気候変動・エネルギー問題

地球温暖化が原因とされる気候変動により、近年、極端な気象現象が起こり、多大な災害が起こり、多大な災害が起きている。
温暖化への寄与は、温室効果ガスを多く発生する化石燃料によるエネルギー利用によるところが大きい。気候変動問題は、これからのエネルギー利用の抜本的見直しを求めている。

目次

温室効果ガス(GHG: Green House Gas)

大気を構成する気体で、赤外線を吸収して大気温度上昇の熱源となり再放出して地表に吸収され、その温度を高める気体を指す。京都議定書では次の6物質が温室効果ガスとして排出削減対象となっている。

・二酸化炭素(CO2)
・メタンガス(CH4)
・一酸化二窒素(N2O)
・ハイドロフルオロカーポン(RFC)
・パーフルオロカーポン(PFC)
・六フッ化硫黄(SF6)

エルニーニョ現象/ラニーニャ現象

エルニーニョ現象は、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて、海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象である。
逆に、同じ悔域で、海面水温が平年より低い状態が続く現象は、ラニーニャ現象と呼ばれ、それぞれ数年おきに発生する。
これらの現象は、日本を含め世界中の異常な天候の要因になり得ると考えられている。

気候変動枠組条約

正式には「気候変動に関する国際連合枠組条約」という。
1992年の地球サミットで、地球温暖化対策に関する取り組みを国際的に協調して行っていくため採択され、1994年発効した。
本条約は、大気中の温室効果ガスの程度を安定化させることを究極の目的とし、締約国に温室効果ガスの排出・吸収目録の作成、地球温暖化対策のための国家計画の策定とその実施等の各種義務を課している。

IPCC (気候変動に関する政府問パネル)

1988年国連環境計画(UNEP)と世界気候機関(WMO)により設立され、世界の政策決定者に対し、正確でバランスのとれた科学的知見を提供し、気候変動枠組条約の活動を支援している。
5~7年ごとに地球温暖化について網羅的に評饉報告書を発表するとともに適宜、特別報告書や技術報告書方法論報告書を発表している。

京都議定書

1997年12月、京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)において採択された議定書(Protocol)をいう。
ここでは、先進国のみに温室効果ガスの排出量について拘束力のある数値目標が決定された。それとともに、排出量取引、共同実施、クリーン開発メカニズム等の新たな仕組みが合意された。
2005年2月に発効したが、アメリカは批准しておらず、中国・インドは参加していない

バリ協定

2015年12月、パリで開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において採択された協定(Agreement)をいう。
地球温暖化対策に先進国、発展途上国を問わずすべての国が参加し、世界の平均気温の上昇を産業革命前の2℃未満(努力目標1.5℃)に抑え、21世紀後半には温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標とした。
締約国は削減目標を立てて5年ごとに見直し、国連に実施状況を報告することが義務付けられた。
また、先進国は途上国への資金支援を引き続き行うことも定められた。

2050年長期戦略

2019年6月、政府は閣議を経て、2050年に向けた日本の地球温暖化対策に関する「長期計画」(パリ協定に基づくもの)を国連に提出した、いわゆる、2050年長期戦略である。
基本は最終到達点としての「脱炭素社会」を掲げ、今世紀後半のできるだけ早期に実現することを目指すとともに、2050年までに80%の削減に取り組むとしている。
その後、2020年10月、菅義偉首相の所信表明で、温室効果ガスの排出量を2050年に実質ゼロ)100%削減)にする新目標が打ち出された。

グリーントランスフォーメーション (GX)

GX(グリーントランスフォーメーション)とは、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを通じた、経済社会システム全体の変革です。
2050年カーボンニュートラルや、2030年の国としての温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた取り組みを経済の成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力の向上の実現に向けた、経済社会システム全体の変革がGXです。
GXが注目されている背景には次の3点があります。

・地球温暖化による気候変動
・カーボンニュートラル宣言
・ESG投資の市場拡大

脱炭素社会・低炭素社会 

脱炭素社会とは、気候変動や地球温暖化の原因となる温室効果ガス、その中でも二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにする社会とされ、発生源である石袖や石炭などの化石燃料を使わない、再生可能エネルギーを柱にした脱化石燃料の社会を指している。

また、低炭素社会は、二酸化炭素(CO2)の排出量を自然が吸収できる量以内に最小化する「カーポンニュートラル」の状態を目指した社会であって、基本的な考え方や目的は、脱炭素社会と同じと考えて良い。

地球温暖化対策推進法

1998年に法規制された地球温暖化対策を推進するための法律で、温暖化対策計画の制定や地球協議会の設置など、国民の取り組みを強化するための措置、温室効果ガスを一定量以上排出するものに排出量を算定して国に報告することを義務付け、国が報告されたデータを集計・公表する「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」等について定めたものである。

気候変動適応法

2018年6月交付、同年12月施行の法律であり、同法により気候変動に関する適応策の法的位置付けが初めて明確化され、国、地方公共団体、事業者、国民が連携・協力して適応策を推進するための法的仕組みが整備された。

気候変動対策の緩和策・適応策

気侯変動対策には緩和策と適応策がある。
緩和策:地球温暖化対策推進法に基づく温室効果ガスの排出削減対策
適応策気候変動適応法に基づく気候変動の影響による被害の回避・軽減対策
緩和策は根本的な解決へ向けた対策を、適応策は対処療法的な取り組みを指している。

排出量取引制度

環境汚染物質の排出量を抑制するために用いられる政策手法の1つであり、京都議定書に排出量取引が規定されたこともあって、温室効果ガスを対象にした例が多い。
排出総量に上限を設け、過不足分を取引する方式はキャップ&トレードと呼ばれ、削減の取り組みを確実に担保するとともに、柔軟性のある義務履行を可能としている。

カーボンニュートラル

カーボンニュートラルとは 温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します。「排出を全体としてゼロ」というのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林・森林管理などによる「吸収量」 を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。

カーボンフットブリント

商品の一生(原料調達から廃棄・リサイクルまで)に排出されたCO2量を商品に表示する仕組みをいう。
最近では商品だけでなく、航空運賃やホテル宿泊費等、サービス全般に導入の動きがある。

カーボンオフセット

カーボンオフセットは、人間の経済活動や生活などを通して「ある場所」で排出された二酸化炭素などの温室効果ガスを、植林・森林保護・クリーンエネルギー事業(排出権購入)による削減活動によって「他の場所」で直接的、間接的に吸収しようとする考え方や活動のことです。取り組みの流れは次の通りです。

1.家庭やオフィス、移動での温室効果ガス排出量を把握する。
2.排出される二酸化炭素の量を削減する努力をする
3.削除困難な排出量を把握し、他の場所で実現した排出権(クレジット)の購入。または排出削減活動実施することで埋め合わせ(オフセット)する

ギガトンギャップ

現在各国が提出した削減目標をすべて足し合わせても、長期目標達成に必要な削減量にはまったく足りておらず、2020年での削減不足量はCO2換算で100億トン、2030年では150億トンに達するという試算があります。
この削減不足量をギガ(=10億)トン・ギャップ或いはエミッション・ギャップと呼んでいます。

カーボンバジェット (炭素予算)

「他の人為的気候変動要因の影響を考慮に入れた上で、地球温暖化をある一定の確率下で、特定の気温上昇レベル以内に抑えることができる、累積CO2排出量((過去の排出量と将来の排出量の合計))の最大量」を指します。
炭素収支は、排出収支、排出割当、または許容排出量とも呼ばれます。

1861-1880年平均と比べて人間活動を起源とする全気温上昇を、66%以上の確率で2℃未満に抑えるためには、1870年以降の全ての人為起源の発生源からの二酸化炭素累積排出量を約2,900ギガトンCO2(2.9兆トン)未満に留めることが必要です。
2011年までに既に累積で約1,900ギガトンCO2(1.9兆トン)が排出されているため、2012年以降の世界全体での累積排出量を約1,000ギガトン(1兆トン)に抑える必要があります。

CCS

Carbon Capture and Storage (二酸化炭素回収・貯留)とは、通常、セメント工場やバイオマス発電所などの大規模な二酸化炭素を回収し、貯留場所に輸送し、大気の影響のない場所、通常は地下の地層に堆積させるプロセスのことです。

BECCS

BECCS (Bio-energy CCS)は、CCS(CO2回収・貯留)とバイオマスエネルギーの組み合わせた技術のことです。
大気中のCO2を吸収した植物を燃焼させるバイオマス発電と、その燃焼によって発生するCO2を地中に貯留するCCSを組み合わせることで、大気中のCO2を削減するネガティブエミッションを実現します。

エネルギー政策基本法

2002年6月公布、施行されたエネルギー需給政策に関する法律で、基本方針は「安全供給の確保」「環境への適合」、及びこれらを十分考慮したうえでの「市場原理の活用」の3項目であり国・地方公共団体、事業者、エネルギーの需要施策の基本事項を定めている。

エネルギー基本計画

法に基づき、政府が策定する基本的な方向性を示す計画をいう。
計画は、長期エネルギー需要見通しと密接な関連があり、再生可能エネルギーの普及目標なども定められる。

3E+S

E:エネルギーの安定供給(Energy Security)
E:経済効率性の向上 (Economic Efficiency)
E:環境への適合(Environment)
S:安全性 (Safety)

からなり、日本のエネルギー政策の基本となる概念である。

再生可能エネルギー

エネルギー源として、一度利用しても比較的短期間に再生が可能であり、資源が枯渇しない源を利用して生ずるエネルギーの総称をいう。
具体的には、太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、バイオマス等をエネルギー源として利用する。

再生可能エネルギー特別措置法

再生可能エネルギーか作った電気を、国が定めた単価で一定期間電力会社が買い取ることを義務付けた法律で、再生可能エネルギーによる発電ビジネスの推進・拡大が目的。

固定価格買取制度(FIT: Feed-in Tariff)

再生可能エネルギーにより発電された電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度。
対象となる再生可能エネルギーは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの5つで、国が定める要件を満たす必要がある。

再生可能エネルギー賦課金

固定価格買取制度で、電力会社が買い取る費用の一部を電気の利用者から毎月の電気料金と合わせて徴収しており、この料金を再生可能エネルギー賦課金という。

省エネ法

1979年制定、2018年改正で、式名を「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」という。
省エネ法では、場等の設置者や輸送事業者・荷主に対し、省エネの取り組みを実施する際の目安となるべき判断基準を示し、一定規模以上の業者には、エネルギーの使用の状況等の報告を求めたり、必要に応じて指導等を実施したりしている。
省エネ法におけるエネルギーは、化石エネルギー(燃料、熱、電気)を対象としており、廃棄物からの回収エネルギーや風力、太陽光等の非化石エネルギーは対象としていない

トップランナー制度

自動車の燃費基準や電気機器等の性能向上に関する製造業者などの判断基準を、現在商品化されている製品のうちエネルギー消費効率が最も優れているもの(トップランナー)の性能を勘案して定める制度をいう。
製品のエネルギー消費効率のさらなる改善の推進を行うことを目的とする。

建築物省エネ法

2015年制定、正式名を「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」という。
情勢の変化により、建築物のエネルギーの消費量が他部門に比べ著しく増加し、対処のため、住宅以外の一定規模以上の建築物に対し、エネルギー消費性能基準への適合義務の創設エネルギー性能向上計画の創設等の法的措置がなされた。

エコまち法

2012年制定、正式名を「都市の低炭素化の促進に関する法律」という。
社会経済活動に伴って発生する二酸化炭素の相当部分が都市において発生しており、都市の低炭素化促進に関する基本方針の策定市町村の低炭素まちづくり計画の策定、及び民間等の低炭素建築物の認定等を定めた法律である。

コンバクトシティ

急激な人口減少・高齢化に直面する中、生活の質を向上させ、持続的な成長が求められる。その実現のためには。社会インフラを賢く使える都市空間の形成が必要で、その1つとして考えられる集約型の都市構造をコンパクトシティという。
一般的に、高密度で近接した開発形態公共交通でつながった市街地、地域のサービスや職場までの移動の容易さ、という特徴を持った都市構造を指す。

コージェネレーション

天然ガス、石油、LPガス等を燃料として、エンジン、タービン、燃料電池等の方式により発電し、その際に生じる廃熱も同時に回収するシステムをいう。
回収した廃熱は。蒸気や温水として工場の熱源冷暖房・給湯等に利用でき、熱と電気を無駄なく利用できれば、燃料が本来持っているエネルギーの約75~ 80% と、高い総合エネルギー効率が実現可能といわれている。

ESCO事業

Energy Service Company事業の略で、ESCOが省エネに関する包括的なサービス(技術、設備、人材、資金等)を客に提供し、客の利益と地球環境の保全に貢献するビジネスで、省エネ効果の保証等による客の省エネ効果の一部を報酬として受け取る仕組みとなっている。

スマートグリッド

次世代送電網のことで、電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し最適化できる送電網といわれ、専用の機器やソフトウェア送電網の一部に組み込まれている。
従来の送電線は大規模な発電所から一方的に電力を送り出す方式で、需要のピーク時を基準とした要領設定に無駄が多く、自然災害に弱く復旧にも手間取っていた。
そのため、送電の拠点を分散し、需要家と供給側との双方から電力のやり取りができる送電網が望まれている。

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