国際出願制度|知的財産権の国際的な保護を容易にする仕組み

国際出願制度は、知的財産権(特に特許や商標)の国際的な保護を容易にするための仕組みで、複数の国での権利取得手続きを一括して進めることができる制度です。
特に、特許協力条約(PCT)による特許の国際出願制度と、マドリッド協定議定書による商標の国際出願制度が代表的です。これらの制度を活用することで、複数の国で個別に出願する必要がなくなり、コストと手間を削減できます。

目次

特許協力条約 (PCT) による国際出願制度

特許協力条約(PCT: Patent Cooperation Treaty)は、1970年に制定された国際的な特許出願の枠組みです。PCTを利用することで、1回の出願手続きで複数の国に特許出願ができ、手続きの簡素化と費用の削減が可能になります。

特徴

  • 対象: 発明に対する特許出願。
  • 出願手続き: 1回の国際出願で、PCT加盟国(約150カ国以上)すべてに特許保護を申請することができます。
  • 手続きの流れ:
  1. 国際段階: 国際出願を行うと、国際的な形式審査が行われ、国際調査報告書が作成されます。これにより、出願の特許性(新規性、進歩性)が判断され、国際公開されます。
  2. 国内段階: 国際出願から30か月以内に、指定した各国での手続きを進める必要があります。この段階で各国の特許庁が個別に審査し、特許の付与を判断します。

利点

  • 費用と時間の節約: 複数国での個別出願よりも効率的で、手続き費用と手間が削減されます。
  • 戦略的出願: 各国での特許取得を進める前に、国際調査報告を基にして出願戦略を立て直すことができます。

  • 日本企業が新技術に関する特許を国際的に保護したい場合、PCTを通じて欧米やアジア諸国に一括で特許出願を行う。

マドリッド協定議定書 (マドリッドプロトコル) による商標の国際出願制度

マドリッド協定議定書(マドリッドプロトコル)は、1996年に発効した商標の国際出願を簡素化するための条約です。この制度により、商標権を国際的に保護するための出願手続きが1回で済むようになります。

特徴

  • 対象: 商標の国際出願。
  • 出願手続き: 本国で商標出願または登録した商標を基に、マドリッドプロトコル加盟国(現在100カ国以上)に対して商標出願を行います。
  • 手続きの流れ:
  1. 国内出願: 出願者は自国で商標を出願または登録し、その商標を基に国際事務局に出願を提出します。
  2. 国際登録: 国際事務局での審査後、指定国の商標庁に対して出願が送付され、各国での審査が行われます。各国の商標法に基づき、商標が登録されるかどうかが決まります。

利点

  • 一括出願: 一度の手続きで、複数国に商標を出願できるため、手続きが効率化されます。
  • 費用削減: 各国ごとに別々に出願するよりも、出願費用や時間を大幅に削減できます。
  • ブランド保護: 国際的に統一したブランドイメージを保護するため、複数国での商標登録が一度に行えるのは大きな利点です。

  • 日本のファッションブランドが、欧州、アメリカ、アジアで統一した商標を使用するために、マドリッドプロトコルを使って一括で商標出願を行う。

ハーグ協定による意匠の国際出願制度

ハーグ協定は、意匠(デザイン)の国際的な保護を目的とした出願制度で、加盟国に対して意匠を一括で出願できる枠組みです。

特徴

  • 対象: 製品の意匠(デザイン)。
  • 手続き: 1回の出願で複数の国に意匠登録を申請できます。PCTやマドリッドプロトコルと同様、加盟国に対して出願することが可能です。

  • 日本の家電メーカーが、独自のデザインをアメリカや欧州などで保護するために、ハーグ協定を利用して意匠を一括で出願する。

国際出願制度の活用のポイント

  1. コスト削減: 各国で個別に出願するよりも、PCTやマドリッドプロトコルなどの制度を利用することで、出願費用や手続きの簡素化が図れます。
  2. 時間の有効活用: 国際出願により、各国での出願プロセスを一括で進めることができるため、時間の節約になります。
  3. 戦略的な知財管理: 例えば、PCTを活用することで、国際的な特許戦略を立てやすくなり、どの国で特許を取得するかを後から決定することができます。
  4. グローバルなブランド保護: マドリッドプロトコルを利用することで、国際的にブランドを統一して保護し、ブランドの信頼性や認知度を向上させることができます。

まとめ

国際出願制度は、特許、商標、意匠の保護を効率的に行うための重要な手段です。特許協力条約(PCT)やマドリッド協定議定書、ハーグ協定を活用することで、複数国での知的財産権の取得手続きが簡素化され、コストや時間の削減が期待できます。企業が国際市場で競争力を高め、知財を効果的に保護するためには、これらの制度を戦略的に活用することが重要です。

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