原価管理の主な考え方に原価企画、原価維持、原価改善の3つがあります。
これは、1963年、トヨタ自動車株式会社が原価管理の三本柱(原価企画、原価維持、原価改善)として位置づけたのが始まりとされています。
戦略的原価管理活動は、企業が競争力を維持・強化し、収益性を向上させるために、コストを効果的に管理・削減するためのプロセスです。この活動には、原価企画、原価差異分析、原価維持、原価改善といった要素が含まれます。それぞれの概念について詳しく説明します。
原価企画 (Target Costing)
製品の設計・開発段階で、目標コストを設定し、その目標に基づいて製品の設計や生産プロセスを進める手法です。市場で求められる価格や利益率をもとに逆算して、コスト目標を設定し、それを達成するための方法を計画します。
目的
製品のライフサイクル全体を通して、利益目標を達成するために、製品が市場に出る前からコストの管理を徹底すること。
具体的なプロセス
- 市場調査によって、顧客がどれくらいの価格で製品を購入するかを調べ、その価格から求められる利益を差し引いて目標コストを設定。
- その目標コストに合わせた設計・製造プロセスを検討し、実際に製品化する際のコストを抑える。
注意点
- 目標コストを達成するための設計変更や部品調達が行われるため、製品品質や機能が犠牲になるリスクがある。
- 市場の動向や顧客のニーズが変化するため、常に外部環境を把握する必要がある。
原価差異分析 (Variance Analysis)
計画されたコストと実際に発生したコストとの差異を分析し、コストの原因を特定して、その管理を行う手法です。差異を管理することで、原価の計画と実績のズレを分析し、改善の手がかりを見つけます。
目的
コストが計画通りに運用されているかを確認し、計画からの逸脱を早期に発見して、適切な対策を講じること。
差異の種類
- 数量差異: 実際の生産数量が計画と異なる場合に発生する差異。
- 価格差異: 実際に購入した材料や労務費が計画と異なる場合に発生する差異。
- 能率差異: 作業効率や生産時間が計画と異なる場合に発生する差異。
活用例
- 製造業において、材料費の実績と予算を比較し、なぜ差異が生じたのかを分析して、仕入れコスト削減や作業効率の改善を図る。
注意点
- 原価差異の原因を適切に分析することが重要で、短絡的にコスト削減を行うと、品質の低下や長期的な損失を招く可能性がある。
原価維持 (Cost Maintenance)
製品やサービスのコストを一定水準に維持する活動です。コストの上昇を抑え、競争力を維持するために行われます。既存製品の原価を一定に保つために、生産プロセスの改善や管理の最適化が行われます。
目的
既存の製品やサービスのコストを継続的に管理し、コストが増加しないようにすること。また、製品ライフサイクルの後期で利益を最大化するために行われる。
手法
- 製造工程の効率化や自動化によって、コスト上昇を抑える。
- 調達先の変更や長期契約を利用して材料費の変動を抑制。
注意点
- コストを維持しすぎると、新技術や革新に対する投資が減少する可能性があり、将来的な競争力を失うリスクがある。
原価改善 (Cost Reduction)
既存の製品やプロセスの原価を削減し、より効率的にコストを抑える活動です。原価削減の余地を見つけ、技術革新や効率化を進めることで、利益率を高めます。
目的
企業の競争力を高め、利益を増やすために、既存の製品やプロセスのコストを削減すること。
具体的な方法
- 製造プロセスの自動化やロボット化を進めて人件費を削減する。
- 不良品率の削減によって、再加工や廃棄コストを減らす。
事例
- 製造業において、エネルギー消費を削減するために設備投資を行い、長期的に運営コストを低減する。
注意点
- コスト削減により、製品の品質が低下する可能性があるため、バランスを考慮する必要があります。また、従業員のモチベーションや労働環境が悪化しないように配慮することも重要です。
まとめ
戦略的原価管理活動は、企業が収益性を高め、競争力を維持するために不可欠なプロセスです。原価企画によって事前にコスト目標を設定し、原価差異分析によって計画と実績の差を分析することで、コスト管理の徹底が図られます。原価維持で安定したコスト管理を行いつつ、原価改善でさらなる効率化を目指すことが、企業の持続的な成長を支える鍵となります。
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