化学物質と環境リスク

科学的には、元素や元素の結び付いたものを化学物質と呼ぶ。
したがって、自然のものも人間が作ったものもすべて化学物質である。化学物質は人の生活を便利にする一方で、製造、使用、廃棄の過程で環境中に排出されることによって、人の健康や動植物等の生態系に悪影響を与えるおそれがあり、これを環境リスクという

このリスクの大きさは、化学物質の有害性の程度と暴露量(体に取り込む量)によって決まる。化学物質の影響は、環境リスクの観点からの考慮が必要である。

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ダイオキシン類対策特別措置法

1999年議員立法にて制定。毒性や発がんリスクがあるダイオキシン類(PCDD、PCDF、 PCB) による環境汚染の防止やその除去を図り、国民の健康保護を目的とした法律である。
耐容一日摂取量及び環境基準の設定のほか、各種規制等が定められている。

化審法

1973年制定、2018年2月改正。正式名を「化学物質の審査及び製造などの規制に関する法律」という。
化学物質の有する性状のうち、「分解性」、「蓄積性」、「人への長期毒性」または「動植物への毒性」や環境中の残留状況に応じて規制などの程度や態様を異ならせ、上市(じょうし:新しい商品を市場に出すこと)後の継続的管理の実施を促す法律
2018年改正の内容は、少量新規・低生産量新規化学物質の確認制度の見直し、新区分(特定新規化学物質、特定一般化学物質)の導入である。

化管法/PRTR法

1999年制定、正式名を「特定化学物質の環境への排出量の把握など及び管理の改善の促進に関する法律」という。
事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境保全上の支障の未然防止を図ることが目的。環境への排出量の把握などを行うPRTR (Pollutant Release and Transfer Register) 制度、および事業者が化学物質の性状及び取り扱いに関する情報 (SDS) を提供するSDS制度などが定められている。

SDS (Safety Data Sheet : 安全データシート)

化学品を他に譲渡または提供する際、SDSにより、その化学品の特性及び取り扱いに関する情報の提供及ぴラベル表示に努めることとする制度

POPs条約(ストックホルム条約)

2001年採択、正式名を「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」という。
環境中での残留性、生物蓄積性、人や生物への毒性が高く、長距離移動性が懸念されるポリ塩化ビフェニル(PCB)、DDT等の残留性有機汚染物質(POPs: Persistent Organic Pollutants)の製造及ぴ使用の廃絶・制限、排出の削減、これらの物質を含む廃棄物等の適正処理等を規定した条約。

水俣条約

2013年熊本で採択、2017年発効。正式名は「水銀に開する水俣条約」という。水銀による環境汚染や健康被害防止のため、水銀及び水銀を使用した製品の製造と輸出入を規制・管理する国際条約である。
条約では2020年以降、水銀及び特定の水銀製品の製造輸出入を原則禁止している。

水銀汚染防止法

水俣条約が発効したことを受けて施行された法律です。水俣条約の的確かつ円滑な実施を確保し、水銀による環境の汚染を防止するため、次のような規制をしています。
1.水銀の掘採
2.特定の水銀使用製品の製造
3.特定の製造工程における水銀等の使用及び水銀等を使用する方法による金の採取を禁止4.水銀等の貯蔵及び水銀を含有する再生資源の管理

REACH規制(Registration、Evaluation、 Authorization and Restriction of Chemicals)

2007年6月に発効した、欧州の化学物質管理に関する法規制。EU域内で製造・使用される化学物質はほとんどすべて、登録、評価、認可、制限、情報伝達の義務が課されている。

SAICM

SAICM (国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチStrategic Approach to International Chemicals Management)は、2002年の世界首脳会議(ヨハネスブルグサミット WSSD)で合意された目標(2020年までに化学物質が、ヒトと環境にもたらす悪影響を最小化する方法で使用、生産されること)を達成するための国際的な戦略や取り組みのことです。
科学的なリスク評価に基づくリスク削減、予防的アプローチ、有害化学物質に関する情報の収集と提供、各国における化学物質管理体制の整備、途上国に対する技術協力の推進などを進めることを定めています。

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