働者が従事する業務ごとに、比較対象労働者の賃金等の待遇に関する情報を提供しなければならない。

正解と解説

【正解③】

最も不適切な記述は です。

③ 派遣先は、派遣労働者に対し派遣先事業所の労使協定の範囲内で時間外労働や休日労働を行わせることができる。
これは不適切です。派遣労働者の労働条件に関しては、派遣元事業主が責任を持つため、派遣先の労使協定の範囲内で時間外労働や休日労働を行わせることはできません。時間外労働や休日労働を行わせる場合には、派遣元と派遣先の契約に基づき、派遣元が指示する必要があります。派遣先が直接派遣労働者に労働条件を決定することは法律で制限されています。

他の選択肢は正しいです:

  • 同一事業所で3年以上労働者派遣を受け入れる場合、労働組合または労働者代表の意見を聴く必要があります。
  • 60歳以上の定年退職者を除き、自社で離職後1年以内の元社員を派遣労働者として受け入れることは禁止されています。
  • 派遣先は、給食施設や休憩室、更衣室などを派遣労働者にも利用させる義務があります。
  • 派遣契約を締結する際、派遣先は派遣元に対し比較対象労働者の待遇に関する情報を提供しなければなりません。

I-1-11 育児・介護休業法と労働基準法

いわゆる育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)、労働基準法に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

① 介護休業の対象家族には、配偶者の祖父母が含まれる。
② 労働者は、要介護状態にある対象家族を介護するために、対象家族1 人につき、通算93 日まで、3 回まで分割して介護休業を取得することができる。
③ 事業主は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者について、所定労働時間の短縮等の措置を講ずるよう努めなければならない。
④ 介護休暇を取得する要件を満たす労働者が、介護休暇を事業主に申し出たときに、事業主は業務の正常な運営を妨げる場合には拒むことができる。
⑤ 年次有給休暇の算定に当たっては、労働者が介護休業を取得した期間は出勤日数に含まない。

正解と解説

① 介護休業の対象家族は次の通りです。

  • 配偶者
  • 父母 (養父母を含む)
  • 子 (養子を含む)
  • 配偶者の父母
  • 同居し、かつ扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫


③ 所定労働時間の短縮等の措置を講ずることは義務です。「努力義務」は誤りです。
④ 事業主は、介護休暇の申し出があれば受け入れる義務があります。
⑤ 介護休暇も出勤日数に含みます。

I-1-12 セクハラ対策指針

職場におけるセクシャルハラスメントについて政府が策定した指針(事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 事業主が講ずべき措置とは、職場におけるセクシャルハラスメントに関する方針の明確化及びその周知・啓発、相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応等である。
② 職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、その労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることを環境型セクシャルハラスメントという。
③ 事業主が講ずる措置の対象となる職場とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、通常就業している場所以外であっても、労働者が業務を遂行する場所であれば職場に含まれる。
④ 事業主が講ずる措置の対象となる労働者には、非正規雇用労働者を含む事業主が雁用する労働者の全てのほか、その職場を派遣先とする派遣労働者も含まれる。
⑤ 職場におけるセクシャルハラスメントの行為者には、事業主、上司、同僚に限らず、取引先等の他の事業主又はその雇用する労働者、顧客もなり得る。

正解と解説

【正解②】

②は対価型セクシュアルハラスメントの説明です。

セクハラには、対価型・環境型・制裁型・妄想型の4つの種類があります。
対価型セクシュアルハラスメントと環境型セクシュアルハラスメントは、男女雇用機会均等法第11条第1項により、防止措置を講じることが義務付けられています。

  1. 対価型セクシュアルハラスメント
    性的な言動を拒否したために労働条件に不利益を受けるセクハラ
  2. 環境型セクシュアルハラスメント
    性的な言動を受けたために就業環境が害され、能力の発揮に支障をきたすセクハラ
    視覚型・発言型・身体接触型の3つに分類される
  3. 制裁型セクシュアルハラスメント
    性差別的な価値観に基づき、女性の昇進や活躍を否定・抑圧するセクハラ
  4. 妄想型セクシュアルハラスメント
    相手が自分に好意があると勘違いし、しつこく付きまとうセクハラ

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I-1-13 組織文化

組織文化に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

① 組織文化は、組織の中でメンバーがどのように行動すべきかを示す公式な決まりの体系である。
② オフィスの環境や衣服などの表層的なものは、組織文化とは無関係である。
③ 組織文化には、組織のメンバーにとって当然のこととみなされる前提や仮定も含まれる。
④ 直面する環境が大きく変化した場合でも、組織がそれに適合した組織文化を形成していくことは容易である。
⑤ 1 つの企業では部門ごとに異なる組織文化が形成されることはない。

正解と解説

【正解③】

最も適切な記述は です。

③ 組織文化には、組織のメンバーにとって当然のこととみなされる前提や仮定も含まれる。
これは正しい記述です。組織文化は、組織内のメンバーが共有する価値観、信念、前提や仮定、行動基準などを含む広範な概念です。これらの前提や仮定は、明示的に示されない場合もありますが、メンバーが暗黙的に共有しているため、組織文化の一部とされています。

他の選択肢は不適切です:

  • 組織文化は公式な決まりや規則ではなく、むしろ組織メンバーが共有する価値観や暗黙の前提、行動様式などです。
  • オフィスの環境や衣服などの表層的な要素も、組織文化の一部を反映する場合があります。これらは組織の価値観や信念を示すことがあり、無関係とはいえません。
  • 組織文化は変化に対して柔軟ではなく、大きな変革には時間や努力が必要です。組織文化を適応させることは容易ではありません。
  • 1つの企業内でも、部門ごとに異なる組織文化が形成されることがあります。企業全体の文化に加え、部門ごとのサブカルチャーが存在することは一般的です。

I-1-14 労働分配率及び労働生産性

マクロ経済ベースでの我が国の労働分配率及び労働生産性に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお「G7 サミット参加国」とは、アメリカ、イギリス、 ドイツ、フランス、 日本、カナダ及びイタリアをいう。

① 労働分配率は、景気拡大局面においては低下し、景気後退局面においては上昇するという特徴がある。
② 2000 年以降の資本金規模別にみた労働分配率の比較では、「資本金1 千万円以上1 億円未満の企業」は、「資本金10 億円以上の企業」に比べ、労働分配率が低い。
③ 2019 年度における国民所得に占める雇用者報酬の比率は、 50%を下回っている。
④ 2018 年における主要産業の労働生産性の比較では、「宿泊・飲食サービス業」は「製造業」より高い。
⑤ G7 サミット参加国における2019 年の一人当たりの名目GDP の比較では、日本は高い方から2 番目である。

正解と解説

【正解①】

労働分配率は次の式で定義されます。

労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100

給与や福利厚生費などの人件費が増えれば労働分配率は上がり、企業活動を通して生み出される付加価値が増えれば労働分配率は下がります

つまり、労働分配率が低いほど効率よく付加価値を生み出していると言えます。
この関係を簡単にまとめると次のような関係になります (実際は、それぞれの項目は相互作用するため、こんなに単純ではありません)。

 人件費付加価値労働分配率
好景気↓ 低下
不景気↑ 上昇
給与上昇↑ 上昇
給与減少↓ 低下

②労働分配率(付加価値に占める人件費の割合)は高くなります。

国民所得は、賃金総額(雇用者報酬)企業の利益(営業余剰・混合所得)の合計額として定義されます。

労働分配率=国民所得に占める雇用者報酬の比率

という関係があります。近年は70%前後で推移しています。

④製造業のほうが労働生産性が高いです。

労働生産性 = 付加価値 ÷ 従業員数

労働生産性とは従業員1人あたりの付加価値であり「会社の稼ぐ力」を表す指標です。

⑤G7は、日本、アメリカ、カナダ、フランス、イギリス、ドイツ、イタリアの7か国で、一人当たりの名目GDP の比較では、日本は高い方から2 番目です。

I-1-15 メンター制度

メンター制度(社員の間に計画的にメンターとメンティのペアをつくりメンタリングを行う制度)を企業が導入する場合、次の記述のうち最も適切なものはどれか。

① メンタリング開始に当たり、メンターに対し実施方法に関する事前研修を行い、メンティに対しては事前研修を行わないことが一般的である。
② メンターは、メンティの直属のラインであることが望ましい。
③ メンタリングは、原則として就業時間外に行う。
④ メンター制度を導入することにより、女性の活躍推進を促す効果も期待される。
⑤ メンターは、メンタリングで話し合われた内容を人事担当部局に報告することが望ましい。

正解と解説

【正解④】

メンター制度とは、豊富な知識と職業経験を有した社内の先輩社員(メンター)が、後輩社員(メンティ) に対して行う個別支援活動です。 キャリア形成上の課題解決を援助して個人の成長を支えるとともに、職場内 での悩みや問題解決をサポートする役割を果たします。
厚生労働省からもマニュアルが出されており、この中からの出題です。
タイトルに、「女性社員の活躍を推進するための」とあることから、④が正解だとわかります。

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I-1-16 職能別組織と事業部制組織

以下の(ア) ~ (エ)のそれぞれについて、職能別組織と事業部制組織のどちらが優位であるかを整理した。次のうち、優位な組織の組合せとして、最も適切なものはどれか。

(ア)専門的な知識や経験の蓄積
(イ)活動規模の拡大に伴う単位コストの低下
(ウ)事業環境の変化への迅速な対応
(エ)次世代の経営者の育成

職能別組織職能別組織事業部制組織事業部制組織
事業部制組織職能別組織職能別組織職能別組織
職能別組織職能別組織職能別組織事業部制組織
事業部制組織事業部制組織職能別組織職能別組織
事業部制組織事業部制組織事業部制組織職能別組織
正解と解説

【正解①】

事業部制とは本社部門の下に、事業ごとに編成された組織(事業部)を配置した組織形態。本社部門の負担を減らし、各事業で迅速な意思決定ができる。企業が多角化したり、地理的に拡大したりすると、本社部門がすべての事業に関する意思決定を行うのは難しくなります。

職能別組織は「機能別組織」と呼ばれ、職能や業務内容ごとに部門を編成する組織形態を指します。「営業部」「製造部」「経理部」というように機能ごとに部門を編成したものです。活動規模が大きくなると業務の効率化が進み、単位コストの低下がはかれます。

I-1-17 混合行列

下表は、収集した4,500 個のデータに対し、陽性か陰性かを予測する機械学習モデルによる予測結果を整理した混同行列とよばれるものである。さらに20 個のデータを追加し、同じモデルを用いて予測した結果、追加したデータすべてを陽性と予測し、実際にはすべて陰性であった。データを追加したことによる、このモデルの予測性能の変化に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、本問における評価指標については以下のとおりとする。

正解率:全データのうち、予測が正しかったデータの割合
適合率:予測が陽性であったデータのうち、実際に陽性であるデータの割合
再現率:実際は陽性であるデータのうち、予測も陽性であったデータの割合
F 値:適合率と再現率の調和平均

予測 (個)
陽性 (Positive)陰性 (Negative)
実際 (個)陽性 (Positive)真陽性 30偽陰性 20
陰性 (Negative)偽陽性 70真陰性 4,380

① 正解率、適合率、 F 値は小さくなり、再現率は変化しない。
② 正解率、適合率、再現率は小さくなり、 F 値は変化しない。
③ 正解率、再現率、 F 値は小さくなり、適合率は変化しない。
④ 正解率、適合率は小さくなり、再現率、 F 値は変化しない。
⑤ すべての評価指標の値は小さくなる。

正解と解説

【正解①】

追加試験後の混同行列は、このように変化します。

予測 (個)
陽性 (Positive)陰性 (Negative)
実際 (個)陽性 (Positive)真陽性 30偽陰性 20
陰性 (Negative)偽陽性 90真陰性 4,380

オリジナルと追加試験後の各パラメーターの計算結果は次のように求めることができます。

 オリジナル追加試験後変化
正解率4410÷4500 = 0.984410 ÷ 4520 =0.976小さくなる
適合率30÷100=0.330÷120 = 0.25小さくなる
再現率30÷50 = 0.630÷50 = 0.6変化なし
F2÷(4500/4410+100/30)=0.462÷(4520/4410+120/30)=0.46小さくなる

I-1-18 改正個人情報保護法

いわゆる改正個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの、あるいは旅券番号や運転免許証番号等の個人識別符号が含まれるものをいう。
② 本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実等を含む個人情報は、要配慮個人情報に該当する。
③ 個人情報取扱事業者とは、個人情報データベース等を事業の用に供している者をいい、国の機関、地方公共団体等は含まれない。
④ 個人データとは、個人情報データベース等を構成する個人情報をいい、市販の電話帳や住宅地図に含まれる個人情報も個人データに該当する。
⑤ 特定の個人を識別することができないように個人情報を加工し、その個人情報を復元できないようにした匿名加工情報については、その取扱いを個人情報の取扱いよりも緩やかに規律することで、自由な流通や利活用を促進している。

正解と解説

【正解④】

最も不適切な記述は です。

④ 個人データとは、個人情報データベース等を構成する個人情報をいい、市販の電話帳や住宅地図に含まれる個人情報も個人データに該当する。
これは不適切です。市販の電話帳や住宅地図に含まれる情報は、公開されている情報であるため、通常の「個人データ」には該当しません。個人情報保護法の「個人データ」は、事業者が取り扱う個人情報データベース等に組織的に含まれている情報を指し、公開されている情報の扱いは異なります。

他の選択肢は正しいです:

  • 個人情報は、生存する個人を識別できる情報や個人識別符号が含まれるものを指します。
  • 要配慮個人情報は、人種や信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴など、本人に対して差別や偏見が生じるおそれのある情報を含みます。
  • 個人情報取扱事業者には、国の機関や地方公共団体等は含まれません。
  • 匿名加工情報は、個人情報保護法において個人情報よりも緩やかに規律され、自由な流通や利活用を促進するための措置が取られています。

I-1-19 画像認識

画像認識に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 画像認識とは、入力された静止画や動画から抽出した特徴などを用いて、対象となるものが何かを認識する技術である。
② ディープラーニング等のAI 技術の進展によって、画像認識の認識精度は向上してきている。
③ AI 等の先端技術を使った画像認識は製造業、物流、防犯などの分野で活用されており、医療分野における画像診断支援などへの応用も進みつつある。
④ 画像認識の活用は進んでいるが、画像認識に使用できるクラウドサービスはいまだ提供されていない。
⑤ 顔認識技術はプライバシー保護の面からの懸念が指摘されており、堅牢なセキュリティ確保や画像データを保存しないなどの対策がとられている。

正解と解説

【正解④】

最も不適切な記述は です。

④ 画像認識の活用は進んでいるが、画像認識に使用できるクラウドサービスはいまだ提供されていない。
これは不適切です。現在、画像認識に使用できるクラウドサービスは多数提供されています。たとえば、Google Cloud の Vision API、Amazon Rekognition、Microsoft Azure の Computer Vision など、多くのクラウドベースのサービスが、画像認識技術を提供しています。これらのサービスは、簡単に画像認識機能を利用できるプラットフォームを提供しており、様々な分野で活用されています。

他の選択肢は正しいです:

  • 画像認識は、入力された画像や動画から特徴を抽出して対象を認識する技術です。
  • ディープラーニング技術の進展によって、画像認識の精度は大幅に向上しています。
  • 画像認識技術は製造業や医療分野など、幅広い分野で応用されています。
  • 顔認識技術に関しては、プライバシーの懸念があり、対策が求められています。

I-1-20 Web 会議サービス使用時の注意事項

いわゆるWeb 会議サービス(音声、映像、資料、チャット等をリアルタイムに交換可能なクラウドサービスとし、オンプレミスは除く。)を使用する際のセキュリティ上の注意事項に関する次の記述のうち、最も不滴切なものはどれか。

① Web 会議サービスのクライアントソフトは、脆弱性の悪用を防ぐため常に最新の状態にアップデートする必要がある。
② 意図しない者の会議への参加を防ぐためには、会議案内メールの安全な経路での配付とともに、会議参加者の確認・認証方式の選定が重要である。
③ 通信路が安全でない場合、会議データの盗聴、改ざんの脅威が発生するため、機密性の低い内容に限った会議であっても、エンドツーエンド暗号化方式の採用が必須である。
④ Web 会議サービスで扱われる個人情報が、会議目的以外で第三者提供を含め使用されないこと、いわゆる改正個人情報保護法等の法律、規制に準拠していることを確認する必要がある。
⑤ 機密情報及び個人情報保護のために、意図しない映り込みや音声の漏えいを避けるよう、参加者端末の場所、映像の背景に配慮する必要がある。

正解と解説

【正解③】

最も不適切な記述は です。

③ 通信路が安全でない場合、会議データの盗聴、改ざんの脅威が発生するため、機密性の低い内容に限った会議であっても、エンドツーエンド暗号化方式の採用が必須である。
これは不適切です。確かに通信路が安全でない場合は、データの盗聴や改ざんのリスクが存在しますが、機密性の低い内容であれば、エンドツーエンド暗号化を必ずしも適用する必要はありません。会議の内容の機密性や重要性に応じて、暗号化のレベルを選択することが一般的です。つまり、機密性が低い内容の場合、エンドツーエンド暗号化が必須とは言えません。

他の選択肢は正しいです:

  • クライアントソフトは、脆弱性を防ぐため常に最新の状態にアップデートする必要があります。
  • 意図しない者の参加を防ぐためには、安全な経路での会議案内の配布と参加者の確認・認証が重要です。
  • 個人情報が会議目的以外で使用されないことや法律に準拠していることを確認する必要があります。
  • 機密情報や個人情報の保護のため、意図しない映り込みや音声漏えいを避けるための配慮が重要です。

I-1-21 統計分析

統計分析に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 標本メディアンは、標本が十分大きければ、その中の非常に極端な値に影響されにくい推定量である。
② 相関分析は、分析者が変数間の因果関係を仮定し、説明変数が被説明変数に与える効果を分析するものである。
③ 最小二乗法は、線形回帰分析において2 種類の変数の関係を示す当てはまりの良い直線を引く際などに用いられる。
④ 推定は、母集団から抽出したランダムサンプルに基づいて、その母集団を統計的に描写する手続である。
⑤ 統計的仮説検定は、帰無仮説を棄却して対立仮説を支持できるかどうかを決定する手続である。

正解と解説

【正解②】

最も不適切な記述は です。

② 相関分析は、分析者が変数間の因果関係を仮定し、説明変数が被説明変数に与える効果を分析するものである。
これは不適切です。相関分析は、2つの変数間の関係の強さと方向性を測定するものであり、因果関係を示すものではありません。相関があるからといって、必ずしも一方の変数が他方に影響を与えているとは限りません。因果関係を調べるためには、他の手法(例えば、回帰分析や実験的手法)が必要です。

他の選択肢は正しいです:

  • 標本メディアンは、大きな標本サイズのもとで、極端な値に影響されにくいです。
  • 最小二乗法は、線形回帰分析において当てはまりの良い直線を求めるために用いられます。
  • 推定は、母集団から抽出したランダムサンプルに基づいて行われます。
  • 統計的仮説検定は、帰無仮説を棄却し、対立仮説を支持するかどうかを決定する手続きです。

I-1-22 ネット炎上

我が国におけるインターネット上の誹謗中傷などのネット炎上に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① ネット炎上の発生件数はスマートフォンの普及や、 SNS 利用者の増加とともに急激に増加した。
② ネット炎上の書き込みに直接参加する者は、インターネット利用者の数パーセント程度以下のごく少数に過ぎないという複数の調査結果がある。
③ 若年層を中心としたテレビ・新聞離れにより、ネット炎上がこれらのマスメディアで認知される割合は極めて低く、ほとんどはソーシャルメディアで認知され拡散する。
④ インターネットの書き込みにより、誹謗中傷などの被害にあった場合への対応として、厚生労働省、総務省、法務省などが相談窓口を開設している。
⑤ いわゆるプロバイダ責任制限法では、インターネット上の誹謗中傷を受けた者の被害回復のために、匿名の発信者を特定するための発信者情報開示制度を定めている。

正解と解説

【正解③】

総務省「情報通信白書 (令和元年度)」に、ネット炎上の統計データの説明が記載されています。
平均的日本人の多くはテレビによって情報を得ることが指摘され、、半数以上がテレビのバラエティ番組からという調査結果があります。中でも。「テレビのニュース番組」の割合も3割程度と高く、マスメディア経由での認知が多くなっています。

I-1-23 クラウドに関する知識

クラウドコンピューティング(以下「クラウド」という。)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① クラウドは、データやアプリケーションなどのコンピュータ資源をネットワーク経由で利用する仕組みである。
② エッジコンピューティングは、従来のクラウドよりもユーザに近い領域でデータ処理機能を提供することで、 リアルタイム性を確保する技術である。
③ 企業がクラウドサービスを利用する効果の例として、システム構築の迅速さ・拡張の容易さ、初期費用・運用費用の削減、可用性の向上、利便性の向上などが挙げられる。
④ クラウドサービスのうちPaaS は、電子メール、グループウェアなどのアプリケーションの機能をネットワーク経由で利用者に提供するサービスである。
⑤ パブリッククラウドは、クラウドの標準的なサービスを不特定多数が共同で利用する形態を指し、プライベートクラウドは、利用者専用のクラウド環境を指す。

正解と解説

【正解④】

④はSaaS の説明です。クラウドサービスはサービスの利用形態によってSaaS (Software as a Service)、PaaS (Platform as a Service)、IaaS (Infrastructure as a Service)の3つに分類できます。最もクラウド上のシステムを利用する方式がSaaS、使わない方式がIaaS、中間がPaaSです。

I-1-24 多要素認証

オンライン本人認証方式に用いられる3 つの要素のうち2 つ以上を組合せた多要素認証の例とし
て、次の組合せのうち最も不適切なものはどれか。

① パスワード + 秘密の質間に対する答え
② ワンタイムパスワードのトークン + パスワード
③ IC カード + 指紋
④ 音声 + パスフレーズ
⑤ パスフレーズ + IC カード

正解と解説

【正解①】

最も不適切な組み合わせは です。

① パスワード + 秘密の質問に対する答え
これは多要素認証の例として適切ではありません。なぜなら、両方の要素が「知識」に基づく認証方法であるため、単独の要素として扱われ、実質的に1つの認証方式にとどまるからです。多要素認証では、異なる種類の認証要素(例えば、知識、所有、特性)を組み合わせる必要があります。

他の選択肢は多要素認証の例として適切です:

  • ② ワンタイムパスワードのトークン + パスワード(知識 + 所有)
  • ③ IC カード + 指紋(所有 + 特性)
  • ④ 音声 + パスフレーズ(特性 + 知識)
  • ⑤ パスフレーズ + IC カード(知識 + 所有)

これらは異なる要素を組み合わせているため、多要素認証の例となります。

I-1-25 消費者安全

消費者安全に係る次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、以下において「隙間事案」とは、消費者安全に係る事案で、各行政機関の所管する既存の法律には、その防止措置がないものをいう。また、内閣総理大臣の権限については、法令により消費者庁長官に委任されている場合を含む。

① 多数の消費者の財産に被害を生じ、又はそのおそれのある事態が発生し、それが隙間事案である場合、内閣総理大臣は事業者に対し勧告・命令等の措置をとることができる。

② 関係行政機関の長や地方公共団体等の長は、消費者安全に係る重大事故等が発生した旨の情報を得たときは、他の法律による通知や報告に関する定めがある場合等を除き、直ちに内閣総理大臣に通知しなければならない。

③ 都道府県においては国民生活センターを、また、市町村においては消費生活センターをそれぞれ設置しなければならない。

④ 消費者安全調査委員会は、事故等の原因について、責任追及とは目的を異にする科学的かつ客観的な究明のための調査を実施する。

⑤ 重大事故等が隙間事案に該当するか否かが一見して明確でない場合、まず消費者庁がこれを隙間事案になる可能性があるものとして受け止め、その上で、法律の適用関係の確認等が行われる。

正解と解説

【正解③】

消費生活センターは、都道府県及び市町村に設置され、各自治体が運営しています。
国民生活センターは独立行政法人です。国民生活センターは土日祝日も利用可能のため、消費生活センターのバックアップ機関としての機能も持ちます。 

I-1-26  リスクアセスメント

「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に沿ってリスクアセスメント等(事業場の危険性又は有害性等の調査を行い、その結果に基づき労働者の危険又は健康障害を防止するために必要な措置を講ずることをいう。)を行おうとする事業場がある。リスクアセスメント等を行う過程において、次の行動のうち最も適切なものはどれか。

① リスクアセスメント等の対象として、一時的な作業に使用されその終了後は撤去される仮設備を除き、事業場における恒常的な作業環境や使用材料等に係るものを抽出した。
② 危険性又は有害性の特定を行うための検討チームの編成では、思い込みや慣れに起因する見逃しを回避するため、作業内容を詳しく把握している職長等を外した。
③ 事業場の建設物を設置するとき、移転するとき、変更するときにはリスクアセスメント等を行うこととし、解体するときは行わないこととした。
④ リスクの見積もりに当たり、負傷又は疾病の重篤度については、負傷や疾病の種類にかかわらず、負傷又は疾病による休業日数等を尺度として使用した。
⑤ リスク低減措置については、ア)法定事項、イ)個人用保護具の使用、ウ)マニュアル整備等の管理的対策、エ)局所排気装置等の工学的対策、オ)設計・計画段階における危険性の除去や低減、の優先順位で検討し、実施した。

正解と解説

【正解④】

① 恒常的な環境だけでなく、一時的な作業・環境についてもアセスメントは必要です。
② 作業内容を詳しく把握している作業者の参加は必要不可欠です。
③ ①同様、解体時にもリスクアセスメントは必要です。
⑤ リスク低減措置の優先順位は次の通りです。

  • 設計や計画の段階における危険性又は有害性の除去又は低減 危険な作業の廃止・変更、危険性や有害性の低い材料への代替、より安全な施行方法への変更等
  • 工学的対策 カバー、局所俳気装置、防音囲いの設置等
  • 管理的対策
  • 個人的保護具の使用

I-1-27 事業場の事故や災害の未然防止に係る用語

事業場の事故や災害の未然防止に係る用語の説明として、最も不適切なものはどれか。

① 危険予知訓練は、作業や職場にひそむ危険性や有害性等の危険要因を発見し解決する能力を高める手法であり、具体的な進め方として「KYT 基礎4 ラウンド法」等がある。
② ツールボックスミーティングとは、作業チームの各メンバーが使用する道具に係る潜在的危険性を相互に指摘し、チーム全体で道具に起因する事故を防止する取組をいう。
③ 本質的安全設計方策には、設計上の配慮・工夫による危険源そのものの除去又は危険源に起因するリスクの低減による方法や、作業者が危険区域へ立入る必然性の排除又は頻度低減による方法等がある。
④ ストレスチェック制度とは、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査及びその結果に基づく面接指導等を内容とする、法令に基づく制度である。
⑤ 防火管理者とは、所定の講習課程を修了するなど一定の資格を有し、防火対象物において防火管理など必要な業務を適切に遂行できる管理的又は監督的な地位にある者で、防火対象物の管理権限者から選任された者をいう。

正解と解説

【正解②】

最も不適切な説明は です。

② ツールボックスミーティングとは、作業チームの各メンバーが使用する道具に係る潜在的危険性を相互に指摘し、チーム全体で道具に起因する事故を防止する取組をいう。
この説明は不適切です。ツールボックスミーティング(またはツールボックストーク)は、作業を始める前に行われる安全に関する短いミーティングであり、主に作業全体の安全やリスク、作業手順についての認識を深めるために行われます。特定の道具だけでなく、作業環境全体の潜在的な危険性や安全対策について議論することが目的です。

他の選択肢は適切な説明です:

  • ① 危険予知訓練の説明は正確であり、KYT(危険予知トレーニング)の具体的な進め方も触れています。
  • ③ 本質的安全設計方策の説明は、安全設計の基本的な考え方を示しています。
  • ④ ストレスチェック制度の説明は、制度の内容と法令に基づく目的を正しく述べています。
  • ⑤ 防火管理者の説明も、役割と資格について適切に説明しています。

ツール・ボックス・ミーティング(TBM)とは、職場で行う作業の打合せのことです。「ツー ル・ボックス=道具箱」の近くで行われるため、このように呼ばれています。基本的には、朝の作業を開始する前に5~10分程度行われるのが普通ですが、必要に応じ昼食後の作業再開時や作業の切替え時 に行われることもあります。

I-1-28 安全管理者等の配置要件

下図は、労働安全衛生法及び同法施行令で定められた業種別の事業所規模(労働者数)に応じた安全管理者等の配置要件を整理したものである。図中の(ア) ~ (オ)に当てはまる用語や数字の組合せとして、最も適切なものはどれか。

製造業、電気業、ガス業等林業、鉱業、建設業等統括安全衛生管理者産業医50
安全衛生目標の設定製造業、電気業、ガス業等産業医統括安全衛生管理者30
林業、鉱業、建設業等製造業、電気業、ガス業等産業医統括安全衛生管理者30
林業、鉱業、建設業等製造業、電気業、ガス業等統括安全衛生管理者産業医50
製造業、電気業、ガス業等林業、鉱業、建設業等産業医統括安全衛生管理者50
正解と解説

【正解④】

常時50 人以上の労働者を使用する事業場ごとに産業医をおかなければなりません。

安全管理者は、法定の業種(※1)で常時50 人以上の労働者を使用する事業場ごとに、安全管理者の資格を有する者から選任しなければなりません。

安全管理者の選任が必要な業種

林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む。 ) 、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業

専任の安全管理者とすべき業種と事業場規模

業種常時使用する労働者数
建設業、有機化学工業製品製造業、石油製品製造業300人以上
無機化学工業製品製造業、化学肥料製造業、道路貨物運送業、港湾運送業500人以上
紙・パルプ製造業、鉄鋼業、造船業1,000人以上
選任が必要な業種で上記以外のもの
ただし、過去3年間の労働災害による休業1日以上の死傷者数の合計が100人を超える事業場に限る
2,000人以上

I -1 -29 労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS) の概要

下図は、 労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS) の概要について、「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」に基づき作成したものである。次のうち、(ア) ~ (エ)に入る語句の組合せとして、最も適切なものはどれか。

危険性又は有害性等の調査の実施安全衛生目標の設定安全衛生計画の作成システム監査の実施
安全衛生目標の設定安全衛生計画の作成危険性又は有害性等の調査の実施システム監査の実施
安全衛生計画の作成安全衛生目標の設定システム監査の実施危険性又は有害性等の調査の実施
システム監査の実施危険性又は有害性等の調査の実施安全衛生目標の設定安全衛生計画の作成
安全衛生目標の設定安全衛生計画の作成システム監査の実施危険性又は有害性等の調査の実施
正解と解説

【正解①】

厚生労働省発行のパンフレット、ページ3から引用した設問です。

あわせて読みたい

一般的なプロセスとしては以下の順序が考えられます。

  1. 危険性又は有害性等の調査の実施(現状把握)
  2. 安全衛生目標の設定(目標設定)
  3. 安全衛生計画の作成(計画策定)
  4. システム監査の実施(評価・改善)

したがって、正しい組合せは以下になります:

① 危険性又は有害性等の調査の実施 → 安全衛生目標の設定 → 安全衛生計画の作成 → システム監査の実施

I-1-30 システム信頼性

下図のシステムにおいて、ユニット1 から3 の信頼度はR1=R2=R3=0.9 である。ユニット4の信頼度いとして次の値が選べるとき、システム全体の信頼度を0.9 以上とする要求を満たす最小の応の値はどれか。ただし、各ユニットの故障発生は独立事象とする。

① 0.5
② 0.6
③ 0.7
④ 0.8
⑤ 0.9

正解と解説

【正解②】

STEP
システムに、ユニットの信頼度と故障率を記入する
STEP
ユニット1 とユニット2、ユニット3とユニット4を直列の関係を用いて、信頼度と故障率を求める。

信頼度 R1&2 = R1 × R2 = 0.81
            R3&4 = 0.9 × R4 = 0.9・R4

故障率 E1&2 = 1- R1 = 0.19
            E3&4 = 1-R3+4 = 1-0.9・R4

ここで、故障率の導出には余事象の関係を用いた。

STEP
ユニット1 とユニット2、ユニット3とユニット4を直列の関係を用いて、信頼度と故障率を求める。

ユニット1&2 とユニット3&4 を、並列の関係を用いて、システム全体の信頼度と故障率を求める。

故障率 E = E1&2×E3&4

               = 0.19 ×(1-0.9・R4)

信頼度 R =1- E

                = 1-{0.19 ×(1-0.9・R4)}

最後に、信頼度R が0.9以上となる不等式を解き、R4を求めます。

R > 1-{0.19 ×(1-0.9・R4)}

⇔0.9 > 1-{0.19 ×(1-0.9・R4)}

R4 > 0.526

つまり、ユニット4の信頼度が0.527以上であればシステム全体の信頼度は0.9以上となります。

I-1-31 科学技術イノベーションと社会

科学技術イノベーションと社会に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 消費者庁、食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省等は、食品の安全性に関するリスクコミュニケーションを連携して推進している。
② ライフサイエンスの急速な発展は、人類の福利向上に大きく貢献する一方、人の尊厳や人権に関わるような生命倫理の課題を生じさせる可能性がある。
③ 遺伝子組換え技術で得られた生物は、新たな遺伝子の組合せをもたらし生物の多様性を増進することからその使用は規制されていないが、表示が義務付けられている。
④ いわゆる動物愛護管理法では、動物実験について、代替法の活用、使用数の削減、苦痛の軽減の考え方が示されている。
⑤ 未来の社会変革や経済・社会的な課題への対応を図るには、多様なステークホルダー間の対話と協働が必要である。

正解と解説

【正解③】

最も不適切な記述は です。

③ 遺伝子組換え技術で得られた生物は、新たな遺伝子の組合せをもたらし生物の多様性を増進することからその使用は規制されていないが、表示が義務付けられている。
この説明は不適切です。遺伝子組換え技術で得られた生物は、特定の規制があり、使用に際しては安全性の評価が求められる場合が多いです。したがって、遺伝子組換え作物の使用は規制されています。また、表示義務があるのは事実ですが、「規制されていない」という部分が誤りです。

他の選択肢は適切な説明です:

  • 各種政府機関が連携して食品の安全性に関するリスクコミュニケーションを推進しているのは正しい。
  • ライフサイエンスの発展が倫理的課題を生じさせる可能性についても正しい。
  • 動物愛護管理法が代替法の活用、使用数の削減、苦痛の軽減を促進していることも適切な説明です。
  • ステークホルダー間の対話と協働の重要性も正しい表現です。

カルタヘナ法(正式名称:遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律)によって、生物多様性への影響が生ずるおそれがないと承認されたもののみと規制されています。よって、「新たな遺伝子の組合せをもたらし生物の多様性を増進」は誤りです。

I-1-32 高年齢者の労働安全

高年齢者の労働安全に関して、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」が策定されている。その内容に照らして、次の記述のうち最も適切なものはどれか。

① 近年の60 歳以上の雇用者の増加に伴い、労働災害による死傷者数に占める60 歳以上の労働者の割合は増加傾向にあるが、労働災害の発生率には年齢や性別による差がみられない。
② ロコモティブシンドロームとは、加齢とともに、筋力や認知機能等の心身の活力が低下し、生活機能障害や要介護状態等の危険性が高くなった状態をいう。
③ 事故防止や急激な体調変化が生じた場合の的確な対応の観点から、高年齢労働者の健康や体力の状況に関する情報は、その氏名とともに同一事業場内において公開することが望ましい。
④ 高年齢労働者は経験のない業種や業務であっても、蓄積された知識の類推による理解が期待できることから、高年齢労働者への安全衛生教育は、集中力の持続が保てるよう、簡潔に行うのがよい。
⑤ 労働者の健康や体力の状況は高齢になるほど個人差が拡大するとされており、個々の労働者の健康や体力の状況に応じて、安全と健康の点で適合する業務を高年齢労働者とマッチングさせることが望ましい。

正解と解説

【正解⑤】

厚生労働省から発行された、エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)からの出題です。

① 労働災害の発生率には年齢や性によって差があります (P.1)

② ロコモティブシンドローム:年齢とともに骨や関節、筋肉等運動器の衰えが原因で「立つ」、「歩く」といった機能(移動機能)が低下している状態です (P.2)

③ 個人情報保護の観点から、公開してはなりません

④ 高齢者対象の教育では、作業内容とリスクについて理解させるため、時間をかけ、写真や図、映像等の文字以外の情報も活用します。再雇用や再就職等により経験のない業種、業務に従事する場合、特に丁寧な教育訓練を行う必要があります(P.6)

I-1-33 SDGs 実施指針改定版

SDGs 実施指針改定版(令和元年に改定された我が国の持続可能な開発目標(SDGs) 実施指針)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① SDGs 実施指針改定版は、 SDGs 推進の中長期的な国家戦略として、 SDGs に係る国内外における最新の動向を踏まえ日本の取組の方向性を示すものである。
② 我が国では、 SDGs を浸透させるため、「ジャパンSDGs アワード」や「SDGs 未来都市」の選定を通じた活動の「見える化」など、広報・啓発に努めている。
③ SDGs を達成するための取組を実施するに際しては、 SDGs が経済、社会、環境の三側面を含むものであること、及びこれらの相互関連性を意識することが重要である。
④ 主なステークホルダーの1 つとして取り上げられている「新しい公共」とは、共通の地域課題の解決を目指す複数の地方公共団体の連携組織の総称である。
⑤ SDGs の認知度は年々向上しており、特に10 代・20 代での向上が顕著である。

正解と解説

【正解④】

最も不適切な記述は です。

④ 主なステークホルダーの1 つとして取り上げられている「新しい公共」とは、共通の地域課題の解決を目指す複数の地方公共団体の連携組織の総称である。
この説明は不適切です。「新しい公共」とは、公共と民間が協働して地域の課題を解決するための取り組みを指し、必ずしも地方公共団体の連携組織の総称ではありません。むしろ、市民やNPO、企業などの多様な主体が参加することが強調されています。

他の選択肢は適切な説明です:

  • SDGs 実施指針改定版が国家戦略としての方向性を示すことは正しい。
  • 日本がSDGsを浸透させるための活動を広報・啓発していることも適切です。
  • SDGsの三側面とその相互関連性を意識することの重要性も正しいです。
  • SDGsの認知度が向上していること、特に若い世代での向上が顕著であることも適切な記述です。

新しい公共とは、地域の住民やNPOが主体となり公共サービスを提供する社会、現象、または考え方のことです。

I-1-34 国内エネルギー動向

エネルギー白書2020 (令和元年度エネルギーに関する年次報告)における国内エネルギー動向に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、ここでは、エネルギー自給率とは一次エネルギーの国内供給に対する国内産出の割合をいい、原子力は国内産出のエネルギーとする。

① 産業部門のうち製造業におけるエネルギー消費については、第一次石油ショック当時と比べ、経済成長に伴う生産量の増加により、 2018 年度では大きく増加している。
② 家庭部門・運輸部門におけるエネルギー消費については、第一次石油ショック当時と比べ、エネルギー利用機器や自動車などの省エネルギー化が進んだことから、 2018 年度も同程度の水準にとどまっている。
③ 1990 年から2017 年までの実質GDP 当たりのエネルギー消費については、 日本はOECD 加盟国の平均を上回る水準で推移している。
④ 2017 年の一次エネルギー国内供給の化石エネルギーヘの依存度については、 日本はアメリカ、中国、フランスに比べ低い水準にある。
⑤ 2018 年度の我が国のエネルギー自給率は概ね1 割程度であり、主に石炭や水力など国内の天然資源に依存していた1960 年度より大幅に低下した。

正解と解説

【正解⑤】

「エネルギー白書2020」からの出題です (概要版には網羅されておらず、本文からの出題)。

https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2020html/index_2020.html

① 経済成 長する中でも製造業を中心に省エネルギー化が進んでいます (P103)

② 家庭部門・運輸部門ともに、エネルギー消費は増加しています。

③ 平均を下回る水準で推移しています。

④ 原子力を中心としたフランスや風力、太陽光の導入を積極的に進めているドイツなどと比べると依然として高い水準です。

I-1-35 生物多様性の保全

生物多様性の保全に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、法律名、条約名、議定書名は、略称を用いている場合がある。
① 生物多様性国家戦略は、生物多様性条約及び生物多様性基本法に基づく、生物多様性保全及び持続可能な利用に関する国の基本的な計画である。
② 生物の多様性の保全及び持続可能な利用は、地球温暖化が生物の多様性に深刻な影響を及ぼすおそれがあるとともに、生物の多様性の保全及び持続可能な利用は地球温暖化の防止等に資するとの認識の下に行われなければならない。
③ 生物多様性条約は生物の多様性を包括的に保全するための国際的な枠組みであり、その締結後それを補完するために、希少種や特定の地域の生物種の保護を目的としたワシントン条約や国際的に重要な湿地に関するラムサール条約などが締結された。
④ 名古屋議定書は、遺伝資源の取得の機会とその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分の着実な実施を確保するための手続を定めている。
⑤ カルタヘナ議定書は、遺伝子組換え生物等が生物の多様性の保全及び持続可能な利用に及ぼす可能性のある悪影響を防止するための措置を規定している。

正解と解説

【正解③】

最も不適切な記述は です。

③ 生物多様性条約は生物の多様性を包括的に保全するための国際的な枠組みであり、その締結後それを補完するために、希少種や特定の地域の生物種の保護を目的としたワシントン条約や国際的に重要な湿地に関するラムサール条約などが締結された。
この記述は不適切です。生物多様性条約(CBD)は確かに包括的な国際的な枠組みですが、ワシントン条約(CITES)やラムサール条約は、生物多様性条約の補完というよりも、特定の目的や分野に特化した条約であり、それぞれ独自に存在しています。生物多様性条約はこれらを包括するものではなく、これらの条約が生物多様性条約を補完しているという表現は誤解を招くものです。

他の選択肢は適切な記述です:

  • 生物多様性国家戦略は生物多様性条約及び基本法に基づくもので正しい。
  • 生物多様性の保全と地球温暖化の関連性についての認識は適切。
  • 名古屋議定書に関する説明も正確です。
  • カルタヘナ議定書の目的についても適切な記述です。

生物多様性条約の発効は1993年、ラムサール条約は1971 年制定、1975年発効、ワシントン条約は1973 年に採択されました。生物多様性条約発効前にラムサール条約とワシントン条約は発効されており、補完するために発効されたわけではありません。

I-1-36 第四次循環型社会形成推進基本計画

第四次循環型社会形成推進基本計画に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 物質フローの3 つの断面である「入口」、「循環」、「出口」のそれぞれを代表する指標とそれらの数値目標が設定されている。
② 大規模災害時に発生する災害廃棄物の処理が大きな課題となっていることなどから、万全な災害廃棄物処理体制の構築に関する取組指標として、地方公共団体の災害廃棄物処理計画の策定率が代表指標とされた。
③ 国民は、自らも廃棄物等の排出者であり、環境負荷を与えその責任を有している一方で、循環型社会づくりの担い手でもあることを自覚して行動することが求められる。
④ 金融機関や投資家には、循環型社会づくりに取り組む企業・NPO や、循環型社会づくりにつながるプロジェクト等に対して、的確に資金供給することなどが期待される。
⑤ リデュース、リユース、リサイクルのうち、リサイクルは、リデュース、リユースに比べて優先順位が高いものの、取組が遅れている。

正解と解説

【正解⑤】

最も不適切な記述は です。

⑤ リデュース、リユース、リサイクルのうち、リサイクルは、リデュース、リユースに比べて優先順位が高いものの、取組が遅れている。
この記述は不適切です。一般的に、循環型社会の形成においては「リデュース(減らす)」、「リユース(再利用する)」、「リサイクル(再生利用する)」の順で優先されるべきとされており、リサイクルは最も優先度が低いとされます。また、リサイクルの取り組みが遅れているという点についても、国や地域によって異なるため、一般化することは難しいです。

他の選択肢は適切な記述です:

  • 物質フローの「入口」、「循環」、「出口」についての指標と数値目標の設定は正しい。
  • 災害廃棄物処理体制の構築に関する取組指標としての地方公共団体の計画策定率の説明は適切。
  • 国民の役割についての自覚と行動の重要性に関する記述は正確です。
  • 金融機関や投資家が循環型社会づくりに取り組む企業に対して期待される役割についても適切に表現されています。

3Rの優先順位は、リデュース、リユース、リサイクルの順番です。最も優先度が低いリサイクルの取り組みが進んでいます。

I-1-37 公害関連法

公害関連法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 大気汚染防止法による規制の対象には、工場から大気中への水銀の排出も含まれる。
② 騒音規制法の対象には、新幹線鉄道騒音も含まれる。
③ 水質汚濁防止法による規制の対象には、工場から地下への水の浸透も含まれる。
④ 土壌汚染対策法の対象となる土壌の特定有害物質には、自然由来のものも含まれる。
⑤ ダイオキシン類対策特別措置法による規制の対象には、工場から公共用水域へ排出される水も含まれる。

正解と解説

【正解②】

① 適切です。大気汚染防止法は2015年の改正で水銀の大気排出規制を含むようになりました。

② 不適切です。新幹線鉄道騒音は騒音規制法の対象ではなく、環境基準の設定や指針値の設定により対策が行われています。

③ 適切です。水質汚濁防止法は地下水の水質汚濁の防止も対象としており、有害物質の地下浸透を規制しています。

④ 適切です。土壌汚染対策法は、汚染の由来(人為的・自然由来)に関わらず、特定有害物質による土壌汚染を対象としています。

⑤ 適切です。ダイオキシン類対策特別措置法は、大気、水質(公共用水域)、土壌へのダイオキシン類の排出を規制対象としています。

したがって、最も不適切なものは ② です。新幹線鉄道騒音は騒音規制法の直接の規制対象ではありません。新幹線鉄道騒音については、環境基本法に基づく環境基準が設定されており、別途対策が行われています。

騒音規制法に、航空機騒音新幹線鉄道騒音は含まれません

I-1-38 環境政策の実施に係る7 つの手法

第五次環境基本計画では、環境政策の実施に係る7 つの手法が示されている。そのうちの5 つの手法と各々の適用事例との組合せとして、次のうち最も不適切なものはどれか。

① 直接規制的手法:大気汚染防止法によるばい煙の総量規制
② 枠組規制的手法:化学物質に関するPRTR 制度
③ 経済的手法 :税制優遇による財政的支援
④ 情報的手法 :エコマークなどの環境ラベル
⑤ 手続的手法 :再生可能エネルギーの固定価格買取制度

正解と解説

【正解⑤】

最も不適切な組み合わせは です。

⑤ 手続的手法 :再生可能エネルギーの固定価格買取制度
この記述は不適切です。再生可能エネルギーの固定価格買取制度は、経済的手法に分類されるもので、発電事業者に対して固定価格で電力を買い取ることを保障するものです。したがって、手続的手法とは言えません。

他の選択肢は適切な組み合わせです:

  • ① 直接規制的手法:大気汚染防止法によるばい煙の総量規制は、直接的な規制手法に該当します。
  • ② 枠組規制的手法:化学物質に関するPRTR制度は、枠組規制にあたります。
  • ③ 経済的手法:税制優遇による財政的支援は、経済的手法として正しいです。
  • ④ 情報的手法:エコマークなどの環境ラベルは、情報提供の手法として適切です。

「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」は経済的手法です。手続き的手法には、ISO14001などの環境マネジメントシステム、環境影響評価、戦略的環境影響評価などがあります。

I-1-39 環境アセスメント

環境影響評価法に基づく環境アセスメントにおいて、次の(ア) ~ (ウ)に該当する施設の組合せとして、最も適切なものはどれか。ただし、ここで事業とは、施設を新たに設置するものに限り、設置された施設の一部を改良するものは含めないものとする。

(ア)事業の規模に関わらず対象となるもの
(イ)事業の規模に応じて対象となる場合とならない場合があるもの
(ウ)事業の規模に関わらず対象とならないもの

高速自動車国道林道下水処理場
ダム放水路堤防
新幹線鉄道軌道廃棄物最終処分場
飛行場一般国道ゴルフ場
原子力発電所風力発電所太陽電池発電所
正解と解説

【正解①】

環境アセスメントの対象となる事業は、このように定められています。

対象事業第一種事業第二種事業
(必ず環境アセスメントを行う事業)(環境アセスメントが必要かどうかを個別に判断する事業)
1 道路
 高速自動車国道すべて -
首都高速道路など4車線以上のもの -
一般国道4車線以上・10km以上4車線以上・7.5km~10km
林道幅員6.5m以上・20km以上幅員6.5m以上・15km~20km
2 河川
 ダム、堰湛水面積100ha以上湛水面積75ha~100ha
放水路、湖沼開発土地改変面積100ha以上土地改変面積75ha~100ha
3 鉄道
 新幹線鉄道すべて -
鉄道、軌道長さ10km以上長さ7.5km~10km
4 飛行場滑走路長2,500m以上滑走路長1,875m~2,500m
5 発電所
 水力発電所出力3万kW以上出力2.25万kW~3万kW
火力発電所出力15万kW以上出力11.25万kW~15万kW
地熱発電所出力1万kW以上出力7,500kW~1万kW
原子力発電所すべて -
太陽電池発電所出力4万kW以上出力3万kW~4万kW
風力発電所出力5万kW 以上出力3.75万kW~5万kW
6 廃棄物最終処分場面積30ha以上面積25ha~30ha
7 埋立て、干拓面積50ha超面積40ha~50ha
8 土地区画整理事業面積100ha以上面積75ha~100ha
9 新住宅市街地開発事業面積100ha以上面積75ha~100ha
10 工業団地造成事業面積100ha以上面積75ha~100ha
11 新都市基盤整備事業面積100ha以上面積75ha~100ha
12 流通業務団地造成事業面積100ha以上面積75ha~100ha
13 宅地の造成の事業(「宅地」には、住宅地、工場用地も含まれる)
 住宅・都市基盤整備機構面積100ha以上面積75ha~100ha
地域振興整備公団面積100ha以上面積75ha~100ha
○港湾計画埋立・掘込み面積の合計300ha以上
港湾計画については、港湾環境アセスメントの対象になる。

I-1-40 環境教育

環境教育に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、以下において、 ESD とは「持続可能な開発のための教育」のことをいう。

① 環境基本法では、国は、環境の保全に関する教育及び学習の振興などのため、必要な措置を講ずるものとされている。
② 教育基本法では、生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うことが、教育の目標の1 つとして掲げられている。
③ いわゆる環境教育等促進法は、持続可能な社会の担い手育成の重要性に鑑み、様々な環境教育の場や機会のうち、専ら学校における環境教育を促進させることを目的とした法律である。
④ 高等学校における環境教育は、「地理歴史」、「公民」、「理科」、「保健体育」等の各教科や「総合的な学習の時間」などにおいて行われている。
⑤ ESD を国際的な立場から推進することを提唱したのは日本であり、現在では国際的な実施枠組みである「ESD for 2030」がユネスコで採択されている。

正解と解説

【正解③】

最も不適切なものは です。

③ いわゆる環境教育等促進法は、持続可能な社会の担い手育成の重要性に鑑み、様々な環境教育の場や機会のうち、専ら学校における環境教育を促進させることを目的とした法律である。
この記述は不適切です。この法律は学校教育だけでなく、地域や家庭、企業、NPOなど多様な場での環境教育を促進することを目的としているため、「専ら学校における環境教育を促進させることを目的とした」という表現は誤りです。

他の選択肢は適切です:

  • ① 環境基本法では国の役割が示されており、正しい記述です。
  • ② 教育基本法の教育目標についても正しい内容です。
  • ④ 高等学校における環境教育の実施方法についても正確な説明です。
  • ⑤ ESDの国際的推進についても正しい内容が述べられています。

ESDはEducation for Sustainable Developmentの略で「持続可能な開発のための教育」と訳されています。今、世界には気候変動、生物多様性の喪失、資源の枯渇、貧困の拡大等人類の開発活動に起因する様々な問題があります。ESDとは、これらの現代社会の問題を自らの問題として主体的に捉え、人類が将来の世代にわたり恵み豊かな生活を確保できるよう、身近なところから取り組む(think globally, act locally)ことで、問題の解決につながる新たな価値観や行動等の変容をもたらし、持続可能な社会を実現していくことを目指して行う学習・教育活動です。

学校教育に限定されるものではありません。

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