男女雇用機会均等法とは、職場における性別を理由とした差別を禁止し、男女の平等な扱いを定めた法律です。
採用・昇進といった雇用の各ステージにおける差別の禁止や、婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取り扱いの禁止等を定めています。
2007年4月施行
「女性差別禁止」から、男女を問わない「性別」を理由とする差別の禁止に改められました。
前回の改正で盛り込まれたセクシャル・ハラスメントについても、保護対象を男性にも広げ、かつ事業主の配慮義務を「措置義務」とすることで強化しました。
雇用上の差別禁止事項について、配置における業務の配分・権限の付与、降格、職種・雇用形態の変更、退職勧奨、労働契約の更新が追加されました。
また「間接差別の禁止」として、厚生労働省令で定める「募集・採用における身長・体重・体力要件」「募集・採用における転勤要件」「昇進における転勤経験要件」の3つが禁止されました。
大きなポイントとして、「出産・育児による不利益扱い」が禁止されました。
妊娠や出産等を理由とした解雇や降格といった扱いを禁止すると共に、妊娠中及び産後1年以内の解雇も無効となりました。
2017年1月施行
妊娠・出産等に関するハラスメント、いわゆるマタニティ・ハラスメントの防止措置義務が設置されました。
これまであった妊娠・出産等を理由とする不利益扱いの禁止だけでなく、事業主に対して、これらのハラスメントが発生しないよう防止措置を講じることが義務化されました。
2020年6月以降
2020年6月に、パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が施行されました。
これにともない、男女雇用機会均等法で規定するセクシャル・ハラスメント防止についても事業主の責任が強化されています。
セクハラについて相談した労働者の不利益な取り扱いを禁止するなど、事業主の責務が明確化されました。
男女雇用機会均等法のポイント
性別を理由とする差別の禁止
男女双方に対する差別的取扱いを禁止しています。
募集・採用、配置(業務の配分及び権限の付与を含む)・昇進・降格・教育訓練、福利厚生、職種の変更・雇用形態の変更、退職の勧奨・定年解雇・労働契約の更新についての差別的取り扱いを禁止しています。
間接差別の禁止(法第7条)
労働者の性別以外の事由を要件とするもののうち、実質的に性別を理由とする差別となるおそれがあるものとして、省令で定める次の3つの措置について、合理的な理由がない場合、間接差別として禁止しています。
- 募集・採用にあたって慎重・体重・体力を要件とすること
- 全ての労働者の募集・採用、昇進、職種の変更にあたって転居転勤を要件とすること
- 昇進にあたって転勤経験を要件とすること
女性労働者に係る措置に関する特例
過去の女性労働者に対する取扱い等が原因で雇用の場において男性労働者との間に事実上の格差が生じている状況を改善する目的で行う女性のみを対象とした措置や女性を有利に扱う措置は法律違反になりません。
※ 一つの雇用管理区分において、男性労働者と比較して、女性労働者の割合が4割を下回っている場合、格差が存在していると判断されます。
婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等(法第9条)
- 結婚・妊娠・出産退職制を禁止しています。
- 結婚を理由とする解雇を禁止しています。
- 妊娠・出産・産休取得その他省令で定める理由(母性健康管理措置・母性保護措置・妊娠又は出産に起因する能率低下等)を理由とする解雇その他不利益取扱いを禁止しています。
- 妊娠中・産後1年以内の解雇は、事業主が妊娠・出産等が理由でないことを証明しない限り無効です。
セクシュアルハラスメント対策(法第11条)
事業主には、男女労働者を対象とする雇用管理上の措置義務があります。
職場における妊娠・出産等に関するハラスメント対策(第11条の2)
職場における妊娠・出産等に関するハラスメントを防止するために雇用管理上必要な措置を講ずることが義務
母性健康管理措置(法第12条、第13条)
妊娠中及び出産後の女性労働者の健康管理に関する措置を事業主に義務付けています。
深夜業に従事する女性労働者に対する措置(男女雇用機会均等法施行規則第13条)
「事業主は、女性労働者の職業生活の充実を図るため、当分の間、女性労働者を深夜業に従事させる場合には、通勤及び業務の遂行の際における当該女性労働者の安全の確保に必要な措置を講ずるよう努めるもの」とするとあります。
紛争の解決(法第17条、第18条)
労働者と事業主との間の紛争解決のため、2つの援助制度があります。
- 労働局長による援助・・・労働局長が問題解決に必要な助言などの援助を行います。
- 機会均等調停会議による調停・・・調停委員(労働問題の専門家)が調停案を作成し、当事者双方にお勧めします。
実効性の確保(法第29条、第30条、第33条)
上記1~5について、是正指導に応じない場合、企業名公表制度の対象となります。
男女均等取扱いなど男女雇用機会均等法に関する事項について報告を求めたにもかかわらず、事業主が報告をしない、又は虚偽の報告をした場合は、20万円以下の過料が科されます。
その他
派遣先の事業主にも、労働者派遣法(第47条の2)により、男女雇用機会均等法における次の点が事業主の義務として適用されます。
- 妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止
- セクシュアルハラスメント対策の措置
- 妊娠・出産等に関するハラスメント対策の措置
- 母性健康管理措置
コメント