【令和4年 2022年】総合技術監理部門 択一問題 解答と解説

目次

経済性管理

I-1-1 財務諸表等規則に於けるキャッシュ・フロー会計では、営業活動、投資活動、財務活動の3 区分から生じるキャッシュ・フローについて計算書を作成する。次の収入のうち、財務活動に含まれる項目として、最も適切なものはどれか。

① 株式の発行による収入

② 財貨又は用役の販売による収入

③ 他の会社の株式及び債券から生じる配当及び利息による収入

④ 設備、建物、備品及びその他の生産用資産の売却による収入

⑤ 貸付金の回収による収入

【正解①】
営業活動、投資活動、財務活動、それぞれのキャッシュフローは次の通りです。

(1)営業活動によるキャッシュフロー
企業本来の営業活動によって得られたキャッシュの増減額を示しており、企業の収益性をキャッシュという視点でとらえたものです。

(2)投資活動によるキャッシュフロー
設備投資や有価証券などへの投資によるキャッシュの増減額を示しています。

(3)財務活動によるキャッシュフロー
外部からの資金の借入や返済などによるキャッシュの増減額を示しています。

これより、選択肢のキャッシュフローは下記のように分類されます。

① 株式の発行による収入  財務活動
② 財貨又は用役の販売による収入  営業活動
③ 他の会社の株式及び債券から生じる配当及び利息による収入            投資活動
④ 設備、建物、備品及びその他の生産用資産の売却による収入            投資活動
⑤ 貸付金の回収による収入            投資活動

I-1-7 製品やシステムの開発を行う際の開発プロセスの種類に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

ウォーターフォール型は、要求分析に基づき、まず試作システムを製造し、機能や操作性を確認した後、本番の開発を進める方法である。

スパイラル型は、開発チーム全員で、最初の工程から順番に開発を完了させて承認を受け、やり直しすることなく次の工程に進める方法である。

V 字型モデルは、開発する機能全体を俯瞰して、最初は機能を絞って薄く開発し、徐々に機能を強化し肉付けしていく方法である。

アジャイル型は、期間を短く区切って優先度の高い機能から実装することを繰り返し、ユーザーや顧客のフィードバックを取り入れながら開発をする方法である。

イテレーティブ型は、要求分析と現地テスト、詳細設計と結合テストなど、作成した仕様とそれに基づく成果の検証の対応関係をはっきりさせる方法である。

【正解④】

スパイラル開発とは、対象のシステムを機能ごとに分割して、重要な機能から構築している開発手法です。開発工程で機能ごとに、「要件定義→設計→開発→テスト→レビュー」を複数回繰り返し、改善します。プロトタイプを作成して評価を行い、評価後に再び追加開発・改良を繰り返します。

イテレーティブ開発とインクリメンタル開発
インクリメンタル開発では完成するまで価値がありません。中間成果物において価値がない開発手法がインクリメンタル開発です。
一方、イテレーティブ開発は最初から価値があるものを開発します。
シンプルで最低限の機能しかありませんが、はじめから利用者の価値を実現するのがイテレーティブ開発です。
そして、イテレーション(反復)によって、徐々にで性能や操作を高めます。

人的資源管理

I-1-12 労働安全衛生法の健康管理に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

① 事業者は、事業場における定期健康診断を行った場合、使用する労働者数に関わらず、定期健康診断結果報告書を行政官庁に提出しなければならない。

② 事業者は、時間外・休日労働時間が月80 時間を超えたすべての労働者に対し、医師による面接指導を行わなければならない。

③ 事業者は、使用する労働者数に関わらず、労働者に対し、定期に医師等によるストレスチェックを行わなければならない。

④ ストレスチェックを実施した事業者は、労働者を検査した医師等から検査結果を入手し、ストレスの程度を記録後、遅滞なく、労働者に検査結果を通知しなければならない。

⑤ ストレスチェックを受けた労働者のうち、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があるとされた労働者から申出があった場合、事業者は、医師による面接指導を行わなければならない。

【正解⑤】

健康診断結果を行政官庁に報告義務があるのは、常時50 人以上使用する事業所です。

②面接指導は、時間外・休日労働が月80 時間超の疲労の蓄積が認められ申し出があった労働者が対象です。
申し出がなくても、月80 時間超の時間外・休日労働を行なった者には面接指導を実施するよう努めることとされています。

ストレスチェック義務があるのは常時50 人以上を使用する事業所です。また、50 人未満は努力義務です。

④「労働者を検査した医師等」はストレスチェック結果について守秘義務を有します。つまり、本人の同意なしに実施結果を第三者に伝えることは禁止されています。

情報管理

I-1-17 以下のデータ分析事例(ア)~ (ウ)について、それぞれに適した分析手法の組合せとして、最も適切なものはどれか。

【データ分析事例】

(ア)ネットショップの顧客を対象にして、購買履歴から顧客を分類してダイレクトメールで商品を薦めるための顧客プロファイリングを行う。

(イ)複数の企業を対象にして、一定期間内の情報漏えい事件発生の有無に対して従業員数や情報セキュリティ訓練の実施回数がどの程度影響を及ぼしているかを調べる。

(ウ)スーパーマーケットの複数の店舗を対象にして、売上金額に対して最寄り駅からの距離や店舗面積がどの程度影響を及ぼしているかを調べる。

 
相関分析単回帰分析ロジスティック回帰分析
クラスター分析ロジスティック回帰分析重回帰分析
相関分析単回帰分析重回帰分析
クラスター分析重回帰分析ロジスティック回帰分析
相関分析ロジスティック回帰分析単回帰分析

【正解②】

重回帰分析 : 従属変数が「数値」
ロジスティック回帰分析 : 従属変数が 「0 or 1」、「有無」

I-1-24 情報ネットワーク上に存在する脅威の事例に対応するセキュリティ対策に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① 商品を発注したという事実を発注者が後から否認することを防ぐため、発注情報を含む電子データに発注者のデジタル署名を施すよう受注者が依頼した。

② オンラインショッピングサイトに送信するクレジットカード番号が第三者に盗まれないようにするため、ショッピング利用者が送信データにデジタル署名を施した。

③ 不正アクセスにより企業の顧客情報などの重要情報が漏洩するリスクを低減させるため、サーバに保存してある重要情報が含まれるデータを暗号化した。

④ 電子メールの差出人の名前を詐称するなりすましによる詐欺の被害を防ぐため、電子メールの受信者が、電子メールに施されたデジタル署名により差出人を特定した。

⑤ 電子メールによる発注情報が途中で書き換えられて受注者に届く改ざんを防ぐため、発注情報を含む電子データに発注者のデジタル署名を施した。

【正解②】

デジタル署名:デジタル署名とは、公開鍵暗号技術を利用した電子署名の一つで、送信された文書の本人性 (なりすまし防止、否認防止) 非改ざん性を担保する技術。

安全管理

I-1-25 下表は、A~E の5 つの事業所における過去1 年間の労働災害に関するデー夕を示したものである。労働災害の発生状況を評価する指標である度数率が0.50 未満となる事業所は、次のうちどれか。

表 事業所別の労働災害データ

事業所労働災害による死傷者数延べ実労働時間数延べ労働損失日数1 年間の平均労働者数
A1名1,000,000時間80日600名
B5名11,000,000 時間1,000日4,800 名
C10名18,000,000 時間1,500 日10,600 名
D20名24,000,000 時間3,800 日11,000 名
E40名54,000,000 時間11,200 日30,000 名

① A 事業所  ②B 事業所  ③C 事業所  ④D 事業所  ⑤E 事業所

【正解②】

労働災害指数には、度数率、強度率、年千人率という指標が使われます。

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度数率 = (労働災害による死傷者数) / (延べ実労働時間数) x 1,000,000
で定義されます。

I-1-27 いわゆる国土強靭化基本法(強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靭化基本法)及び国土強靭化地域計画策定ガイドラインに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。ここでいう国土強靭化とは、大規模自然災害等に備えるため、事前防災・減災と迅速な復旧復興に資する施策を、まちづくり政策や産業政策も含めた総合的な取組として計画的に実施し、強靭な国づくり・地域づくりを推進するものである。

① 国土強靭化基本計画では、国民生活・国民経済に影響を及ぼすリスクとして、自然災害のほかに、原子力災害などの大規模事故等も含めたあらゆる事象を対象としている。

② 国土強靭化基本計画では、計画の対象とする国土強籾化に関する施策の分野と施策の策定に係る基本的な指針等の事項について定めている。

③ 国土強靭化においては、自助、共助、公助を適切に組み合わせることが求められる。

④ 国土強靭化においては、非常時に効果を発揮するのはもちろん、平時からの国土・土地利用や経済活動にも資する取組を推進する。

⑤ 国土強靭化型計画とは、地方公共団体の策定する国土強靭化計画であり、地方公共団体が策定する国土強靭化に係る他の計画等の指針となるべきものとされている。

【正解①】

国土強靱化基本計画(平成26年6月3日閣議決定)において、想定するリスクを次のように定義しています。

(1)想定するリスク

 国民生活・国民経済に影響を及ぼすリスクとしては、自然災害の他に、原子力災害などの大規模事故やテロ等も含めたあらゆる事象が想定され得るが、南海トラフ地震、首都直下地震等が遠くない将来に発生する可能性があると予測されていること、大規模自然災害は一度発生すれば、国土の広域な範囲に甚大な被害をもたらすものとなることから、本計画においては、当面大規模自然災害を想定した評価を実施した。

I-1-28 システム安全工学手法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、FMEA、VTA、ETA、HAZOP、THERP は、それぞれ、Failure Mode And Effects Analysis、Variation Tree Analysis、Event Tree Analysis、Hazard and Operability Studies、Technique for Human Error Rate Prediction の略である。

① FMEA は、システムの構成要素に故障が生じるとしたらどのような故障が生じるか、そしてその故障によりシステム全体にどのような影響が生じるかを評価し、重点的にケアすべき要素を見出す手法である。

② VTA は、作業がすべて通常通りに進行していても事故は起こるという考え方を基礎とし、通常行われた操作や判断の妥当性を評価する手法である。

③ ETA は、二分樹で業務手順を表現することで、その業務手順で誤りが生じると、どのような事態が生じるかを整理する手法である。

④ HAZOP は、なし(no) ・多い(more) ・少ない(less) ・逆に(reverse) ・他の(other than)など、複数のガイドワードを用いて設計意図からの逸脱を同定していく手法である。

⑤ THERP は、タスク解析による作業ステップの分解、基本過誤率のあてはめや調整等の手順を経て、人間が起こすエラーの確率を予測する手法である。

【正解②】

選択肢②
作業がすべて通常通りに進行していても事故は起こるという考え方を基礎とし」という説明が不適切です。
正しくは、「作業がすべて通常通りに進行していたら事故は起こらないという考え方」です。

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社会環境管理

I-1-33 令和3 年版国土交通白書に示された地球温暖化対策の推進に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① カーボンニュートラルなまちづくりへの転換を図るため、都市機能の分散化を促進することによる環境負荷の低減に向けた取組が進められている。

② 物流部門におけるCO2 排出割合はトラックが大部分を占めていることから、CO2 の排出を抑制するために、トラック単体の低燃費化や輸送効率の向上と併せ、鉄道、内航海運等のエネルギー消費効率の良い輸送機関の活用を図ることが必要とされている。

住宅の省エネルギー性能の一層の向上を図るため、分譲戸建住宅のほか、注文戸建住宅や賃貸アパートにも省エネルギー性能の向上の目標が定められている。

④ 都市部における交通混雑を解消させるため、環状道路等幹線道路ネットワークの強化交差点の立体化開かずの踏切等を解消する連続立体交差事業等が推進されている。

国際海事機関では温室効果ガス削減戦略が採択されており、その目標達成に向けて、新造船に関するCO2 規制を大幅に強化することが決定された。

【正解①】

国土交通白書中で、「コンパクト+ネットワーク」による多角連携型の国土づくりが述べられています。

環境省

I-1-36 いわゆるバーゼル条約(有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約)及びいわゆるバーゼル法(特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

① バーゼル条約成立の背景には、事前の連絡・協議なしに有害廃棄物の国境を越えた移動が行われ、最終的な責任の所在も不明確であるという間題が顕在化したことがある。

② バーゼル条約では、締約国は、国内における廃棄物の発生を最小限に抑え、廃棄物の環境上適正な処分のため、可能な限り国内の処分施設が利用できるようにすることとされている。

③ バーゼル条約では、条約の趣旨に反しない限り、非締約国との間でも、廃棄物の国境を越える移動に関する二国間または多数国間の取決めを結ぶことができる。

④ 我が国において、バーゼル法に基づき移動書類が交付された特定有害廃棄物等は、金属回収など再生利用を目的とするものが多く、近年は輸入量が輸出量を上回っている

⑤ バーゼル条約において、全てのプラスチックの廃棄物が規定されることとなったが、規制対象となるプラスチックであっても、相手国の同意があれば輸出は可能である。

【正解は④】

例えば、令和2年1月から12月までの間に、バーゼル法に規定する手続を経て実際に我が国から輸出された特定有害廃棄物等の総量は146,089トン(平成31年及び令和元年は103,528トン)、輸入された特定有害廃棄物等の総量は1,601トン(平成31年及び令和元年は6,685トン)でした。

輸出量は輸入量の約100倍です。

I-1-39 環境影響評価法に基づく事業者の行為に関する次の記述のうち、環境影響評価法の内容や趣旨に照らして、最も適切なものはどれか。

① 第一種事業を実施しようとする者、及び第二種事業を実施しようとする者は、いずれも環境の保全のために配慮すべき事項についての検討を行い、計画段階環境配慮書を作成しなければならない。

② 事業者は、環境影響評価方法書をもとに、環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法などを確定させるために、都道府県知事及び市町村長の意見を聴いてスクリーニングの手続を行わなければならない。

③ 事業者は、環境影響評価準備書を作成したときは、対象事業に係る環境影響を受ける範囲であると認められる地域を管轄する都道府県知事及び市町村長に対し、環境影響評価準備書及びこれを要約した書類を送付しなければならない。

④ 事業者は、環境影響評価書を作成した後、公告・縦覧した上で、住民への説明会を開催し、意見を求めなければならない。

⑤ 事業者は、供用後に実施した事後調査やそれにより判明した環境状況に応じて講ずる環境保全対策に関して、環境保全措置等の報告書を作成しなければならない。

【正解③】

環境アセスメントの手続きの流れは、下の図の通りです。

environmental assessment process

引用:http://assess.env.go.jp/1_seido/1-2_aramashi/index.html

STEP
配慮書 (第2種事業は任意)

住民、環境大臣、主務大臣の意見

STEP
スクリーニング (第2種事業のみ)

免許等を行う者等の意見によりアセス要否判定

STEP
環境アセスメント方法の決定 (スコーピング)
STEP
方法書案の作成

住民の意見。ウェブサイトなどに縦覧、説明会開催

STEP
アセス項目・方法の決定

環境大臣の意見、主務大臣の助言

STEP
環境アセスメント実施
STEP
アセス結果の案(準備書)

住民の意見。ウェブサイトなどに縦覧、説明会開催

STEP
アセス結果の修正(評価書)

免許等を行う者等の意見、環境大臣の意見

STEP
アセス結果の確定 (補正後評価書)

縦覧

STEP
環境アセスメント結果を事業に反映
STEP
報告書作成

免許等を行う者等の意見、環境大臣の意見

STEP
報告書公表
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