ヒューマンエラー分析 | システム安全工学

ヒューマンエラー (human error) は「人為的過誤や失敗、ミス」のことで、JIS Z8115: 2000では、「意図しない結果を生じる人間の行為」と規定しています。
労働災害の約80%はヒューマンエラーに起因していると言われています。

目次

HEP

ヒューマン・エラーの起こりやすさは、HEP(Human Error Probability) という比率で表され、作業条件や作業環境に大きく依存します。エラーを起こしうる機会数あるいは試行 数に対する実際に起こしたエラー回数の比で表します。
つまり、

HEP = エラー数 / エラーに対する機会数

で定義されます。

トライポッド理論

トライポッド理論は、事象(event)危険源(hazard)が存在していたところへ対象 (人やモノ)が作用するため生じるのであり、このどれが欠けても事象は生じないという理論で、ヒューマンエラーを多角的視点から分析する手法です。
ヒューマンエラーの要因を11個のグループに分類して考えます。

ハードウエア:道具、機器の品質に問題
設計:設計の不備、設計の意図が伝わらない
保守管理:保守計画が潜在的リスクの看過、業務範囲が不明確
手順書:書かれていた内容が不明確
エラー誘発条件:軽微な手順の変更を黙認する風潮
日常業務:長期間の問題の放置
相容れない矛盾する目標:安全よりも納期優先、利益優先
コミュニケーション:ルールが不明確、不十分なコミュニケーション
組織:組織内の責任が不明確、組織の意識低下
訓練;訓練を軽視、訓練不十分、経験者と初心者を区別しない
防護:防護が脆弱、連絡手段・避難誘導手段の不具合

THERP

THERP (Technique for Human Error Rate Prediction : ヒューマンエラーの発生率予測法)とは、人間の一連の手順的な仕事を解釈・操作・読み取りなどの基本的な単位タスクに分解し、各単位タスクに成功する場合と失敗する場合に分け、イベントツリーを作成し、最終的に仕事の成功または失敗に至る確率を導出する手法です。

行動形成要因 PSF

人間の行動に影響を与える要因のことを、行動形成要因(PSF : Performance Shaping Factors)といいます。

人間の行動には、さまざまな要因が影響します。同じ仕事を同じようにしていても、ヒューマンエラーを起こすときと起こさないときがあります。これは人間にヒューマンエラーを引き起こす要因が影響したためと考えられます。
機械設備操作中にヒューマンエラーが発生した場合のPSFには、次のような要因が考えられます。

・機械が使いにくかった
・機械をつかう技能が十分になかった
・納期に追われていた

このような、「作業や業務をやりにくくしている事柄」「ヒューマンエラーのもとになりやすい事柄」といった外的PSFと、作業者内部から生じる内的PSFがあります。

サーカディアンリズム(24時間の周期の生活リズム)
眠気(覚醒水準)
高齢化意識レベル(フェーズ理論)
ビジランス課題(意識を集中できる時間は30分から1時間強)

PSFを特定することで、ヒューマンエラーを防止するために改善するべきかポイントが明らかになります。

MORT

MORT (Management Oversight and Risk Tree、欠陥樹木図) は管理体制の欠落を検出する方法です。管理体制の現状と一般的な管理欠陥の論理ツリーを比べることで問題点を発見します。

機器の安全、管理、設計、生産、保存など、広い範囲にわたって適用可能で、より高度な安全を達成することを目的に活用されます。

J-HPES

J-HPESはJapanese version of Human Performance Enhancement Systemの略で、アメリカの原子力発電運転協会が開発したHPES (ヒューマンファクター事象の分析・評価手法で、「事実関係の調査」「背後に潜む原因の分析」「対策の立案」を行う目的で活用される)を、日本に適用できるように電力中央研究所が改良を加えたものです。

VTA

VTA(Variation Tree Analysis)とは、事故の進展における変化に着目し、フォールトツリーを基本としたツリーを用いた正常状態からの逸脱を追跡する対策志向の分析手法です。

フォールトツリー分析が推定要因も分析しているのに対して、VTAは確定事実のみを対象にしています。

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