“割引率”はファイナンスの基本概念です | 事業投資評価

割引率とは、金融商品やお金などの「将来の価値を現在の価値に変換ために用いる「率」のことです。
利回りを考慮すれば、現在とと将来では通貨の価値が異なるため、「将来における価値が現在どの程度の価値を持つか」を計算する際に利用されます。
ディスカウント・レート (Discount Rate)とも呼ばれます。
通常、年率で「%」(パーセント)が使用されます。

現在の現金や収益を将来の価値で計算する際に、利率は期待収益率と呼ばれ、
将来の収益や現金を現在の価値に換算する際には割引率と呼ばれます。

将来価値現在価値割引率は、ファイナンスにおいて最も重要な概念です。
これらの関係を簡単に表すと、このようになります。

将来価値は、現時点では不確実なものです。この「不確実度」を割引率に反映しています。
不確実な要素が多いと割引率も高くなり、確実な要素が多いと割引率は低くなります。

一般的に金融商品の割引率は無リスク金利(リスクを取らない場合の利回り)とリスクプレミアム(リスクを取る場合、それに応じて期待される収益の上乗せ分)から構成されます。
それを表したのが次の図です。

無リスク金利は、10年国債など安全性の高い債券の利回りをベースに利率が決定されます。
リスクプレミアムは一意には決まらず、企業、金融商品、組織の考えるリスクによって変わってきます。

こんなイメージです

企業が退職金や年金として用意すべき金額(退職給付債務)を算定する場合にも割引率が用いられますが、安全性の高い長期の債券の利回りを基礎として決定されています。

リスクよりも確実性を重視ですね

参考までに、2013年1月から2022年12月の10年国債の推移を載せておきます。

目次

計算式

現在価値 (PV : Present Value) と将来価値 (CF : Cash Flow) と割引率 (r : ratio)の関係は、次の式で表されます。

$$PV = \frac{CF}{(1 + r)}$$

将来価値は現在価値よりも不確実であるため、その分を将来価値から割り引きます。
それが「割引率」です。
この式から、リスクが高いほど割引率は高くなり、結果として現在価値は小さくなることがわかります。
割引率が正である限り、必ず将来価値は現在価値よりも低くなります。

1年後の1万円よりも、今日の1万円のほうが高価値!!

この計算を繰り返すことで、n年後の将来価値を現在価値に変換する式は次のように導かれます。

$$PV = \frac{CF}{(1 + r)^n}$$

複利計算の逆バージョンですね。

具体例

割引率が5%の場合

1年後の1万円の現在価値は、10,000円÷(1+0.05)=9,524円
2年後の1万円の現在価値は、10,000円÷(1+0.05)^2=9,070円

10年後の1万円の現在価値は、10,000円÷(1+0.05)^10=6,139円

となります。

割引率が10%の場合

1年後の1万円の現在価値は、10,000円÷(1+0.1)=9,091円
2年後の1万円の現在価値は、10,000円÷(1+0.1)^2=8,264円

10年後の1万円の現在価値は、10,000円÷(1+0.1)^10=3,855円

となります。
割引率が20%の場合も同様に計算してグラフにしたのが次の図です。

「将来」が先であればあるほど、リスクが高いほど (割引率が高いほど)現在価値は低くなります。

割引率を使用した、事業投資評価の説明はこちら

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